黄斑クリニック

第2・4 金曜日

黄斑は網膜の中心にある色を感じる組織で人間はその黄斑によって物を細かく鮮やかに見ることができます。外界からの光は角膜や水晶体で屈折し集光した後、硝子体を通過し、網膜の中心部である黄斑に当たり、そこで物を細かく判別したり、色を見分けたりしています。そして、その黄斑には様々な病気が起こります。

1)加齢黄斑変性

加齢黄斑変性の症状は視力低下、「線が歪む、波打つ」などの変視症、中心暗点などです。50歳以上の人口の1.3%の方にこの病気が見られ、近年日本でも患者さんの数は増加の一途で多くの患者さんが治療をお受けになっています。

加齢黄斑変性には滲出型と萎縮型があり、その中でも滲出型には典型加齢黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、網膜血管状増殖(RAP)があり、現在の一般的な治療法は抗VEGF抗体の硝子体内注射療法です。そして病型や病気の進行度に合わせて追加でトリアムシノロンのテノン嚢下注射を行ったり、光線力学的治療などを行ったりしています。

以前の治療法として網膜回転術を行ったり新生血管抜去術を行なっていましたが、視力改善率はあまり良くありませんでした。現在の最新治療法である抗VEGF抗体の硝子体内注射療法は網膜回転術よりも広く有効であるため、現在、網膜回転術は行われず、抗VEGF抗体の硝子体内注射療法が行われます。

そして、最新の抗VEGF抗体の硝子体内注射療法によっても病気を消し去ることはできません。しかし、病気の進行を止めて病気が引き起こした網膜の変化を少しでも元に戻すことによって、視力の悪化を止めたり、場合によっては若干の視力改善が見られる場合があります。

抗VEGF抗体の硝子体内注射療法は患者さんがベッドに横になった後、十分に麻酔を行い、十分に眼の消毒を行い、眼の内部に注射を行いますが、患者さんから針が見えないような位置から注射を行います。実際の治療時間は注射を行うだけなので10秒ほどですが、注射前の準備の時間や待ち時間などで、多くの患者さんは治療のために数時間程度の時間が掛かります。

また、抗VEGF抗体の硝子体内注射療法は治療件数が非常に多いため、お近くの治療可能な関連病院に紹介させていただくことがあります。この治療は繰り返し治療が必要であり日帰り治療のため、お近くの関連病院で治療を受けるメリットがあります。

現在、臨床研究が始まったiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞の移植手術は、今後治験を行った後、およそ5~6年後には一般の医療として広く患者さんに手術を行うことが期待されています。現在、臨床研究の段階では硝子体手術の移植手術の際に大きく強膜創を拡大する方法が検討されていますが、我々は小切開硝子体手術のまま網膜下手術を行うクロコダイルテクニックをはじめとして新しい小切開硝子体手術用の手術技術を研究開発しています。

2)黄斑上膜

黄斑上膜には特発性と続発性があります。加齢性変化によって起こる特発性黄斑上膜と、外傷、ぶどう膜炎、他の病気によって引き起こされる続発性黄斑上膜があります。黄斑上膜は黄斑の上に膜上組織が貼り付いて収縮するために、網膜にも牽引する力が働くため網膜が歪みます。そのため直線状の物を見ても歪みが出たり、視力が低下したりします。硝子体手術では黄斑上膜を取り除き網膜に掛かっている牽引を取り除きます。硝子体手術の術後も歪みは残りますが、それでも術前の歪みの程度の半分程度まで回復することが多く見られます。

(黄斑上膜 術前の網膜断層写真)・・・網膜の上に黄斑上膜が見られます。
黄斑クリニック画像1

(黄斑上膜 術後の網膜断層写真)・・・網膜の上に黄斑上膜は見られません。
黄斑クリニック画像2

3)黄斑円孔

黄斑円孔は黄斑の中心窩に円い孔が開く病気で、加齢性変化による黄斑円孔と、サッカーや野球のボールなどが強く当たって起こる外傷性黄斑円孔などがあります。症状は視力低下、変視症です。また、近視の強い強度近視の患者さんの中には黄斑円孔に網膜剥離を合併する黄斑円孔網膜剥離を起こすこともあります。

(黄斑円孔 術前の網膜断層写真)・・・黄斑の中心に孔が開いています。
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(黄斑円孔 術後の網膜断層写真)・・・黄斑の中心の孔が閉鎖しています。
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4)黄斑浮腫

黄斑浮腫は網膜の層状構造が網膜内の循環障害によって網膜内に水分が過剰に貯留し網膜が膨らんだ状態になります。網膜血流の循環障害や、脈絡膜の新生血管からの異常漏出などにより網膜の層状構造が浮腫を引き起こし変形します。そのため、視力低下や変視症などが見られます。黄斑浮腫の治療は薬剤の投与と硝子体手術があります。いずれが選択されるかは病型や進行度などによって決められます。また、黄斑浮腫は治療を行なっても浮腫が残存することも多く、原因の循環障害が悪化すると、更に黄斑浮腫が増加します。

(黄斑浮腫 治療前の網膜断層写真)・・・黄斑の中心に大きな浮腫があります。
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(黄斑浮腫 治療後の網膜断層写真)・・・黄斑の中心の大きな浮腫は吸収したが全体的に浮腫が残存している。
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■黄斑クリニック担当医師一覧

西出忠之医師 黄斑疾患治療方針決定、硝子体手術執刀医
木村育子医師 抗VEGF抗体硝子体内注射療法主任、硝子体手術担当
中西美紗子医師 抗VEGF抗体硝子体内注射療法担当、硝子体手術担当
早川夏貴医師 抗VEGF抗体硝子体内注射療法担当、硝子体手術担当

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