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当教室で活躍する医局の先生達

ふれあい横浜ホスピタル 形成外科部長

開田恵理子先生

私は27〜35歳までの間に6人の女の子を出産しました。産前産後休業以外はフルタイムで仕事と育児を続けています。私のライフスタイルが読んでくださっている方の参考になればと思います。

卒業と同時に同級生だった夫と結婚し、研修医2年目で第1子を妊娠しました。来年どうしようという気持ちと酷い悪阻で頭がいっぱいで、すぐに佐武先生(現富山大教授)に報告しました。すると第一声「まずはおめでとう!」と大きな声で言ってくださったのです。想定外のお祝いの言葉は、初めて母親になる私にとってとても嬉しかったものです。

産後復帰初のオペはリンパ管静脈吻合の助手でした。マイクロの糸切りが下手くそになっていて自分でもびっくりするほどでした。前川先生(前教授)は「僕だって少し休みが続くと手が鈍るよ」と笑っていました。これから責任を持って手術をこなしていくには、長く休んではいけないな!と自分を奮い立たせた瞬間でした。

南部病院に勤務していたときでした。悪阻で何度もオペ中にトイレに行こうとする私に、長西先生(現主任部長)が「俺は妊婦と働いたことがないからそういうことがわからないよ」と言いました。今後のためになんでも話してみたほうが絶対良いだろうなと思い、産休制度や認可保育園に子供を預ける条件などについてもたくさん話しました。その後の理解とサポートには感謝しかありません。お互いの理解不足がなくなれば、マタハラだ!なんて叫ぶ女性は減るかもしれません。

約1年半ごとの出産で、上の子たちを認可保育園に、生まれたばかりの赤ちゃんを院内保育に預けてから出勤する日々が続きました。勤務中は目の前の仕事を終わらせることに夢中で、正直責任感に乏しいので仕事に自身はなく、勤務を終えると子育てに追われる毎日でした。ワンオペ育児で多忙すぎて、なぜ形成外科医になったのか目標を見失うほどで、このくり返しの毎日の先に答えはあるのか疑問に思うことさえありました。

一方、まれに保育園の閉園時間までオペ室にいたり、土日に赤ちゃんをおんぶして包交したり、私の無責任な仕事に上司から説教を受けたことがありました。これは今となっては不可欠でとても大事な経験でした。自分の身を預けて手術を受ける患者さんの期待に答えるということは、責任重大だということを決して忘れてはいけないからです。

今では1人体制で診療し、月に250例以上の手術やレーザーをこなせるようになりました。多くの患者様や地域の先生方に頼っていただけることは、本当にありがたく嬉しいものです。今までこつこつと診療を続け、手先を動かし続けてきた結果だと思っています。そしてこれこそが育児で一番忙しかった時期に支えてくださった上司や同僚への恩返しかと思っています。

市中病院勤務が多かった私にはまだ習得していない分野や手技がたくさんあります。自分の時間がもう少しできるまで、楽しみが残っていると思うことにしています。

ちなみに子育てにはそれなりのこだわりを持っています。多くの食材を使った食事を作って食べること、バレエやピアノをはじめとする情操教育で豊かな想像力や表現力を身につけること、季節の花を植えたりや行事の飾りつけをして彩りよく季節を感じること、たくさんの人とふれあうこと、そして少しずつ自立していくこと…。みんないい子に育ち、自慢の子供たちです! 多くの女性が社会で男性と同じように働くようになって、まだせいぜい1世代しか経っていません。専業主婦の母親に育てられた世代の人たちに、完璧な理解を求めるのには限界があります。自分の家だってそうです。それでも今は自分の信念と目標を持って進んでいくしかありません。本気で続けていれば医師でなくとも同じような境遇の友達も集まってきて、楽しいものです。これからもエネルギッシュに頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

関東労災病院 形成外科医員

佐治詩保子先生 

私は山梨大学卒業後、出身地の神奈川県に戻り、横浜労災病院で初期研修を行いました。「悪いものを取り除く」一般的な外科のイメージとは異なり、「作り上げる」外科、「患者のQOLを上げる」外科であるという側面に惹かれ、形成外科を選択しました。

入局後は基本的に1年ごとのローテーションで、最初の3年間は専門性の高い疾患や再建手術などダイナミックな手術を経験し、その後は市中病院にて小手術や生活習慣病に伴う疾患治療、美容的ニーズにお応えするなど、より患者さんに身近な診療を行っています。

形成外科は体表面であれば頭の先から足の先まで取り扱い、患者層も新生児から高齢者まで幅広く、手術の規模も一人でこなせる小手術から他科と合同で行う10時間超の大手術まで、多岐に及んでいます。その幅広さに対応していく大変さを噛みしめる毎日ですが、一方で多様な治療への興味は尽きることがありません。

プライベートでは、妊娠出産などで仕事に穴をあけることもあり、同僚の先生方には多大なご迷惑をおかけしました。私の個人的な事情を受け入れ快く助けてくださった先生方には感謝の言葉しかありません。市中病院の形成外科はスタッフの人数が少ないため一人の欠員による影響は大きく、欠員を埋める決まったルールなどはない状況です。日頃からのコミュニケーションとお互いの状況に思いやりを持つことが不可欠です。今入局者の半数ほどが女性医師です。女性の働く環境は整ってきているといえども、女性医師は出産や子育てなど、働き方や生き方の選択を迫られる局面が多々あります。そんな時、たくさんの先輩がモデルケースとなってくれると思います。形成外科に興味があるようであれば、ぜひ私たちとプライベートとの両立を模索しながら頑張ってみませんか?

藤沢市民病院 形成外科医長

藤井晶子先生

私は2009年に弘前大学を卒業後、出身地の横浜市に戻り横浜栄共済病院で2年間の初期臨床研修を行いました。初期研修終了後、2011年4月より当科に入局し、初めの3年間は附属病院・附属市民総合医療センター形成外科・同センター高度救命救急センターで後期研修を行いました。その後初期研修でもお世話になった栄共済病院でスタッフとして勤務したのち、2015年より現在まで藤沢市民病院で働いています。

形成外科には学生時代から興味があり、特に小耳症の耳介形成や各種癌の再建手術といった無いものを作り出す手術や、顔面骨骨折の壊れた構造を再構築していく様子などに心を惹かれました。ただ手術に興味はありましたが体力に自信はない方で、進むべきかどうか迷っていましたが、前教授の「形成はほとんど座って手術できるし、老眼になっても顕微鏡があれば見えるから問題ないよ」という言葉に背中を押されて(?)入局を決めました。

現在は眼形成眼窩外科を専門にしており、眼瞼・眼窩・涙道などの疾患をメインに診ていますが、藤沢市民病院は救命センターを擁する地域中核病院ですので、その他外傷・腫瘍・先天異常など一般形成外科分野も幅広く診療を行っています。

私生活では2018年に出産し、10か月の産休・育休の後、常勤フルタイムで職場復帰しました。出産前に教授や医局長と相談し、人員の調整など様々なバックアップをしていただき、希望する形での復帰や勤務継続を叶えることができました。専門医取得は出産より前でしたが、復帰後に皮膚腫瘍外科分野指導医も取得し、今は次のサブスペシャリティ専門医の取得を目指してコツコツと症例を重ねている所です。

女性で外科系を選択すると、体力面の不安や出産に伴う常勤・非常勤、手術のブランクなど様々な心配事があるとは思いますが、当医局には色々な働き方で育児などプライベートと仕事を両立している医師(女性だけでなく男性医師も)がいます。また、形成外科は扱う分野が非常に多岐にわたりますので、重症例の緊急手術や長時間にわたる再建手術から、短時間・局所麻酔の外来小手術まで、技術を活かせる場面は様々です。ライフステージにあわせてメインの仕事内容を選択していくことで、長く第一線で続けられる診療科だと思います。

もし形成外科に少しでも興味があるのなら、手術が面白いと思うなら、是非飛び込んでみてください!一緒に耳を作ったり指を繋いだりまぶたを挙げたりしませんか?皆さんの入局をお待ちしています!

横浜労災病院 形成外科副部長

矢吹 雄一郎先生

私は2006年に横浜市立大学医学部を卒業しました。2008年当教室に入局し、早15年超、月並みですが厳しくも楽しい毎日でした。今でこそ先天奇形(小耳症など)やマイクロサージャリー(リンパ浮腫、頭頚部・乳房再建など)、難治性潰瘍(褥瘡など)の診療が専門、得意だと言えますが、入局した当初は自分の能力の低さに「こんなはずじゃなかった」と退局を考えたことが何度もありました。比較的シンプルな症例においても、先輩医師にダメ出しされ、相談を重ねたり文献を調べた上でカンファランスに出しても、今度は別の先輩にダメ出しされ、何が正解なのか混迷を極めました。そんな中、経験を重ねていくうち、多様な意見のそれぞれがいずれも正解であることに気づきました。ならば、それぞれの正解の中から良いところを抽出し、自分なりの「より良い正解」を見つけていけばいい。そう気づいてから、少しずつ楽になっていったと記憶しています。これは、形成外科に限らず広く世の中一般的に言えることかもしれませんね。

手術手技的には毎日のようにマイクロに触れていた時期が一番伸びました。当時は毎週回ってくる医学生にも顕微鏡を用いた血管吻合に触れてもらう機会を設けていて、その指導役を「ブッキー!!やるんや!!」と上司に言われて担当していました。業務の合間に血管を剥離し吻合するお膳立てをする。そして医学生に吻合させる。当然、うまく吻合できる医学生はごくわずかですので、結果としてほとんど私が再吻合していました。更にこれらに加えて週2回ほどリンパ管静脈吻合術や頭頸部再建手術の助手を担当していました。当時は目の周りに丸い褥瘡ができるかと思いました(できるわけないんですけども)。しかし、徐々にマイクロの手技に自信が持てるようになりました。自分の中にこういった「軸」ができると、他人や他領域の手術手技に対する理解を深める取っ掛かりにすることができます。これは、外科医として研鑽を積むポイントの一つだと思っています。

以前、肘関節瘢痕拘縮の患者さんを担当しました。10歳前後のとき血液凝固機能障害を契機として右上肢コンパートメント症候群を発症し、それに対して減張切開を行い救肢したというケースです。主治医の異動により私がバトンタッチを受けました。問題の肘関節は肘窩を中心に植皮と複数回の修正術が成されておりましたが、依然と面状に強い瘢痕拘縮を来していました。90度ぐらいで固まってしまい、それ以上は全く伸ばせない状態。私が担当した当時彼女は15歳ぐらいで、プロダンサーを目指して厳しいトレーニングをしていました。しかし、肘が伸びない事で十分に出来ない振り付けがある。そういう振り付けが入る度に心が痛い。と、おっしゃっていました。

これに対して私は、瘢痕を全て切除し遊離皮弁(自分の皮膚や脂肪をそれらを栄養する血管ごと採取し、血管吻合を行い移植するというもの)で置き換える、それしか無い、と思いました。理論的に考えても遊離皮弁の適応、手技的にも大丈夫。ただ、遊離皮弁の採取に伴う侵襲や、皮弁壊死を中心とした合併症を考えると、若年の患者に対してそれらを適応するのに正直躊躇しました。しかし、手の外科を専門領域とする同期(あの時はありがとう!)や職場の先輩後輩のサポートを受けつつ、磨いた腕を信じて手術に臨みました。結果として、遊離皮弁は問題なく生着し、肘関節の屈曲拘縮は完全に回復しました。現在その患者はダンススクールのアシスタントをしながら高校に通ってプロダンサーを目指しています。先日、彼女が踊っている動画を見せて頂いたのですが、繊細な作業で挙上し吻合した遊離皮弁が想像を絶するほど極めて激しく伸び縮みしていて、深く感動しました。それに至るまでの本人のリハビリにも思いを馳せて、診察室で心の中で涙ぐみました。形成外科には患者さんの、いやそれに関わる多くの人の人生を変える力がある、そう改めて確信する瞬間でした。

形成外科にはそういった感動がちりばめられています。小耳症術後のお子さんが短髪になって外来に来たとき、口腔上顎洞皮膚瘻の患者さんが術後に大好きなコーラを飲めるようになったとき、坐骨部褥瘡術後の患者さんがパラリンピックの選考会に出場できたとき、目頭の瘢痕拘縮がキレイに治ったとき、、、ただし、こういった症例には必ず周りの人から教えてもらったり吸収した物事が活きています。やはり、プロフェッショナルとして「日々の研鑽」は欠かせませんね。

本稿を執筆している現在、私自身は横浜市港北区にある市中病院に籍を置いております。スタッフ4人中2人は乳幼児の子育て世代。お子さんの突然の発熱や下痢に出勤できない事や早退せざるを得ないこともしばしば。COVID-19濃厚接触者勤務制限も相まって、部長と2人きりで朝まで再建した時は走馬灯がよぎりました。産休育休や介護、病気による長期療養など、十分では無いものの医局としてサポートする体制はかなり整備されてきています。しかし、実際の現場においてはお互いのサポートがないと診療体制の維持ですら無理だという事を身を持って知りました。こういった中「プロとしての日々の研鑽」を考えると、馬鹿みたいに時間と体力を使ってトレーニングする時代じゃないんだな、と深く感じる今日この頃です。何を習うか、何を教えるか漫然とやるのは良くない。教わるほうも教える方も目的と方向性を持って効率的にやっていかないとならないですね。ということで、頭を使いつつ頑張ってやっていきますので、皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

北山晋也 先生 

私は横浜市立大学を卒業し、母校の形成外科に入りました。細かい作業が好きだったことと、必ずしも命や健康にかかわるわけではないがQOLを上げてより良く生きることを目指す、という形成外科の特性に魅力を感じたからでした。

入局後は様々な関連病院と大学病院を回り、専門医を取得後に大学病院に戻って現在は主に頭頚部再建外科とリンパ浮腫の治療に携わっています。入局時に「将来はマイクロを!」と思っていたわけではないのですが、細かい作業好きが高じてか、気が付けばマイクロの手術ばかりしています。

頭頚部再建はあっさり終わることもありますが長時間手術となることもあり、しかも形成外科の出番は腫瘍切除後、後半戦なので、切除が終わるまでひたすら待ち、日中の診療が終わって夕方から夜中まで、ということもあります。また遊離皮弁手術がほとんどなので、血流が再開しない場合には手術を終えることができず、先が見えない戦いとなることもあります。このように時に大変な頭頚部再建分野ですが、「再建してくれるからしっかり切除できる」と他科の先生に言ってもらったり、切除後にも機能が保たれたり、良好な結果が得られ患者さんが喜んでくれたりすると、やはりやりがいのある分野だと感じます。

リンパ浮腫は見た目以上にQOLの低下をもたらし、困っている患者さんが多い割に治療が確立していない分野です。圧迫治療と外科的治療(リンパ管静脈吻合術)を組み合わせて治療を行っていますが、思うような効果が得られない方もおり、まだまだ改善が必要です。裏を返すと研究の余地が広く残された分野ということもでき、新しい治療や知見を得るために基礎研究や臨床研究も並行して行っています。手術は1mm以下の脈管をつなぐ技術と集中が必要で、手術後には眼や体が疲れていたりしますが、手術中は作業に没頭することができます。 私が取り組んでいる分野を簡単に紹介しましたが、形成外科は他の多くの分野も同様にさまざまな魅力や課題があり、どの分野を選んだとしてもやりがいを感じることができると思います。一人でも多くの方に形成外科に関心を持ってもらえれば幸いです。

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