「機能性食品」領域

「機能性食品が生体内の蛋白質の動態や情報伝達系に及ぼす影響」(平野 久)

1.研究の背景と目的

ライオンは、歯周疾患予防研究を進めていく中で、歯周疾患と脂質異常との間に関係があることを明らかにした。また、歯周疾患の原因の一つである細菌の毒素を中和する作用を有する成分「ラクトフェリン」が、内臓脂肪の低減にも効果があることを明らかにした。これまでに、ヒト臨床試験によりラクトフェリンの内臓脂肪低減効果を、科学的に立証すると共に、その作用メカニズムを研究する過程で、ラクトフェリンが内臓脂肪に到達することを、マウスを用いた実験で証明し、また、in vitro培養系で脂肪細胞に対する脂肪合成抑制作用と脂肪分解促進作用を見いだしている。本研究では、内臓脂肪の過剰蓄積がその病態の根本原因である「メタボリックシンドローム」について、翻訳後修飾異常がどのように病態に関連しているのかを明らかにし、バイオマーカー開発を目指すと共に、ラクトフェリンの作用機構について解析することにした。

2.主な研究成果

プロテオーム解析より、脂肪分解関連蛋白質であるアデニル酸シクラーゼ(cAMP合成酵素、AC2)や、ホルモン感受性リパーゼ(脂肪分解の主要律速酵素、HSL)の発現上昇が見られた。培養細胞にラクトフェリンを添加すると15分以内にプロテインキナーゼA(PKA)によりリン酸化が亢進された。また、細胞内cAMP濃度の上昇も確認された。これらの結果から、ラクトフェリンは一般的な脂肪分解経路であるcAMP経路を活性化することが確認された。さらに、c-Rafの発現上昇やERK1/2のリン酸化亢進、ERK経路の活性化、ERK/cAMP両経路の下流因子であるCREBの活性化などが見られた。ラクトフェリンは、脂肪分解に関与する重要な蛋白質の発現制御に関わっていると考えられた。

 3.今後の研究方針

化学架橋剤を用いてラクトフェリンと細胞中で結合している蛋白質を架橋した後、免疫沈降法で精製し、質量分析装置で分析することによってラクトフェリンと結合する蛋白質であることを検証する。

 

「健康状態を反映する新規のバイオマーカーの探索とそれを用いた機能性製品の開発」
(大野 茂男)

1 研究の背景と目的

コラーゲンは生体中で量が多く、かつ翻訳後修飾を受ける蛋白質の一つである。食品の中にも多量に含まれ、部分的に分解された製品が健康食品として広く用いられている。しかし、その効能の機構は不明である。本プロジェクトでは、本学とファンケルとが協働し、コラーゲン食品の効能の機構を解析すると同時に、それを担う分子の同定を行う事を目指している。これを通じて、新たな機能性食品を開発する。

2 主な研究成果

コラーゲン食品の経口摂取に伴い、コラーゲンに由来する翻訳後修飾を受けたジペプチド及びトリペプチドが、血中に一過的に増加する事を見いだした。さらに、少なくともそれらの一部については、皮膚に到達して、皮膚での濃度が一過的に亢進する事を確認した。

3 今後の研究方針

健康食品としてのコラーゲン食品には、様々なコラーゲン由来のペプチドが含まれており、それらが何らかの効能を有していると一般に考えられている。しかし、その詳細は不明である。今回の結果を踏まえ、これらの分子の生物作用を明らかとすることにより、コラーゲン食品の機能性の改良や、新たな機能性食品の開発につなげることができると考えている。

機能性食品としてのコラーゲンに注目しているが、最近、モデルラットでは摂取されたコラーゲン由来ペプチドが短時間で皮膚に移行することが明らかになった。これは、食品中のコラーゲン由来ペプチドが吸収され、皮膚へ移行する可能性を否定できない結果だと考えられる。

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