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CTによる細胞外液腔(CT-ECV)が心アミロイドーシスの診断に高い診断能を示すことを循環器画像診断のトップジャーナルであるJACC Cardiovascular Imagingに報告しました

論文情報

タイトル: Clinical Utility of Computed Tomography–Derived Myocardial Extracellular Volume Fraction: A Systematic Review and Meta-Analysis

著者: Shingo Kato, Yuka Misumi, Nobuyuki Horita, Kouji Yamamoto, Daisuke Utsunomiya

掲載雑誌: JACC:Cardiovascular Imaging

DOI:https://doi.org/10.1016/j.jcmg.2023.10.008

研究背景

 心臓アミロイドーシスは、異常なタンパク質(アミロイド)が心筋組織に蓄積し、心臓の正常な機能を妨げる病気です。この病態は徐々に進行し、心臓の収縮能力の低下や不整脈などの症状を引き起こします。現在、治療薬は保険適用されていますが、進行した症例では効果が限定的であり、早期発見と治療が重要とされています。コンピュータ断層撮影(CT)による細胞外液分画(ECV)の技術は、心筋の異常を画像で評価することを可能にしました。この技術は近年、世界的に注目されており、その有用性を示すデータが多数報告されています。当科講師、加藤真吾、三角優花らはこれらのデータをメタ解析により統合し、画像所見の全体像を明らかにし、循環器画像診断のトップジャーナルであるJACC Cardiovascular Imaging(2022 Journal Impact Factor of 14)に報告しました。

研究内容

 この研究では、42の論文から2545名の心疾患(うち心臓アミロイドーシスは161名)と554名のコントロール群のCT-ECVのデータを抽出し、メタ解析を行いました。大動脈弁狭窄症と心臓アミロイドーシスが合併することが知られており、これら二つの疾患を区別することが非常に重要です。そのため、心臓アミロイドーシスと大動脈弁狭窄症を鑑別する能力に焦点を当てて解析を行いました。結果、CT-ECV値は、コントロール群で28.5%(95% CI: 27.3%-29.7%)、大動脈弁狭窄症群で31.9%(95% CI: 30.2%-33.8%)、心臓アミロイドーシス群で48.9%(95% CI: 44.5%-53.3%)でした(図1)。CT-ECVは大動脈弁狭窄症群ではコントロール群と比較して有意に上昇していましたが(P = 0.002)、心臓アミロイドーシス群では大動脈弁狭窄症群よりもさらに上昇していました(P < 0.001)。CT-ECVは心臓アミロイドーシスの高い診断精度を持っており、感度は92.8%(95% CI: 86.7%-96.2%)、特異度は84.8%(95% CI: 68.6%-93.4%)、要約受信者操作特性曲線下の面積は0.94(95% CI: 0.88-1.00)でした。

今後の展開

 日本はOECD加盟国の中でもCTスキャナーの保有台数が特に多いため、心臓アミロイドーシスの診断にCT-ECVの活用が有効なアプローチであると考えられます。さらに、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁植え込み術(transcatheter aortic valve implantation: TAVI)の術前CTにおいて、ECV評価を行うことで心臓アミロイドーシスの合併の評価が可能になります。これはCT-ECVが最も有効に活用される状況の一例です。また、今後は心臓アミロイドーシスの薬剤治療の効果を判定する際にも、CT-ECVの有用性についてのさらなる検証が期待されています。

2024.02.22