横浜市立大学 放射線診断学教室の研究グループは、次世代CTであるフォトンカウンティングCT(Photon-counting detector CT:PCCT)を用いた肺動脈CT血管造影(CT pulmonary angiography:CTPA)について、これまでに報告された研究を体系的に解析し、その有用性を検証しました。
その結果、従来型CTと比較して、PCCTでは画質を維持しながら放射線被ばくや造影剤使用量を低減できる可能性が示されました。また、慢性血栓塞栓性疾患の診断において、PCCTから得られるヨードマップが高い診断能を示すことも明らかになりました。研究成果は2026年8月24日、European Radiology にオンライン掲載されました。
肺動脈CT血管造影(CTPA)は、肺動脈内の血栓を評価するために広く用いられており、急性肺塞栓症の診断における中心的な画像検査です。
一方、CTPAでは放射線被ばくに加え、肺動脈を描出するためにヨード造影剤を使用します。そのため、繰り返し検査が必要な患者や腎機能が低下している患者などでは、より少ない被ばく線量・造影剤量で高品質な画像を得ることが重要となります。
近年登場したPCCTは、従来のEnergy-integrating detector CT(EID-CT)とは異なり、入射したX線光子を直接計測する新しい検出器技術を採用しています。これにより、高い空間分解能やエネルギー情報を利用した画像再構成が可能となり、CTPAへの応用が期待されています。
本研究では、PubMed、Web of Science、Cochrane CENTRALを用いて2026年3月10日までの研究を系統的に検索し、PCCTによるCTPAを評価した12研究、計950例を対象としてシステマティックレビューおよびメタ解析を行いました。
主に、
について評価しました。
従来型CTとPCCTを比較した研究を統合すると、放射線被ばくについては5研究・854例で、PCCTによりCTDIvolが平均2.85 mGy低下していました。
また、造影剤については2研究・322例の解析で、PCCTでは総ヨード量が平均5.62 gI少ないという結果でした。
一方、SNRおよびCNRについては、PCCTと従来型CTとの間で明らかな差は認められませんでした。つまり、今回の解析からは、PCCTが画像品質を大きく損なうことなく、被ばくおよび造影剤を減らせる可能性が示唆されました。
ただし、研究間の撮影条件などには大きなばらつきがあり、より保守的な統計手法であるHartung–Knapp法を用いた感度分析では、被ばく線量および造影剤量の低減は統計学的有意差には至りませんでした。このため、今後さらに撮影プロトコルを標準化した研究で検証する必要があります。
PCCTのもう一つの特徴は、通常の形態画像に加えて、肺内のヨード分布を可視化するヨードマップを作成できることです。
慢性血栓塞栓性疾患を対象とした2研究・109例を統合したところ、PCCTヨードマップの診断能は、
感度 92.3%、特異度 83.4%
と良好な結果を示しました。
ヨードマップでは肺実質への造影剤分布を評価できるため、肺動脈そのものの形態だけでなく、血流障害によって生じる肺灌流異常を視覚化できる可能性があります。
今回の研究から、次世代のPCCTを用いたCTPAは、従来型CTと比較して、
「高い画質を維持しながら、被ばくと造影剤使用量を低減できる可能性」
が示されました。
特に、高齢者、腎機能低下患者、繰り返しCT検査を必要とする患者などでは、放射線被ばくや造影剤負荷を軽減することには大きな臨床的意義があります。
さらにPCCTでは、高空間分解能の形態画像とヨードマップなどの機能情報を一度の撮影から得ることができます。今後撮影方法の標準化とさらなる臨床研究が進むことで、肺塞栓症や慢性血栓塞栓性肺高血圧症を含む肺血管疾患の診断をより低侵襲かつ高精度に行う技術として普及することが期待されます。
Photon-counting detector CT for CT pulmonary angiography: a systematic review and meta-analysis
Kato S, Azuma M, Horita N, Kinoshita M, Iwahashi T, Yasuda N, Sawamura S, Ishiwata Y, Utsunomiya D.
European Radiology. Published online August 24, 2026.
doi: 10.1007/s00330-026-12829-5
PMID: 42635786.
2026.08.27