【症例報告】Multimodality imaging-guided transcatheter closure of a tortuous LCX-CS fistula
Eur Heart J Case Reports（European Heart Journal Case Reports）に掲載
Sekii R, Kato S, Fukui K, Utsunomiya D, Hibi K. Eur Heart J Case Rep. 2025 Oct;9(10):ytaf498.
概要
冠動脈瘻（coronary artery fistula, CAF）は比較的稀な先天性異常であり、冠動脈と心腔または大静脈との間に異常交通を認める疾患である。多くは偶発的に発見されるが、瘻孔が大きい場合には左→右シャントを生じ、労作時息切れなどの症状を呈することがある。本症例では、左回旋枝（LCX）から冠静脈洞（CS）へ連続する高度蛇行性の大きな冠動脈瘻に対し、マルチモダリティ画像診断（CT・MRI・核医学）を駆使した経カテーテル治療を行い、良好な結果を得た。
症例概要
44歳女性。労作時呼吸困難と連続性雑音を主訴に受診。造影CTでLCXからCSに流入する拡張・蛇行したCAFを認めた。心臓MRIでQp/Qs比は1.50と左→右シャントを示したが、心筋シンチでは虚血所見を認めなかった。術前CT解析により瘻孔遠位部に狭窄部位を確認し、三重同軸カテーテルシステムを用いた安定したアクセスルートを確立。経動脈的にコイル塞栓を施行し、単回治療で完全閉塞を達成した。合併症はなく、6か月後のMRIでQp/Qs比は1.17へ改善し、CTでも瘻孔閉塞を確認した。
考察
CAFに対する経カテーテル治療は、外科手術に比べ低侵襲で安全かつ有効な選択肢である。特に本症例のように高度蛇行性を伴う複雑病変においては、術前のマルチモダリティ画像による形態・機能評価および手技戦略立案が重要である。また、三重同軸カテーテルシステムの使用が安定したデバイスデリバリーを可能にし、成功に寄与した。
まとめ
本症例は、CT・MRI・核医学を統合した画像評価と工夫を凝らしたデバイス戦略により、複雑な冠動脈瘻の安全かつ確実な経カテーテル閉鎖を実現した貴重な報告である。マルチモダリティ画像が構築する治療戦略の有用性を示す一例といえる。
2025.10.24