受賞者:加藤真吾(横浜市立大学放射線診断科 准教授)
研究課題:心臓 MRIを用いた冠動脈微小循環障害の評価に関する研究
冠動脈疾患における冠動脈微小循環障害は、重要な病態であり、冠動脈が狭窄していない患者さんにおいても、独立した予後を左右する因子となることが、心筋陽電子放出断層撮影(Positron emission tomography: PET)による研究によって明らかにされています。しかしながら、心筋PETは一部の施設でしか実施できないこと、放射線被曝のリスクが伴うことなど、いくつかの課題が存在します。この研究では、心臓MRIの位相差シネMRIを用いて冠静脈洞の血流測定を行い、冠動脈の微小循環障害(coronary flow reserve: CFR)の計測とその臨床的な意義について検討しました。この方法は1.5テスラ以上のMRI装置を備える多くの施設で実施可能であり、PETに比べて汎用性が高く、放射線被曝のリスクがないというメリットがあります。276名の冠動脈疾患患者さんと、400名の冠動脈疾患が疑われる患者さんを対象にMRIによるCFRの計測を行い、フォローアップを実施した結果、両群においてCFRの障害が有意な予後規定因子であることが明らかになりました。
本研究は、循環器領域のトップジャーナルであるJournal of the American College of Cardiologyに受理され、関連する研究の中でも最も高い評価を受けた研究の一つです。研究の公表後、MRIによるCFRの有用性を示す研究が欧米を中心に多数報告され、その有用性が再確認されました。また、本研究の成果の一部は、2023年のアメリカ心臓協会および米国心臓病学会が共同で発行する慢性冠動脈疾患のガイドラインに引用されました(Virani SS et al. Circulation. 2023;148:e9-e119.)。
このような業績が高く評価され、2023年度の横浜市立大学医学会において『医学会賞』を受賞となりました。おめでとうございます!
2024.05.22