冠動脈の狭窄によって心筋虚血を来すことが病態の本体である冠動脈疾患の治療方針は心筋虚血の重症度によって決まります。近年の欧米で行われた大規模な臨床研究では中等度~重度の虚血の改善を目標に侵襲的な治療を行っても予後の改善が得られなかったというデータが得られ、臨床現場に大きなインパクトを与えました(DJ. Maron et al. N Engl J Med 2020; 382:1395-1407)。この研究結果は、冠動脈狭窄による虚血の評価のみでは不十分であり、新たなリスクマーカーが必要である事を示しているのかもしれません。我々の研究グループでは冠動脈の微小循環障害が新たなマーカーとして重要であると考え、心臓MRIによる冠血流予備能(coronary flow reserve: CFR)の研究を行ってきました(S. Kato et al. J Am Coll Cardiol 2017;70:869-879)。本研究では、横浜市大関連病院の共同研究という形で、冠動脈疾患における心臓MRIの冠血流予備能の有用性を検証していきます。
2022.05.06