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中嶋賢人先生からWorld Society of Emergency Surgery Congress 2022の参加記を寄稿していただきました。

 横浜市立大学附属病院放射線診断科の中嶋と申します。

 この度、表記学会(WSES2022)への参加および演題発表の機会をいただきましたためご報告いたします。

 WSESはWorld Journal of Emergency Surgeryという救急外科領域のガイドライン等を積極的に収載することで近年注目度が急上昇している雑誌を発行している欧州の学会です。今年は10月26日〜30日までオーストラリアのパースにて総会が開催されました。

 興味深い演題が多く拝聴させていただきましたが、特に印象に残っている内容は以下となります。

・腹部救急疾患において非造影CTでも方針決定に大きな影響を与えなかった

・複雑深在性脾損傷(日本外傷学会分類では3bに相当)であってもIVRによる止血を優先することでその後の脾摘を回避することは可能

・胸腔ドレーンの至適刺入位置をCTのVR画像から予測する

・コロナ禍による直腸異物患者の増加は社会性喪失の結果である

 私は兼ねてよりresuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta(REBOA)という外傷領域の蘇生に使用するデバイスの有用性に関する臨床研究を行っており、本学会ではeffectiveness of REBOA catheters for severe pelvic fractures requiring TAEという演題を発表して参りました。

 一歩海外に出ますと診療体制は驚くほど異なるもので、REBOAは日本では普遍的に使用されるデバイスですが、欧米での使用は増えてきているものの限定的でありオセアニアではまず使用されないということでした。

 そのため発表時のフロアはあまり盛り上がらなかったのですが、発表後に非常に興味を持っていただいたオーストラリアの外傷外科医がおり有意義な意見交換をすることができたとともに、依然この分野における日本の優位性が続くことを確信いたしました。

 あまり街に出る余裕がなかったのが心残りですが、パースは西海岸に位置し、穏やかな気候で住みやすそうな街でした。ピナクルズやウェーブロック、シャークベイなど自然が生み出した絶景が人気のスポットのようです。

 余談ですが、今回の渡航はコロナ禍直前に見学訪問したニューヨークのメモリアルスローンケタリングがんセンター以来でした。

 こちらのIVRセンターはIVR医20名以上を擁し11部屋ある血管造影室で年間23000件の手技を行っている米国屈指のハイボリュームセンターです。もしご興味がある先生がいらっしゃいましたらご紹介も可能ですのでご連絡いただけますと幸いです。

2022.11.25