がん最適化医療を実現する医療人育成
近年のめざましい医学の進歩は、がん医療に新たな技術革新をもたらしていますが、その一方で、それらが医療現場で個々の多様な状況に応じて適切に実践されているとは言い難く、それに対する社会からの改善要望も増大しています。本事業では、このようながん医療の課題を解決するために、人材不足が顕在化しつつあるゲノム医療、希少がんおよび小児がん医療、ライフステージ対応がん対策について、これらの各領域で既に先駆的な取組を行っている6大学が、その基盤を活用して、全国のモデルを形成すべく、大学連携教育を発展させる。それとともに、これら以外の新たなアンメットニーズに対応できる能力を有する人材も育成していきます。これらの取組においては、多職種連携によるチーム医療を基本とするとともに、医療全体を俯瞰できる能力の涵養も重視し、多様かつ複雑ながん専門診療が一人一人の個々の状況に応じて最適化される、全人的医療の実現を目指していきます。
附属病院長をトップとしたがんプロ運営企画委員会を設置しました。大学全体の取組として推進を図ります。また具体的なプログラムの運営・推進については、実務コーディネーター委員会によりスピード感を持って取り組んでいきます。
事業総括(事業責任者) | 医学研究科長 | 田村 智彦 |
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がんプロ運営企画委員長 | 附属病院長 | 後藤 隆久 |
実務コーディネーター委員 | 副学長 | 遠藤 格 |
事業推進プロジェクトリーダー | 医学部長 | 寺内 康夫 |
事業推進プロジェクトサブリーダー | 看護学科長 | 叶谷 由佳 |
看護学専攻長 | 赤瀬 智子 | |
実務コーディネーター委員長 | 医学研究科 医学科 がん総合医科学 主任教授 | 市川 靖史 |
実務コーディネーター委員 | 医学研究科 医学科 小児科学主任教授 | 伊藤 秀一 |
附属病院 輸血・細胞治療部 講師 | 柴 徳生 | |
医学研究科 医学科 放射線治療学 主任教授 | 幡多 政治 | |
医学研究科 医学科 放射線診断学 教授 | 宇都宮 大輔 | |
医学研究科 医学科 遺伝学主任教授 | 松本 直通 | |
医学研究科 医学科 運動器病態学 主任教授 | 稲葉 裕 | |
医学研究科 医学科 外科治療学 主任教授 | 代行: 山本 哲哉 | |
附属病院 消化器・一般外科 診療教授 | 利野 靖 | |
医学研究科医学科 血液・免疫・感染症内科学 主任教授 | 中島 秀明 | |
医学研究科 医学科 消化器内科学 主任教授 | 前田 愼 | |
医学研究科 医学科 肝胆膵消化器病学 主任教授 | 中島 淳 | |
医学研究科 医学科 呼吸器病学 主任教授 | 金子 猛 | |
医学研究科 医学科 口腔外科学 主任教授 | 光藤 健司 | |
医学研究科 医学科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 主任教授 | 折舘 伸彦 | |
医学研究科 医学科 産婦人科学 主任教授 | 宮城 悦子 | |
医学研究科 医学科 泌尿器科学 主任教授 | 槙山 和秀 | |
医学研究科 医学科 形成外科学 主任教授 | 前川 二郎 | |
医学研究科 医学科 精神医学 主任教授 | 菱本 明豊 | |
医学研究科 医学科 麻酔科学 主任教授 | 後藤 隆久 | |
医学研究科 医学科 循環器・腎臓・高血圧内科学 主任教授 | 田村 功一 | |
医学研究科 医学科 内分泌・糖尿病内科学 主任教授 | 寺内 康夫 | |
医学研究科 医学科 神経内科学・脳卒中医学 主任教授 | 田中 章景 | |
医学研究科 医学科 救急医学 主任教授 | 竹内 一郎 | |
医学研究科 医学科 眼科学 主任教授 | 水木 信久 | |
医学研究科 医学科 視覚再生外科学 主任教授 | 門之園 一明 | |
医学研究科 医学科 リハビリテーション科学 主任教授 | 中村 健 | |
医学研究科 医学科 脳神経外科学 主任教授 | 山本 哲哉 | |
医学研究科 医学科 病態病理学 主任教授 | 代行: 藤井 誠志 | |
医学研究科 医学科 分子病理学 主任教授 | 藤井 誠志 | |
医学研究科 医学科 医学教育学 主任教授 | 稲森 正彦 | |
附属病院 病理部 准教授 | 山中 正二 | |
医学研究科 医学科 皮膚科学 主任教授 | 山口 由衣 |
文部科学省は、がん対策基本法(2006年6月策定)第14条の「がん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成」、第3次対がん10か年総合戦略に基づき全国どこでも質の高いがん医療を受けることができるようがん医療の「均てん化」に応じて、2007年~2011年度に第一期「がんプロフェッショナル養成プラン」、2012年~2016年度に第二期「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」、2017年からは第三期「多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)養成プラン」の推進が掲げられています。
第一期「がんプロフェッショナル養成プラン」は、がんを横断的に診療できる専門医療人を養成し、チームとしてがん医療を推進し、大学病院等との有機的かつ円滑な連携のもとに行われる大学院プログラムを実施し、東京大学(主幹)・横浜市立大学・東邦大学・日本大学が4大学共同で申請した「横断的ながん医療の人材育成と均てん化推進」プログラムが全国18拠点(95大学)のうちの1つとして採択されました。日本のがん医療で不十分とされている放射線療法、化学療法、緩和医療等に関する専門資格取得に特化した大学院教育コースが全国的に開設され、日本のがん専門医療人の教育システムが大きく変革しました。横浜市立大学は、大学院医学研究科博士課程(がん薬物療法専門医コース・放射線治療専門医コース・緩和ケア専門医コース)17名、修士課程(放射線治療技術コース・がん専門薬剤師コース)7名が修了。インテンシブコース(大学院の科目履修等による短期研修コース)は7名が修了し、地域のがん医療の質の向上や地域のがん医療人の生涯教育に貢献してきました。修了生はがん診療連携拠点病院、各地域の関連病院などで生命の尊厳に基づき横断的がん医療の推進、均てん化推進を実践しています。
第二期「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン」は、がん専門医療人養成の拠点の場を構築する目的で、研究者養成に重点を置く東京大学に、教育改革(横浜市立大学・東邦大学)、地域医療(自治医科大学)4大学合同で申請した「がん治療のブレイクスルーを担う医療人育成」プログラムが全国15拠点(100大学)のうちの1つとして採択されました。横浜市立大学では教育改革部門を基盤とし、トータルな考え方に基づき、多職種連携を推進し、最先端の治療技術を提供できると共に国際的な視野を深め活躍できるプロフェッショナルなリーダーを養成し、生命の尊厳性につなげ、がん集学的治療の教育基盤を形成してきました。「トータル・オブ・システム」に基づき、多様性、持続発展教育、グローバル化の人材養成の三本柱として、それらを実現するために、キャンサーボード、多職種連携教育、プロフェッショナリズム教育、連携大学合同セミナー、がん診療の均てん化、地域のがん診療の質向上の教育を実施しました。キャンサーボードは2007年から実施し、職種別参加状況は多職種メンバーが年々増加し、2018年3月には198回(うち骨転移キャンサーボード:22回、がん地域連携カンファレンス:5回)の開催になります。グローバル化が進む社会においてトータルな考え方が、本学の特長である国際化の取組として、スイス・バーゼル大学病院・核医学講座の希少がんである神経内分泌腫瘍に対するペプチド受容体標的放射性核種治療法の施設見学をがんプロ海外研修として2013年2月24日から3日間実施し、最先端の治療・技術を学びました。2014年9月26日、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターから臨床腫瘍専門医を招聘し、最新の薬物治療の講演、チーム回診とカンファレンスを実施しがん医療の実践的手法を学びました。2014 年4月には横浜市立大学に「がん総合医科学講座」が開設され、同年4月21日テキサス大学MDアンダーソンがんセンターと覚書(MOU)を締結し、がんの予防や治療・研究などに関する連携を開始しています。本教育プログラムでは、市民・医療関係者の合同セミナーを実施し、最先端のがんに関するセミナー、海外招聘セミナーを開催し、がんプロ公開セミナーとして、持続可能な多様性の調和教育につなげています。2013年5月より、連携大学において遠隔同時中継により本学の合同セミナーを23回開催し、大学間の連携を深めがん医療の均てん化に努めています。現在、本学の大学院医学研究科博士課程「先端的がん治療専門医養成コース」は、41名の学生が在籍しています。日本のがん専門医療人の教育システムとしてグローバル化に到っております。
第三期「多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)」養成プラン」に東京大学(主幹)・横浜市立大学・東邦大学・自治医科大学・北里大学・首都大学東京が申請したプログラム「がん最適化医療を実現する医療人育成」が専門医の全国の大学を対象とする13件(98大学)のうち、特に優れた11件の取組の1つとして採択されました。第三期継続はAll-Japanとして全国大学連携の拠点化、多職種の人材育成と枠をこえた進化した組織体につなげています。
新たなニーズの人材育成として持続可能な未来に向けて多様性を生かし重んじる共存共生、個人の責任ある生き方、進化創造した共に生きる、生命の尊厳、調和教育に基づき「ゲノム医療」「小児・希少がん」「ライフステージ」の新ニーズに対応したがんプロフェッショナルを育成し、多職種教育、がん医療の均てん化のより一層の推進を目指します。
本学は、新たに医学研究科博士課程を対象とした「Next Generation Oncologist養成コース」、医学研究科修士課程、多職種を対象とした「次世代オンコロジー医療スタッフ」養成インテンシブプログラムを実施します。インテンシブコースにおいては、神奈川県人口が増加する中、がん専門施設が十分とはいえず、地域医療のがん専門医療人の育成、新たなニーズの人材育成の展開により、多様性の個の生き方、生命の尊さを学ぶ“生命の尊厳”、“共に生きる”、地域のがん医療の質向上につなげていきます。
コースの教育内容は、e-learningによって学内の登録者により視聴可能でありがん医療に関する最新の知識や技術について学ぶことが可能となり、次世代の社会、地域を創成し、多様性の調和教育に結びつけていきます。
1)厚生労働省:がん対策基本法(平成19年4月1日施)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/dl/s0405-3a.pdf
2)厚生労働省:第3次対がん10か年総合戦略
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/07/h0725-3.html
3)文部科学省:「がんプロフェッショナル養成プラン
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/gan.htm
4)文部科学省:「がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/1314727.htm
5)文部科学省:「多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)」養成プラン」
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/1383121.htm
6)岡野 泰子、市川 靖史、遠藤 格:新しいがん教育の推進-横浜市立大学がんプロフェッショナル養成基盤推進プランの取組-.横浜医学,67;109-117:2016
7)岡野 泰子、市川 靖史、遠藤 格:学術認証フェデレーションを活用したがん専門教育のための遠隔講義-横浜市立大学がんプロフェッショナル養成基盤推進プランの取組-.横浜医学,67;591-599:2016
8)岡野 泰子、市川 靖史、遠藤 格:多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)養成プラン横浜市立大学の展望-多職種教育を可能にするがん専門教育のための方策-.横浜医学,68(4);563-576:2017
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