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当研究室の実験プロジェクトには以下のものがあります

cAMP信号伝達研究

細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPシグナルを中心に研究しています。 細胞膜表面の受容体からの刺激は蛋白質に伝わり、刺激性あるいは抑制性蛋白質の活性化は、細胞内cAMP産生酵素であるアデニル酸シクラーゼの活性化を引き起こします。 cAMPシグナルは心筋細胞のカルシウムシグナルや収縮蛋白の調節に重要な役割を果たします。 アデニル酸シクラーゼには9つのサブタイプがあり、心臓には5および6型(あるいは心臓型)とよばれるサブタイプが発現します。 これらのサブタイプは石川らのグループが世界に先駆けて発見したものです。教室では、これらのサブタイプを欠損あるいは過大発現した動物モデルを作成し、個体レベルでの変化を研究しています。 従来受容体のレベルで制御を受けると考えられていた自律神経調節が、実は効果酵素のサブタイプのレベルにおいても強い制御をうけるなど、次々と新しい事実がわかってきました。 また、これらの酵素を標的とした新薬開発も行っています。世界中で販売されているバイアグラはcAMPを分解する酵素の調節薬ですが、 われわれはcAMP産生酵素調節薬にも同様の薬剤としての開発の可能性を見出しています。

カルシウム信号伝達研究

 心筋収縮力を決定する最大の因子が細胞内カルシウムシグナルです。心筋細胞内のカルシウムシグナルは細胞外からL型カルシウムチャンネルを介した機構と、 SERCAをはじめとする細胞内カルシウム調節機構があります。われわれは細胞内カルシウム調節機構として近年発見されたサルコリピンなどの調節蛋白の機能を、遺伝子操作動物を用いて研究しています。カルシウム調節機構は従来考えられていたものよりはるかに複雑で、多数の機能制御分子が関与していることがわかってきました。とくに動脈管と呼ばれる胎生期器官の制御にも大切な役割を果たしています。動脈管の閉鎖は新生児にとって不可欠な現象ですが、このプロセスの異常が動脈管開存症などの様々な障害を引き起こします。我々は多数の分子の機能を統合的に解析すると共に、将来の先天心奇形や心不全を初めとした心疾患の治療に応用していくことです。

G蛋白シグナル研究

心臓の機能制御に三量体G蛋白を介する情報伝達は必須であり、心肥大、心不全をはじめ循環器疾患の発症・進展に密接に関与します。近年、G蛋白が細胞内で受容体以外の蛋白(G蛋白活性制御因子)によって活性化されることが明らかになりました。その生理的、病態生理的意義は現在盛んに研究されていますが、我々は最近、狭心症の虚血刺激により発現する新たなG蛋白活性制御因子を同定しました。我々はG蛋白活性制御因子の同定と機能解析を進め、まだ知られていないG蛋白系の機能を解明することから新たな治療アプローチ、創薬を目指します。

細胞増殖シグナル・有機磁性体研究

細胞増殖シグナルは、発ガンのメカニズムとしてのみならず心臓における肥大形成メカニズムとして注目されています。心肥大は虚血性心疾患のみならず心不全などの引き金にもなり、臨床医学的にも重要な課題です。我々は細胞膜表面に発現するカベオリン蛋白の機能に着目しています。細胞膜表面にはカベオラとよばれる膜陥凹構造があることが昔から知られていましたが、近年になって、カベオラの構造蛋白としてのカベオリンが発見され、さらにカベオリンは細胞内信号伝達に関与する数多くの酵素蛋白の抑制分子として作用することがわかってきました。我々はカベオリンの中で最近発見された筋型カベオリン(3型カベオリン)について、糖代謝、細胞増殖、心肥大に関するメカニズムの研究をしています。実験系としては、カベオリンノックアウト動物をはじめ、誘導発現系、あるいはアデノウイルスを用いた遺伝子治療系を開発しています。 さらにがん細胞に代表される異常細胞増殖を制御するための抗がん剤の開発を行っています。従来の抗がん剤は組織特異性が乏しく、そのため様々な副作用が問題となってきました。現在ではがん細胞特有の細胞標的を狙った抗がん治療が開発されていますが、抗がん剤としての効き目は従来のものに及びません。
 そこで従来の抗がん剤の臓器誘導性を高めるために、抗がん剤そのものを磁性化してしまい、磁場によって誘導するシステムが考えられます。我々は独自に開発した第一原理解析による磁性予測技術に基づいて、安全で効率的な抗がん剤の誘導システムを開発しています。

医療制度研究

近年の規制緩和政策要綱を反映して、米国型の医療制度の導入を始め、わが国の医療制度が大きく変わろうとしています。旧来的な保険医療制度のあり方から、より米国的な診療報酬制度が導入されつつあります。循環器病学の治療方法も保険制度や病院の経営方針の違いによって影響を受けつつあります。米国に比べて20年間の時間格差があると言われる日本の医療にとって、21世紀の社会制度に即応した医療制度はどのようなものなのかを探っていきます。