HOME » 教授よりご挨拶

教授 石川義弘
  

エール大学医学部を経て横浜市立大学医学部を昭和59年卒。コロンビア大学、ハーバード大学医学部助教授などを経て平成10年より現職。横浜市立大学大学院医学研究科長を経て医学群長(2018-)を併任。元ラトガース大学医学部教授・病院指導医(循環器内科)。日本生理学会(副理事長)、日本病態生理学会(理事)、日本循環制御学会(理事)など。日本循環器学会、日本心不全学会、日本内分泌学会、日本心血管内分泌代謝学会、日本薬理学会などの評議員・代議員など。第90回日本生理学会大会 、第28回日本病態生理学会大会長。医籍登録(日本および米国ニュージャージー州およびペンシルバニア州)、医学博士。 FACP (米国内科専門医会フェロー ) FACC( 米国心臓病学会フェロー ) FAHA( アメリカ心臓協会フェロー ) FESC( 欧州心臓病学会フェロー ) 、FRSM( 英国王立医学協会フェロー ) など。 日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医。 Pharmacological Reviews ( 副編集長、米国薬理学会誌 ) Cardiovascular Research ( 編集顧問、欧州心臓病学会誌 ) Journal of Physiological Science ( 編集長、日本生理学会誌 ) Scientific Reports (Nature Publishing),Current Signal Transduction Therapy, The Open Medicinal Chemistry Journal, Journal of Bioequivalence & Bioavailability, などの国際学術誌の編集委員。

研究内容:循環制御医学(遺伝子から社会制度まで)  


 Dr. Yoshihiro Ishikawa received his MD from Yokohama City University in 1984 after spending a year at Yale Medical School. He started his research carrier at the Massachusetts General Hospital in 1988. He started his laboratory at Columbia University in 1991, and moved to the Brigham and Women’s Hospital in 1995, where he published multiple papers on the identification and characterization of cardiac adenylyl cyclase, which is also known as type 5 and type 6 adenylyl cyclase isoforms. He also developed the transgenic mouse model that overexpresses Gs in the heart using the myosin heavy chain promoter. This was the first transgenic model using myosin heavy chain promoter that overexpresses a protein in the heart and changed the cardiac function. Dr. Ishikawa has conducted numerous studies in the field of cAMP signal, from the beta-adrenergic receptor to the prostaglandin EP4 receptor. He is also interested in the clinical application of his studies, and developed collaboration with scientists from other research fields, from engineering to physics or chemistry, from pharmaceutical to heavy-industry companies. He worked as Professor of Cell Biology and Medicine and attending physician of cardiology at the Rutgers University New Jersey Medical School until 2011. He is currently the Chair of the Cardiovascular Research Institute of Yokohama City University Graduate School of Medical Sciences. He received the Established Investigator Award from the American Heart Association, and has been appointed as Fellow of American College of Physicians, American College of Cardiology, European College of Cardiology, Japanese Society of Circulation. He has conducted administrative works as Dean for the School, and editorial works for various journals, including Pharmacological Reviews, Cardiovascular Research, Journal of Physiological Sciences, or Scientific Reports, and Congress President for the 90th Annual Scientific Meeting of the Japanese Physiological Society.


主任教授からのご挨拶  ―循環制御医学にようこそ―

 当教室のホームページにご来訪いただきありがとうございます。
 当研究室の設立は1991年のニューヨークにさかのぼります。コロンビア大学で産声を上げた小さな研究室が、ハーバード大学に移り、さらにペンシルバニア州立大学を経て、98年にはラトガース大学に移るとともに、太平洋を渡って横浜市立大学に移りました。ジョンズホプキンス大学医学部で循環制御の世界的研究をされた故佐川喜一教授のご出身である旧第一生理学教室を、循環制御医学教室として改組して今日に至ります。英名はCardiovascular Research Institute (CVRI)ですが、これは欧米の大学にはどこにもある心臓血管研究所です。
 教室のモットーは、循環制御を中心に、しかし限定することなく、「役に立つ研究」を目指しています。医療制度・経営から心不全やがん治療、さらには人工血管や臨床循環器病学まで、幅広い分野を対象とし、新しい研究分野を切り開くとともに、次世代の循環生理研究者を育成することです。

Welcome to our Homepage of the Cardiovascular Research Institute of Yokohama City University. Our Laboratory was established in New York in 1991. It was founded at the College of Physicians and Surgeons of Columbia University, and moved to the Brigham and Women’s Hospital of Harvard Medical School in 1995. It was further moved to Pennsylvania and then to the Rutgers University New Jersey Medical School. It was also established in Yokohama by crossing the Pacific Ocean. In 2004, the Japanese laboratory was officially named as Cardiovascular Research Institute within Yokohama City University School of Medicine.

Our research is in the field of cardiovascular medicine. We also aim to conduct research useful for patients, i.e., the treatment of congestive heart failure, new anti-cancer therapy, re-generation of organs, such as vascular tissues, clinical cardiology or hospital management.

研究の歴史

 本研究室は、90年代にセカンドメッセンジャー研究室として誕生しました。マサチューセッツ総合病院循環器科で始まったG蛋白質の研究が、やがて心臓のアデニル酸シクラーゼの発見へとつながり、コロンビア大学では心臓のcAMPシグナル研究の新しい歴史が始まりました。いまでは心臓型と呼ばれる5および6型のアデニル酸シクラーゼの同定と、その機能調節や病態生理、さらには様々な遺伝子操作動物を用いた一連の研究が初期の研究成果です。特に自律神経がどうして心機能をこれほど強く抑制できるのかが明らかになりました。5型はアデニル酸シクラーゼの中で際立って高い酵素活性を持ち、Gsに強く刺激されるだけでなくGi蛋白に抑制されることから、これが心臓における交感および副交感神経が強く制御できる原因となります。またこの特性が、様々な心疾患の発症に関与することを明らかにしてきました。
 臨床現場の疑問に対して、基礎研究でメカニズムを解明することを課題としています。心不全では交感神経の異常亢進がおこり、その抑制が心不全の予後改善に有効であることが多数の臨床試験で証明されました。ところが基礎実験によるメカニズムの解明はなされていませんでした。我々は90年代に初めてミオシン重鎖プロモーターを用いて心臓特異的にGs蛋白を過大発現させ、心筋における交感神経活動の亢進は初期には心機能改善をもたらすが、長期に及ぶと心不全を引き起こすことを証明しました。これが現在の心不全におけるβ遮断剤の作用メカニズムとなります。
 これら一連の心臓における交感神経の制御メカニズムは、優秀な研究スタッフの努力の結晶により150編以上の論文として発表されています。多くの研究者が参加し、日本はもちろん、欧州のドイツやフランス、さらには中国や中東など、様々な国のスタッフが参加してまいりました。

 日本ではcAMPシグナルからプロスタグランジン研究が始まりました。プロスタグランジンは炎症物質で、多数の受容体を持ちます。その一つであるEP4はcAMPシグナルを惹起することが知られています。このEP4は炎症シグナルとして作用するだけでなく、血管の平滑筋の遊走や弾性線維の生合成など、心臓血管領域でも重要な役割を果たすことが分かりました。いわゆる胎児の動脈管の生理的閉塞に主要な働きをするだけでなく、成人においても大動脈瘤の発症などで大切な役割をはたします。このような疾患の理解が、新しい治療法の開発につながることを目標としています。炎症シグナルを展開して、動脈硬化の早期診断や、大動脈疾患の治療法の開発を行います。

学際連携

 当教室の特徴は、理工連携と産学連携といったオープンアクセス型の研究スタイルです。医学部の連携先は製薬企業がほとんどですが、当教室では重工業や家電メーカー、さらには空調装置など、医学系との接点の少ない会社と盛んに共同研究を進めております。新しい学際的な連携から、画期的な発見が生まれるとの信条からです。
 重工業の磁性解析技術を用いて、抗がん剤の開発を行い、空調会社と連携して加圧培養装置を作成するなど、様々な成果をあげてきました。学際的にも工学や化学、さらには物理の先生方との共同研究が続いております。工学部との連携では、これまでにない発想を持つ細胞培養システム(立体培養システムや周期加圧培養システム)が開発され、弾性を有する人工血管合成として結実しました。
 アイデアを提案することも、いただくこともありますので、研究に興味を持たれた企業の方はぜひご相談ください。当教室のスタッフによる産学連携、学際研究から、新しい発想と研究成果が次々を出ております。我が国の研究資源を活用するためにも、医工連携をはじめとした異分野共同研究は、これからの我が国の研究方法の大切なモデルとなると考えます。

 当教室で進める研究は、基礎研究だけでなく、臨床諸部門との共同で臨床試験を行い、さらには医療制度の研究にも及びます。諸外国、とくにアメリカの医療制度をどのように我が国にあった形で取り入れていくかの検討も行います。私は10年以上に渡ってアメリカの大学病院で慈善医療を担当し、高齢者や経済的困窮者の方々を診察させていただきました。我が国では世界でも例を見ない速度で高齢化が進み、医療費が高騰することが危惧されます。それを世界でも例をみない皆保険制度で賄おうとしています。若干の制度疲労を起こしていますが、どのような形で後世に負担をかけないように、我が国の皆保険制度を改善していくのかは、皆で知恵を絞って考えなければならない重要項目と考えています。
   

医学教育の歴史

 教育熱心なスタッフの努力で、医学教育の在り方についても検討を続けます。90年代後半には、当時はまだ我が国では珍しかった「学生による講義評価制度」を採り入れて教員評価を行いました。また、今日では広く行われている試験問題のプールや、試験問題の質の検討制度を導入しました。これは統計的な手法により、個別の試験問題の良し悪しを評価していく手法であり、現在ではCBTや国家試験に導入されている手法のプロトタイプです。講義の方法についても、それまでの各人の経験則に基づく教授法ではなく、科学的エビデンスに基づいた教育方法を導入してまいりました。また昨今では米国式の医学教育が導入されていますが、90年代末から英語による講義(英語による質疑応答、英語の資料、さらにUSMLE試験の導入)を導入しています。

 医学部学生の教育と同様に、大学院生の教育においても、世界共通言語である英語を用いて、学生のプレゼン練習を行います。我が国の学生(学部生、大学院生を問わず)に必要なのは、自分の考えを相手にわかりやすく伝える技術です。これは必ずしも英語力と同一ではありませんが、英語を用いての国際学会での発表や外国の病院での症例検討を目標に、練習を続けます。我が国の教育にかけているのが自分の考えを相手に理解してもらう技術です。日本人の学生の潜在的能力は極めて高く、はじめのうちは恥ずかしさもあるのですが、続けるうちに見違えるように上達します。英語によるプレゼンは、「習うより慣れろ」のが大切ですね。

国際協調の在り方のために

 留学経験を持つスタッフと海外留学生が多いことから、国際共同研究の在り方を検討します。医学研究の成果はサイエンスですから世界中どこでも同じです。しかし、研究の進め方は、文化風習ですから異なります。動物実験計画から科研費の申請も、日本とNIHは大きく異なります。研究成果の評価方法や、さらには研究費の運用形態も異なります。大学における教授会の在り方はもちろん、人事の進め方や審議、さらには、研究者の評価方法も、日米では大きな違いがあります。これは、どちらが良いという問題ではなく、国の持つ文化と歴史の違いと考えます。

 TPPをはじめ、世界の国々が共通ルールで動こうとしていますが、共通ルールの背景となるそれぞれの特性を熟知しながら、お互いの良さを上手に取り入れていく姿勢が大切と考えます。わかりやすい例が、アメリカの寿司です。30年前は生魚などとても食べられなかったアメリカ人に、アボガド寿司が導入されました。今で言うカリフォルニアロールです。アボガドは食感がトロに似ています。アボガド寿司になれてくると、不思議なことにトロなど生魚のすしも食べられるようになったわけです。

 循環制御医学では、大学院生を諸外国から迎えています。中国や韓国はもちろん、ドイツ、アメリカ、バングラデイッシュ、ネパールやロシアなど、様々な国からの研究者を迎えてきました。日本の医学研究を学んでいただくだけでなく、社会や文化も理解していただき、お互いを理解することで将来の世界協調の架け橋になっていただければと願っています。

明日の日本の医学のために

 明日の日本の医療を担う医学生を育てるのはもちろんですが、医学生を育てる教育者の育成も大事な任務と当教室は考えます。医学教育は、医学知識の伝授だけでなく、ものの考え方、医学研究の進め方や、医療の在り方、さらには患者さんへの上手な説明を考えることができるようになることが目標です。

 最後に、将来の日本と世界を担っていただく大学院生には、英語のプレゼン力をしっかりとつけていただきます。教員一同の熱心な指導により、修士・博士ともに二年目の終わりには、学会で英語発表していただきます。博士は4年次終了までに、国際学会での発表と英文一流紙への掲載を義務としています。

大学院生・共同研究者募集
これを読んで興味をもたれた学生さんは、一度遊びにきませんか。いつでもご連絡をおまちしております。