病態病理学教室が目指すもの
病理学は形態学を基盤にして最新の手法を用いながら病気の病因、病態(病気の成り立ち)を明らかにしていく研究分野、基礎医学としての側面と、形態学的手法等を用いて患者様から採取された組織、細胞検体から病気の確定診断を行う臨床医学としての側面から成り立っています。後者は診断病理学、外科病理学とも呼ばれ、近年臨床における重要性がますます高まっています。我々の教室では両者がバランスよく発展することが病理学にとって重要と考えています。
我々病態病理学教室の使命として、①リサーチマインドと科学的思考力をもった診断病理医の育成、②臨床、病理診断に基づき着想され、臨床、病理診断に結果が還元できる高いレベルの研究を進めていける研究者の育成、の両方を考えています。
病態病理学教室の研究テーマ
「がんの発生・進行のメカニズムの分子病理学的解析、間質性肺炎の臨床病理学的特性解析、また、分子病理を基盤とした新しい病理診断学の構築」
病態病理学教室では、形態学、診断病理学を基盤としながら、がんの発生、進展の機序、分子基盤を明らかにし、その成果を臨床、病理診断に応用するために研究を行っています。
① 肺腺癌の発癌、進展機序についての研究:肺癌は日本における癌死亡者の第一位を占めており、その中でも肺腺癌は、日本においても欧米においても増加の一途をたどっています。近年、EGFR、ALK、RETなどの発癌における遺伝子異常が徐々に明らかになっています。現在本研究室では、肺腺癌の発生、進展における分子メカニズムを明らかにするため、培養細胞、手術材料など臨床検体を用いた分子病理的手法により検討し、その成果を新しい病理診断に応用したいと考えています。
② 肺癌の特徴的な細胞像・組織像に影響を与える分子基盤についての研究:分子生物学的手法、細胞培養実験により解析しています。
③ 消化管癌の進展、特に初期浸潤段階における分子異常についての研究:肺癌研究で培われた技術を応用して日本人に多い消化管癌(胃癌、大腸癌、食道癌)の研究も進め、初期浸潤、転移のリスクに関連した分子異常を明らかにし、臨床、病理診断への還元を目指しています。
④ 間質性肺炎の成り立ちに関する研究:難病である特発性間質性肺炎の病理組織学的特性解析から、その原因解明や新しい治療法の確立を目指しています。