さよならまでの読書会-本を愛した母が遺した「最後の言葉」
ウィル・シュワルビ/著 高橋知子/訳
早川書房
73歳になるメアリー・アンは、末期のすい臓がん患者です。
知的で、仕事と家庭に細やかな気配りをし、人生を確固とした信念に基づいて生きる母親は、まさに家族の要、と息子ウィルは思っていました。
がん告知後も、冷静にやるべき仕事を考え、医師と話をして、行動の負担とならないような最善の治療法を選択し、化学療法を受ける母。
一方で、母の病気という事実に動揺し、残された時間の間に、母に何をすればいいか戸惑う息子ウィル。
やがて二人は、母が化学療法の点滴を受ける数時間を使って、読んだ本について話し合う「読書会」を持つようになります。
参加者はたった二人。
同じ本について語ることもあるし、そうでない時もある。
二人は、このゆるやかな読書会で、本を仲立ちに、相手を気遣うあまりに口に出せなかった不安も、きちんと話しておきたい問題も、さりげなく話し合い、理解を深めていきます。
共に読み、語った本は、いつでもその人を身近に感じさせてくれるのだなと思います。
興味のある方はぜひ手に取ってみてください。
プレゼンター:井元 有里(逗子市立図書館 司書)