私は情報系がバックグラウンドで、大学院から医歯学総合研究科に進み、疫学や統計に関する勉強をしていました。以来、医療・福祉政策やヘルスサービスリサーチを研究テーマとしています。振り返ると、修士の頃は、世の中に“大規模医療データ”という単語は浸透しておらず、政府統計の個票データの分析をしていましたね。時を同じくしてDPC制度が発足し、日本でも診療に関するデータの利活用がはじまったことから、その流れに乗ってデータベース(DB)研究をはじめ、今に至っています。研究は、量的な分析に加えて、諸外国の医療制度に関する研究や、医療政策に関する質的研究も行っています。ここ数年は、統計学に加えて機械学習など新たな手法へのチャレンジをしています。その他の活動として、データの利活用に資するオープンサイエンスの推進、統計学の研究会などを行っています。前職では研究所に勤務し、製薬企業・医薬品卸や行政、シンクタンクなど、大学にいるとご一緒する機会があまりない方々と机を並べてお仕事させて頂き、病院や診療所だけではない様々な医療の世界に触れました。医療は、サイエンスが背景にありつつも、現実世界では必ずしもゼロイチでわけられない曖昧な領域を含んでおり、その国特有のものの考え方が反映されている非常に面白い分野だと感じています。医療業界も、近い未来には他の分野の企業や人が参入する新たな時代が来るのではないでしょうか。医療のあり方を記述し、世の中を俯瞰して見るような研究も好きですが、そういった時代の変化を捉える分析も行っていきたいと考えています。