はじめに

 免疫学教室では免疫細胞(とくにミエロイド系)の分化・応答の分子機構、がん(固形癌や白血病)、そして自己免疫疾患(SLEなど)について、転写因子やクロマチン制御による遺伝子発現調節の観点で研究しています。様々な遺伝子改変マウスや患者さんの検体を対象に、最先端の技術(次世代シーケンサーを用いた全ゲノム免疫沈降シーケンス[ChIP-seq]・シングルセルRNA-seq・ATAC-seq・Hi-C、FACS、質量分析、機械学習、バイオインフォマティクスなど)で解析します。ひいては免疫系を超えた細胞分化・応答の「基本原理」の理解にも繋げて行きたいと思っています。そして得られた成果に基づいて、がんや自己免疫疾患に対する革新的な治療法を産学連携で開発しています。また私たちは本学先端医科学研究センターにおいて、文部科学省認定の「マルチオミックスによる遺伝子発現制御の先端医学共同研究拠点」の中核を担っています。

  大学院生を募集しています。研究は実際に行なう前にその価値の半分は決まっているとも言えます。私たちの教室では、知識や手技の取得はもちろんですが、何よりも「なぜ」私たちがその研究を行なう(べきな)のか、を理解・実感できる指導を目指します。そして、興味深い最初の実験結果が得られてからも、そこから格調の高い優れた論文を書き上げるまでのプロセスがいかにきびしくしかしexcitingなものであるかをまず学んでもらった上で、博士課程では自分自身で「意味のある問い」を持ち自らプロジェクトをdriveする事を目標にしてもらいたいと考えています。

  生命現象の分子機構の答えは私たちの身体そのものに内在している訳ですから、基本的には生命科学は「Creation・創造」というより「Study・学ぶ」という側面が強いとも言え、そのような謙虚さを持つ事は重要だと思います。しかし、同じ実験結果を得ても、そこからどんな情報を抽出して次の実験に繋げ最終的にどのような新しい概念を提案できるのか、には研究者の能力や個性が強く反映しまさに千差万別であり、そこに基礎研究の醍醐味があります。また疾患の「制御法」開発に繋げるためにも、むしろ「創造」的な能力が求められるのだという事も強調したいと思います。

  医学部以外を卒業した方も大歓迎です。ただし、修士課程から始められる場合は、できれば引き続き博士課程を含め計6年間の一貫教育を目指しています。また最近、研修医・専門医制度の変化等に伴ってMD研究者が急激に減少しており、臨床と基礎研究の解離が大きく懸念されます。研修を終えて臨床医としての基礎を培った上で、「無から有を生む」基礎研究に、4年間だけでも身を投じ世界を相手にした高いレベルの研究をしてみたい方からの応募も、大いに待っています。博士修了後に海外留学を希望する場合は積極的に留学先の紹介も致します。研究室見学は常に歓迎致します。

2019年4月
田村 智彦

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