新着情報

水原敬洋先生『最優秀演題』に決定(日本麻酔科学会第63回学術集会)

神奈川県立こども医療センター 水原敬洋先生の発表が、日本麻酔科学会第63回学術集会での【最優秀演題】に決まりました。

タイトル:複数の小児用声門上器具の臨床性能比較:ベイズ解析を利用したネットワークメタ解析

日本麻酔科学会最優秀演題

 

水原敬洋先生の【受賞コメント】をご覧下さい。

 

このたび我々の研究成果が日本麻酔科学会第63回学術集会において最優秀演題に選出されました.大変嬉しく感じるとともに,今後ももっと頑張っていかなくてはならないと気を引き締める機会になりました.研究は多くの人達の協力をいただいて行う合作です.我々の研究に直接または間接的に協力してくれた多くの先輩,同僚,後輩たちに感謝いたします.

 

最優秀演題に選出された研究は,ネットワークメタ解析の手法を用いて複数の小児用声門上器具の臨床性能を比較するというものです.ラリンジアルマスクに代表される声門上器具には沢山の種類があります.この沢山ある声門上器具のうちどの器具の性能が最も優れているのか?という臨床現場で感じた私の疑問がきっかけとなってこの研究はスタートしました.昔と違って現在では小児用として使用できる声門上器具の種類は多くなり,私の働く小児病院の臨床現場でも多用されております.また,小児用声門上器具同士のランダム化比較試験(RCT)は数多く行われており,研究の盛んな分野でもあります.そこでどの声門上器具が最も優れているかに関して調べ始めましたが,すぐに壁にぶつかりました.声門上器具の種類が多すぎるため,全ての器具を同時比較するようなRCTは行われておらず,その為どの器具の性能が最も優れているかに関して結論が得られない状況だったのです.この問題に正面から取り組もうと考え,そしてたどり着いた方法が“ネットワークメタ解析”でした.この方法は,類似した器具や薬剤が複数存在するような状況で威力を発揮する解析の方法の1つです.我々はこの手法を核として研究を行うことにしました.かなりの期間を要しましたが,最終的には小児用声門上器具を対象とした全てのRCTを同定し,そこから13種類の声門上器具のネットワークを作り,全ての器具同士の臨床性能を同時に比較することに成功しました.

 

実は優秀演題候補の中には我々の研究よりも規模が大きく,方法も洗練された研究がいくつかありました.その中で我々の研究が最優秀に選出されたのは,現状困っている問題に対して新しい手法を用いて解決していこうという我々の姿勢に対して学会審査員の方々の賛同が得られた結果であると考えています.この結果に満足せずに,今後もさらに臨床に役に立つ研究,面白い研究を目指して精進していこうと思います.本研究の方法や結果の詳細は英文論文として現在投稿中です.受理の際には本ホームページ内の研究業績一覧に並ぶことと思いますので,研究の詳細に興味のある方はそちらを参照していただければ幸いです.

 

神奈川県立こども医療センター 水原敬洋