アフリカツメガエルを材料として中胚葉と神経の分化の研究を行っており、特にT-ボックス転写因子に注目しています。この転写因子はアクチビン、FGFやBMPといった中胚葉誘導因子により中胚葉誘導がおこると、すぐに発現して細胞分化の引き金をひくマスター制御遺伝子です。
Tbx6 は正中線では発現せず、正中線から少し脇にそれた部位にあたる沿軸中胚葉および側板中胚様で強く発現しています。単独で胞胚中期の予定外胚葉(アニマルキャップ)に発現させるだけで側板中胚葉様の細胞分化をひき起こします。また脊索の分泌する背側化因子nogginと同時に発現させると筋肉を分化させます。
上の写真はアフリカツメガエルの尾芽胚で、左は切片で濃い青がTbx6の発現部位です。体節と側板中胚葉が染まっています。右はホールマウントの two color in situ ハイブリダイゼーションで、淡い青(シアン色)がTbx6の発現部位です。濃紺の部位(体節)はTbx6と関連の深い別の転写因子であるTbx6rの発現領域です。カエルではこの2つのTbx6パラログが沿軸中胚葉の分化制御を行っています。
Tbx6の働きを阻害するノックダウン実験を行うと、筋節(体節)の骨格筋が減少し、節の境目がまったく判別できなくなります。さらに腹側体壁筋は全くといってよいほど分化しなくなります。
この写真はノックダウンした胚をさらに育てたもので、*の印のついた側が蛍光トレーサーを注射した側では頭部の縮小と、軟骨分化が著しく阻害されています。以上まとめると、tbx6の機能阻害によって体節の分節形成不全、体節からの骨格筋分化が阻害、頭部神経堤からの軟骨形成が阻害されます。
現在、CRISPR/Cas9によるノックアウトを行い、それぞれのTbx6パラログの遺伝子機能が欠けたときのさらなる形質の解析を行っています。
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