横浜市立大学眼科先進医療学講座

研究内容

サルコイドーシス

サルコイドーシスは全身のほぼすべての臓器に肉芽腫をつくり、慢性に経過する疾患です。肺門縦隔リンパ節、肺、眼、皮膚の罹患頻度が高いですが(図1)、神経、筋、心臓、肝臓、腎臓、骨、消化器などにもみられます。病理組織学的には、乾酪性壊死のない類上皮肉芽腫(非乾酪性類上皮肉芽腫)(図2)が認められます。肉芽腫の形成される臓器や部位により臓器特異的な、または非特異的な症状を呈します。肉芽腫は自然に消失することもありますし、線維化する場合もあり、このために、自然寛解するものから慢性化するものまで臨床経過には幅があります。日本人では非常に稀ですが、自然寛解傾向の強いサルコイドーシスとして「Löfgren症候群」があります。

サルコイドーシスは世界中でみられますが、罹患臓器、頻度や病態において人種差や地域差があり、それらは遺伝的な要因や環境因子の違いによるものと考えられています。日本人は欧米人と比較し、サルコイドーシスの有病率、罹患率ともに低く、重症になりにくいといわれています。日本人では眼病変(ぶどう膜炎)と心臓病変の頻度が欧米人より多いのが特徴です。また、サルコイドーシスの家族歴のある割合(姉妹(兄弟)例、親子例など)は日本人では1.8%と報告されています。

  • a. 両側肺門リンパ節腫脹
  • b. ぶどう膜炎(結節性網膜静脈周囲炎)
  • c. 皮膚病変(局面型)

図1 サルコイドーシスの臨床所見

図2 サルコイドーシスの病理組織所見(皮膚病変:非乾酪性類上皮肉芽腫)

サルコイドーシスの原因は未だ不明ですが、疾患感受性のある個体において、病因となる抗原により Th1 型細胞免疫反応(IV型アレルギー)がおこり、全身諸臓器に肉芽腫が形成されると考えられています。原因抗原に対するアレルギー反応が継続している間は疾患の活動性も継続し、慢性の経過をとると考えられています。

私たちはサルコイドーシスの発症メカニズムを明らかにすることを目的に遺伝要因の研究を進めています。これまでに日本全国の協力施設から日本人のサルコイドーシス患者さんと健康な方に協力して頂き、全ゲノムワイドの遺伝子多型を調べ、病気になりやすい遺伝子(感受性遺伝子)を検索しているところです。さらに、アメリカの国立衛生研究所やチェコのパラツキー大学と協力して、人種間で共通の感受性遺伝子、または人種特異的な感受性遺伝子の同定を目指しています。

また、サルコイドーシスの家系についてエクソーム解析等を駆使して疾患責任遺伝子の同定も試みています。

サルコイドーシスの治療の基本は副腎皮質ステロイド薬であり、疾患特異的な治療薬は未だありません。本症はステロイド治療に反応し、比較的予後の良い疾患ではありますが、治療抵抗性であったり、副作用により継続できない症例も少なくありません。そこで、サルコイドーシス患者さんの生体内分子を網羅的かつ包括的に調べるオミックス解析を用いて、疾患発症を導く要因を解明することと、患者さんに適した的確医療の実現を模索しています。

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