横浜市立大学眼科先進医療学講座

研究内容

ベーチェット病

ベーチェット病研究

私たちのグループでは主にベーチェット病の原因となる遺伝子の研究を行っています。

ベーチェット病は全身に繰り返し炎症発作を引き起こす病気であり、難治性の口内炎、眼の炎症(ぶどう膜炎)、皮膚の病変、陰部潰瘍の4つを主症状とします(図1)。その他にも、神経や腸管、血管、関節などにも炎症を引き起こします。日本にはおよそ20,000人の患者さんがおり、世界でもベーチェット病の有病率が多い国として知られています。

ベーチェット病の主症状

図1 ベーチェット病の主症状

a. 口腔内アフタ、b. ぶどう膜炎、c. 皮膚結節

ベーチェット病の原因はまだ分かっておりませんが、遺伝的な要因と環境要因が合わさって発症すると考えられています。私たちのグループはベーチェット病の発症メカニズムを明らかにすることを目的に遺伝要因の研究を進めています。

これまでに全国の協力施設から日本人のベーチェット病患者さんと健康な方に協力して頂き、全ゲノムワイドの遺伝子多型を調べ、病気になりやすい遺伝子(感受性遺伝子)を明らかにしてきました。また、国内だけに留まらず、アメリカの国立衛生研究所やトルコのイスタンブール大学、イランのテヘラン大学、韓国ベーチェット病学会と協力してベーチェット病発症に関わる遺伝子の追及をしております。これらの研究を通してベーチェット病の発症に関係する遺伝子を海外でも有数の科学誌に数多く報告してきました(図2)。現在は、免疫に関連する遺伝子領域の高密度な遺伝子タイピングを可能とするマイクロアレイを用いて更なる遺伝要因の解明を目指しています。

近年の治療薬の進歩によりベーチェット病患者さんの予後は各段に良くなりました。しかしながら、治療薬に不応であったり、副作用により継続が難しくなってしまう症例も中にはあります。私たちがベーチェット病の病態を明らかにすることで、その感受性遺伝子をターゲットにした新たな製剤の開発に繋がることが期待されます。その先には、患者さん一人一人の遺伝要因を考慮し、精密・正確な診断に基づいた効率良い安全な治療と疾患予防を心がけた的確医療(precision medicine)の実現を目指しております。

遺伝学的知見に基づくベーチェット病の病態

図2 遺伝学的知見に基づくベーチェット病の病態

ベーチェット病の感受性遺伝子を枠内に記した。我々のグループが同定したものについては黄色で表示した。

ベーチェット病遺伝子研究の成果

図3 ベーチェット病遺伝子研究の成果

関連リンク:日本ベーチェット病学会

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