横浜市立大学眼科先進医療学講座

研究内容

遺伝子改変マウスを用いた
機能解析

眼疾患による視機能の低下・消失は、生活の質を著しく低下させます。眼疾患の中には、遺伝要因が大きく影響する疾患があります。遺伝要因として多数の疾患感受性遺伝子が関わっていると考えられますが、その遺伝子の疾患発症に関わるメカニズムが、ほとんど解明されておりません。我々は、逆遺伝学と呼ばれる方法を用いて機能の解明を行っています。研究に用いているマウスを例に挙げると、解析対象の内在性遺伝子を編集(ゲノム編集 Gene editing)して得られた遺伝子改変マウスと他系統マウス(例えば、遺伝子改変していないwild type)との表現型を比較解析することで、解析対象遺伝子の『未知』の機能を明らかにすることが期待できます。

特定の遺伝子の機能を解明するうえで重要となるのが、解明したい遺伝子を特異的に編集した遺伝子改変動物を用いて、解析することです。そのため、私たちはゲノム編集にCRISPR/Cas9システムを採用しています。CRISPR/Cas9システムは、gRNAの末端配列(図 ピンク部)が編集対象遺伝子の標的配列にCas9タンパク質を誘導することで、標的配列特異的なゲノム編集を可能にしています。そして、Cas9タンパク質内のDNA切断ドメインによって、標的配列でのDNAの二本鎖切断が誘導されます。二本鎖切断は修復機能によって修復されますが、その過程で非相同末端結合または相同組み換えが生じ、遺伝子改変が起こります。

CRISPR/Cas9システムによる非相同組み換え

CRISPR/Cas9システムによる非相同組み換え

私たちは、種々の眼疾患の感受性遺伝子または原因遺伝子を対象に、CRISPR/Cas9システムを用いた非相同末端結合により生じる塩基の欠損によるノックアウトマウスの作製を行い、各眼疾患の表現型を呈するモデルマウスの構築を目指しています。また、緑内障感受性遺伝子のノックアウトマウスを作製する過程で、緑内障とは異なる表現型(知的障害の傾向、歩行異常、角膜の白濁、無眼など)を示す個体も発生し、これら系統の多角的な解析も進めています。


左:歩行障害のノックアウトマウス(頭部を右側に傾け歩行する)
右:Wild type コントロール

さらに、ゲノム編集に必要なマイクロインジェクション等の設備のある私たちの研究室では、実験動物の操作及びゲノム編集の経験豊富な研究員のサポートにより、その他の遺伝子改変マウスの確立を並行して進めています。また、このような研究環境下で、ゲノム編集に関心を持つ他科の先生方が眼疾患以外の疾患感受性遺伝子の機能解明も進めています。

このページのトップへ戻る