私は2004年に横浜市立大学医学部を卒業後、横浜市立大学附属病院、藤沢市民病院、国際医療研究センター病院で内科・糖尿病内分泌の臨床の研修を行いました。臨床研修を通して、「医学的エビデンスとは何か」という疑問を持つようになり、疫学研究者としての道を目指すことになり、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公衆衛生大学院に留学し、2012年6月に疫学博士課程を修了しました。疫学は、疾病や健康に関する事象の頻度や分布を調査して、その要因や因果関係の解明をめざす学問です。これまで糖尿病、循環器疾患、がんなどの慢性疾患の疫学研究に携わってきました。2016年から2020年の国立がん研究センター在任時に秋田県横手地域のコホート研究の実施・運営の経験もさせていただきました。2020年4月に横浜市立大学に着任後は、新型コロナウィルス感染症の観察研究を開始しています。近年、医療ビックデータや人工知能(AI)技術の活用が着目されていますが、“Garbage in, Garbage out” という言葉が示すように、データの質が悪ければ、いかに分析に工夫を凝らしても研究成果の信頼性は失われてしまいます。一方、大規模なサンプルでなくても、データの質を高めることができれば、正しい結論を得る手助けとなると考えられます。今後、地道に精度の高い「スモールデータ」の収集も行って、質の高い医学的エビデンスの発信を目指していきたいと考えています。