担当

堀 聡(助教),坂田 勝巳(准教授,部長,日本脳卒中学会専門医)

手術実績

・脳血管内手術を約15年前から導入しており,経験数は豊富です.
・“切る手術”と“切らない手術”の利点欠点を踏まえ,より良い治療ができるようにしています.
・急患診療に対して高度救命救急センターとの協力体制で診療にあたっています.

くも膜下出血をきたす脳動脈瘤,脳梗塞の原因となる脳や頚部血管の狭窄,その他,脳動静脈奇形,硬膜動静脈瘻,などの“脳血管障害”ではときに手術が必要となります.手術は,いわゆる“切る手術”が従来から行われてきましたが,“切らない手術”である脳血管内手術が平成2年末より徐々に行われるようになってきました.当院では横浜市では比較的早い平成14年より導入しております.

緊急で手術が必要となるくも膜下出血や脳出血などの疾患に対しては,救命救急センターと協力し,24時間救急体制にて診療にあたっております.特にくも膜下出血に対しては,脳血管内手術の有効性が示されてからはこれを第一選択としております.脳梗塞超急性期のカテーテルによる血栓除去術については,神経内科と協力のもと,診療にあたっております.

近年は脳ドックなどにより,まだ症状を呈していない未破裂脳動脈瘤や無症候性頚部内頚動脈狭窄も多くなっております.一人一人の患者さんに対して,“切る手術”と“切らない手術”のそれぞれの良い面と悪い面をご説明し,患者さんのニーズもとに治療方針を考える姿勢をとっております.当然,手術をすべきではない場合には手術はお勧めしません.また,治療方針は,他の脳神経外科スタッフ内で議論しています.当院の特徴としては,当然,病気を根治することは目指しますが,手術合併症によりいままでと同じような生活できなくなってしまうようなことを避けることを最大目標としていることです.

まれな疾患で治療も困難である“硬膜動静脈瘻”に対しては,脳血管内手術が第一選択となりやすいため,以前より力を入れて取り組んできました.脳動静脈奇形の手術で摘出術を行う際には,脳血管内手術を併用すべきものがありますが,そういった場合でも万全の態勢をとっています.

“切る手術”について

当院の特徴は,無理をせずできるだけ機能温存を心がけていることです.特に未破裂脳動脈瘤に対する手術においては,手術用顕微鏡を用いて愛護的に操作し,静脈をはじめとした周辺の構造物を温存するよう努力しています.

“切らない手術” = 脳血管内手術について

脳血管内手術は,“切らない治療”として過剰にもてはやされているきらいがあります.脳血管内手術は確かに患者さんに負担がかからない治療法ですが,その利点を生かすも殺すも,高い技術水準が要求されます.日本脳神経血管内治療学会は,厳密な審査を行い,専門医を認定しており約1,100名に達しております.また,そのうち,約250名が指導医として認定されております.当院では,脳血管内手術に最適な血管撮影装置を以前より導入し,指導医が手術にあたっています.

手術件数

平成26年 平成27年
直達 血管内 直達 血管内
脳動脈瘤(くも膜下出血) 4 12 7 14
脳動脈瘤(未破裂) 13 38 10 37
脳内出血 8 9
頚部頚動脈狭窄 0 15 0 18
バイパス術 1 2
脳動静脈奇形 2 2 3 5
硬膜動静脈瘻 1 8 0 12
脳梗塞再開通療法 4 4
その他 0 7 0 6
29 86 21 96

手術治療例

手術をお受けになった患者様のご好意によります.個人情報保護のため年齢,性別は呈示いたしません.

未破裂脳動脈瘤(開頭クリッピング術)

図1:前交通動脈(開頭クリッピング術)
脳ドックにて前交通動脈瘤と診断され,当科外来受診.治療に関する相談の結果,手術を希望され,開頭クリッピング術施行.術後明らかな神経症候なく,10日で退院されました.

未破裂脳動脈瘤(血管内コイル塞栓術)

図2:前交通動脈瘤(血管内コイル塞栓術)
頭痛を主訴に近医にてMRAを施行したところ,前交通動脈瘤と診断され,血管内治療を希望されコイル塞栓術を施行.術後明らかな神経症候なく5日で退院されました.

頚部内頚動脈狭窄症(内頚動脈内膜剥離術)

図3:左内頚動脈狭窄症(内膜剥離術)
小発作(不全片麻痺)にて発症.精査の結果,内頚動脈高度狭窄を認め,内膜剥離術 (CEA) を施行.術後,新たな神経欠落を認めず,12日目に退院されました.

頚部内頚動脈狭窄症(血管内ステント留置術)

図4:頚部内頚動脈狭窄症(血管内ステント留置術
一過性脳虚血発作にて発症.精査の結果,内頚動脈高度狭窄を認め,血管内ステント留置術 (CAS) を施行.術後,新たな神経欠落を認めず,5日目に退院されました.

関連業績

  • 坂田勝巳:側頭葉の静脈系.脳動脈瘤の手術.三宅悦夫編.金芳堂,1999,p114-122
  • 坂田勝巳 他:未破裂脳動脈瘤患者における心理調査.第30回 日本脳卒中学会(盛岡).2005年4月
  • 坂田勝巳 他:静脈温存に基づく非侵襲的Pterional approach:静脈解剖と手術手技.Video Journal of Japan Neurosurgery 13(2),2005
  • 坂田勝巳 他:脳静脈還流障害を回避する手術戦略.第37回 日本脳卒中の外科学会(シンポジウム)(京都).2008年3月
  • 坂田勝巳 他:脳卒中治療ガイドライン2009:高血圧以外の原因による脳出血の治療(担当).p159-179
  • 坂田勝巳 他:脳静脈還流障害を回避する手術戦略.脳卒中の外科 38:12-17,2010
  • 間中浩,坂田勝巳 他:コイル塞栓術後に血栓化巨大脳動脈瘤となった脳底動脈先端部脳動脈瘤の1例.脳卒中の外科 42(5)372-376,2014

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