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当研究室の実験プロジェクトには以下のものがあります

2020年8月現在

cAMP信号伝達研究

細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPシグナルを中心に研究しています。
細胞膜表面の受容体からの刺激は蛋白質に伝わり、刺激性あるいは抑制性蛋白質の活性化は、細胞内cAMP産生酵素であるアデニル酸シクラーゼの活性化を引き起こします。cAMPシグナルは心筋細胞のカルシウムシグナルや収縮蛋白の調節に重要な役割を果たします。アデニル酸シクラーゼには9つのサブタイプがあり、心臓には5および6型(あるいは心臓型)とよばれるサブタイプが発現します。これらのサブタイプは石川らのグループが世界に先駆けて発見したものです。
教室では、これらのサブタイプを欠損あるいは過大発現した動物モデルを作成し、個体レベルでの変化を研究しています。従来受容体のレベルで制御を受けると考えられていた自律神経調節が、実は効果酵素のサブタイプのレベルにおいても強い制御をうけるなど、次々と新しい事実がわかってきました。また、これらの酵素を標的とした新薬開発も行っています。世界中で販売されているバイアグラはcAMPを分解する酵素の調節薬ですが、われわれはcAMP産生酵素調節薬にも同様の薬剤としての開発の可能性を見出しています。

物理刺激による新しいがん治療法の開発

磁性有機化合物を用いたがん治療法についての研究を行っていく過程で、偶然、ある特定の物理刺激が抗腫瘍効果をもつということを発見しました。我々はその物理刺激がもつ抗腫瘍効果のメカニズムについて検討を行っています。その物理刺激は正常細胞には効果がなく、がん細胞にのみ抗腫瘍効果を持つことが分かっており、がん特有の代謝システムや膜タンパクとの関連について研究を進めています。同時に、物理刺激を発するがん治療医療機器の開発を行っており、企業との医工連携研究も進んでいます。将来的に、物理刺激のみでがんを治療する新たながん治療のスタンダードを作り出そうとしています。

腹部大動脈瘤バイオマーカー研究
(大動脈瘤及び動脈硬化症を含む血管疾患の早期発見のためのバイオマーカーの開発)

腹部大動脈瘤は、動脈硬化のある高齢者に発生します。無症状に進行し、ほとんどが画像検査で偶然発見されますが、破裂時には手遅れとなることが多いので、早期発見、早期治療のために低侵襲で簡便な診断方法が必要です。現在、ミオシン重鎖11という動脈平滑筋に特異的なタンパクが、腹部大動脈瘤の病勢を反映するバイオマーカーになりうることがわかっています。
本研究では、ミオシン重鎖11に対する抗体から作製された新しい試薬を使用し、腹部大動脈瘤の診断に有用かどうか、腹部大動脈瘤患者と健常者の血液を用いて評価します。また、腹部大動脈瘤バイオマーカーの簡易測定キットを作製し、臨床使用を目指します。

がん治療におけるキーシグナルの探求

日進月歩で医療が進歩する現代においても、依然としてがん治療は発展が望まれます。我々は、がんが進展する過程において重要な役割を果たすキーシグナルについて研究を行い、がん治療における新たな治療ターゲットを見つけ出そうとしています。
PGE2は発熱,痛み,炎症の重要なメディエーターであり,様々ながんの増殖や細胞遊走・転移に関与するといわれています。PGE2はEP1~4の4つの受容体をもち,中でも一部のがんではEP4がPGE2の細胞遊走や転移調節において重要な役割を担っていると考えられています。我々は、口腔がんを中心に、EP4とがん細胞の遊走や転移との関連を検討しています。EP4と、がんの関連を明らかにすることでがん治療の新たなターゲットを見い出せると考えています。

医療制度研究

近年の規制緩和政策要綱を反映して、米国型の医療制度の導入を始め、わが国の医療制度が大きく変わろうとしています。旧来的な保険医療制度のあり方から、より米国的な診療報酬制度が導入されつつあります。
循環器病学の治療方法も保険制度や病院の経営方針の違いによって影響を受けつつあります。米国に比べて20年間の時間格差があると言われる日本の医療にとって、21世紀の社会制度に即応した医療制度はどのようなものなのかを探っていきます。