研究内容

当教室では、心筋梗塞や慢性心不全などの難治性心疾患、それに合併する抑うつなどの精神疾患を、ペプチドホルモンや神経伝達物質の機能を解析・科学することで、臨床に還元することを目指しています。

ナトリウム利尿ペプチドの生理・薬理作用解析に関する研究

国立循環器病研究センター研究所の松尾壽之名誉所長らは、心臓から「心房性ナトリウム利尿ペプチド (Atrial Natriuretic Peptide; ANP)」や「脳性ナトリウム利尿ペプチド (Brain Natriuretic Peptide; BNP)」が産生・分泌されることを明らかにし、心臓が内分泌臓器であることを明らかにしました (BBRC 1984, Nature 1988 )。ANPは日本において急性心不全治療薬として、BNPは心不全診断薬として臨床応用されています。

近年、ANP・BNPの分解酵素を阻害する薬剤が、慢性心不全治療薬・高血圧治療薬として臨床応用されました。我々はANP・BNPの共通受容体であるNPR1の遺伝子改変マウスを独自に作製し、その表現型解析を行うことでANP・BNPの生理・薬理作用の分子メカニズムを明らかにしてきました。今後はANP・BNPの薬理作用を、特に神経系・免疫系に注目して深く掘り下げて調べるとともに、循環器領域以外における治療応用の可能性も探っていきます。国内外の研究者との共同研究も積極的に行っています。

グレリンの生理・薬理作用解析に関する研究

国立循環器病研究センター研究所で発見された胃から産生・分泌されるホルモンであるグレリンについても、循環器疾患における病態生理的意義について研究しています。

グレリンは成長ホルモン分泌促進ホルモンとしてラット胃から発見され (Nature, 1999)、その後グレリンが摂食亢進作用を有することも明らかにされました (Nature, 2001) 。我々はグレリンが自律神経系に作用することで、心筋梗塞モデルや心不全モデル動物の病態を改善することを明らかにしました。グレリンは視床下部でも産生されていますが、その病態生理的意義には不明な点が残されています。今後は末梢組織で産生されるグレリンに加えて、中枢神経系で産生されるグレリンについても、その生理的な意義や薬理作用を分子レベルで探っていきます。

ドーパおよびその受容体であるGPR143に関する研究

レボドパ(ドーパ)は、現在でも最も有効性の高いパーキンソン病の治療薬です。従来、ドーパの薬理作用は、アミノ酸脱炭酸酵素によってドパミンへと変換されることにより作動すると考えられてきましたが、私たちの研究室では、ドーパそのものが神経伝達物質として働くという仮説を提唱しました。長い間その受容体分子は未同定でしたが、眼白子症の原因遺伝子産物であるGPR143が、生体内においてドーパ受容体として機能することを見出しました。GPR143は、末梢臓器および中枢神経系などに発現していますが、その生理機能はほとんど明らかになっておりません。今後はパーキンソン病治療におけるドーパの位置付け、ドーパが統合失調症やうつ病などの精神疾患に関わるのかどうかを証明していきます。未だドーパは神経伝達物質として教科書に記されていません。この研究を通じて教科書を書き換えることを目指しています。

横浜市立大学医学部・大学院医学研究科

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