RESEARCH THEME 2

様々なイオン分子反応のメカニズムを正確に理解する

電荷を持ったイオンやそれらが関わるイオン分子反応、溶液内ではもちろん、大気中のような気相の科学でも重要な役割を果たしています。また、ガス状のイオンを計測対象とする質量分析学の計測分野でも、イオン分子反応の理解が欠かせません。当研究室では、色々な場面に現れる個々のイオン分子反応のメカニズムを正確に理解していき、反応の基礎的な特性評価から様々な応用へと繋げていきます。

大気汚染物質を生成する「ホンモノ」と生成しない「ニセモノ」を見分ける
二次有機エアロゾル生成に関わるテルペン二量体を正確に検出

当研究室と国立環境研究所環境計測研究センターの猪俣敏室長の研究チームは、植物から放出されるモノテルペンと呼ばれる有機物とオゾンの反応によってできた、大気汚染物質の生成源として重要な化学物質の一つである「テルペン二量体」について、衝突誘起解離法を組み合わせた質量分析を行いました。その結果、検出される二量体ピークのうち、大気汚染物質を生成し得る化合物のピークは10%以下であり、それ以外は装置内のイオン分子反応で生成するアーティファクトであることを見出しました。これまでに、大気汚染物質の生成に関わるテルペン二量体の生成速度について、二量体の質量領域に現れるピーク強度そのものを用いて報告されたものがありましたが、本研究の結果により、過去に報告されてきた値は、実際の値に比べて1〜2桁過大評価されていることが示唆されました。