主任教授よりご挨拶

田中章景主任教授よりご挨拶

2012年9月より、横浜市立大学神経内科の初代主任教授でいらっしゃる黒岩義之先生の後を引き継ぎ、教室の運営を行っています。神経内科は主として脳、脊髄、末梢神経、自律神経、筋などの障害により生じる疾患を扱う診療科であり、一般によく知られている疾患としては脳卒中、認知症、頭痛、てんかん、パーキンソン病などがあります。これらの疾患は、超高齢化社会の到来とともに飛躍的に増加する傾向にあり、神経内科の重要性がますます高まっています。

診療

横浜市立大学神経内科では、横浜市立大学附属病院を中心に横浜市立大学附属市民総合医療センター、多くの医局員を派遣している横浜市および神奈川県の主要な病院から構成される関連病院と一体となって診療を進めています。横浜市立大学附属病院の特徴と使命は、すべての神経内科領域にわたって最先端の高度な神経内科医療を提供することです。このため、医局員一同、普段から研鑽を積んでいます。中でも、神経難病である神経変性疾患(パーキンソン病およびその関連疾患、アルツハイマー病や前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症をはじめとする各種認知症・高次脳機能障害、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動ニューロン疾患、脊髄小脳変性症など)や神経免疫疾患(多発性硬化症、視神経脊髄炎、自己免疫性脳炎、ギラン・バレー症候群をはじめとする自己免疫性末梢神経疾患など)、また各種の稀な遺伝性神経疾患は、当病院の特性を反映して数多くの診療を行っており、研究にも注力しています。また、当科は脳卒中科も併設しており、地域の脳卒中診療に貢献するとともに、神経感染症、てんかんなどの救急疾患にも対応しています。

神経内科研修

当科では、病棟診療をグループ制で行っており、主治医以外にも多くのスタッフが1人の患者さんの診断、病態、治療について意見を出し合い、ベストな医療を提供できるよう努めています。これは、患者さんのためであると同時に若手医師の教育という点においても大きな効果を発揮しています。大学病院の使命である医師の教育は、新患カンファレンス、最新の医学知識を得るための抄読会、総回診、グループカンファレンス、グループ回診、複数の医師で行う各種検査などを通じて効率的に行われています。これまでに入局した医局員たちからも、これらの指導体制は高く評価されており、日本神経学会神経内科専門医の合格率も極めて高い水準を維持しています。2017年度から開始される予定の新しい内科専門医制度、さらにその後予定されている神経内科専門医制度に十分に対応できるシステムをすでに構築しています。当科で教育を受けた神経内科医は100名近い横浜市立大学神経内科医局員として、大学病院をはじめ、市中の数多くの関連病院、クリニックにおいて横浜市、神奈川県の神経内科医療を支えています。

2012年に私が着任して以来、すでに30名を超える新たな医局員を迎え当科は着実に発展してきていますが、まだまだ地域の神経内科医は不足しています。今後も神経内科に興味を持つ若手医師の方々に是非とも私たちの仲間になっていただければと思っています。定期的な入局説明会に加えて、随時いつでも相談を受け付けていますので、気軽に連絡してきて下さい。当医局の最大の特徴は、医局の雰囲気がとても和気あいあいとしていることで、いつもみんなにこやかに患者さんのこと、研究のことをディスカッションしています。学生や初期研修医のみなさんからも、とても雰囲気の良い医局という高い評価を得ていることは大変うれしいことです。このようなスタッフの和は、患者さんの診療、そして神経内科研修、研究推進にとって大きな原動力となっています。

 研究

最後になりますが、当科では診療、教育に加え、大学病院としての責務である研究に力を入れています。大学(横浜市立大学附属病院・横浜市立大学附属市民総合医療センター)のスタッフは総勢43名(大学院生15名)で、特に大学院生、指導診療医、教員は各々のテーマを持って研究活動を行っています。当科では、ベッドサイドの臨床研究と実験室で行う基盤研究の両輪のバランスをとりながら、若手医師の幅広い興味に対応し、患者さんたちに還元できる研究をめざしています。

臨床研究では、認知症や様々な神経変性疾患でみられる高次脳機能障害を先進的な脳画像と併せて解析を行っています。また、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症の臨床症状を先進的な機器を使って解析する研究も進めています。パーキンソン病やジストニアに対する脳深部刺激療法(DBS)の効果を解析する研究も進行中です。さらに、1例1例の患者さんの症候を深く検討し、症例報告として論文化することも積極的に進めています。

基盤研究では、私が着任して以後、実験室の整備や研究指導者の育成も順調に進んでおり、先進的な研究を推進する環境が整ってきています。ALS、脊髄小脳変性症をはじめとするポリグルタミン病、多発性硬化症などの神経難病に対する新規治療法開発を目指して、分子生物学的手法、神経病理学的手法を用い、ヒト組織における解析、培養細胞モデル・動物モデルの作成・解析を行っています。さらに、当大学遺伝学教室とともに、脊髄小脳変性症をはじめとする様々な遺伝性神経疾患のゲノム解析を推進し、新規責任遺伝子や新規責任遺伝子変異の同定に数多く成功しています。

また、研究基盤のさらなる拡充のため、国内、海外留学も積極的に進めています。アルツハイマー病の神経免疫学的分子基盤の解明、各種神経疾患治療へ応用可能な神経可塑性や神経軸索輸送の分子メカニズムの解明、神経エコーをはじめとする神経生理学的検査を用いた臨床研究、てんかんの脳波解析研究、先進的神経放射線画像解析研究などを行っています。また、豊富な関連病院との研究交流のシステムも整えており、2016年度には横浜市立大学発の新規薬剤の臨床試験の開始も予定しています。

 

当科は前任の黒岩義之名誉教授が開設して以来、まだ20数年と歴史の浅い教室ではありますが、多くの新入局者とともにさらなる飛躍をめざして診療・教育・研究に力を注いでいきたいと考えています。

 2016年4月1日

横浜市立大学大学院医学研究科 神経内科学・脳卒中医学

主任教授 田中 章景

 

bt_contact_ja2

PAGETOP