時間生物学研究室

研究室紹介

  1. 海洋性ラン藻プロクロロコッカスの概日時計の解析
  2. 細菌性セカンドメッセンジャーcyclic di GMPの解析
  3. 植物の概日時計にかかわるlong non coding RNAの解析
  4. 概日時計の数理的解析

海洋性ラン藻プロクロロコッカスの概日時計の解析

大気二酸化炭素の50%を緑藻とラン藻が光合成によって海洋中に吸収しています。ラン藻プロクロロコッカスは、その存在が確認されてからまだ数十年しかたっていませんが、太平洋などの膨大な水系における優占種として注目されています。プロクロロコッカスの生化学的研究とゲノム解読によって、特徴的なジビニルクロロフィルを光合成色素持つ点と、ゲノムサイズが数割少ない点が特徴として浮かび上がってきました。また、海洋のフィールド研究によって光の強い表層から光の弱い深層まで多種多様のプロクロロコッカスが発見されつつあります。これまで、ラン藻の概日研究は、淡水性のシネコッコッカスで行われてきました。しかしながら、海洋性のラン藻については、数報のレポートにとどまり、プロクロロコッカスがどのような概日時計をもっているのかは不明でした。当研究室では、プロクロロコッカスの培養系と生化学的実験系を整備してきました。現在、プロクロロコッカスの概日時計の実体の一端を解明すべく研究を行っています。それがどのようにして光合成と細胞分裂を制御して海洋の物質循環に寄与しているのかを解明していきます。

細菌性セカンドメッセンジャーcyclic di GMPの解析

細菌のセカンドメッセンジャーとしてこれまで、cyclic AMPなどの環状ヌクレオチドが知られていいます。新規のセカンドメッセンジャーとして、二つのヌクレオチドがそれぞれのリン酸基で環状構造をとっているヌクレオチド二量体cyclic di GMPが、病原性細菌や物質生産に重要な細菌から見つかっています。このヌクレオチド二量体と概日時計の関係を明らかにするために、形質転換の可能な淡水性ラン藻シネコッコッカスで研究を行っています。方法として、ルシフェラーゼによる生物発光システムを用います。また、質量分析装置をつかうことで、細胞内の環状ヌクレオチドを定量することに成功しています。さらに細胞内の環状ヌクレオチドを任意に制御して概日時計を人為的に任意の時刻に操作するために形質転換体を作成しました。これらの実験系によって、cyclic di GMPがどのようなメカニズムで概日時計を調節しているのかが今後明らかとなるでしょう。

植物の概日時計にかかわるlong non coding RNAの解析

沓名研究室では植物の日周運動に異常をきたした突然変異体を複数確立してyuc1, ycu2, ycu3 と名付けました。この突然変異の原因遺伝子を遺伝学的に調べたところ、Long non coding RNA遺伝子のマップすることができました。Long non coding RNAは、数百から数キロ塩基のRNAです。このRNAからの翻訳の有無はプロテオーム解析では検出されていないため、RNA遺伝子として機能するのか短いペプチドが翻訳産物として発現しているのかを実験で確認する必要があります。われわれは現在ペプチドが発現して、概日時計に作用していると仮定して研究しています。