基礎研究医養成活性化プログラム
実践力と研究力を備えた法医学者育成事業
(平成29年度文部科学省補助金採択事業)
◆令和元年度の活動実績
2019年4月1日 「新しいプログラム受講生を受け入れました!」
横浜市立大学では、今年度新しいプログラム受講生の田邊桃佳さんを受け入れました。
DNA実験中の田邊さん
田邊さんは、最初の2年は研修医として、初期研修に励みながら並行して大学院博士課程で研究を進めます。多忙な日々の中ではありますが、大学として各連携大学での解剖実習や国際ワークショップにも積極的に参加できるよう、応援していきます。
第8回神奈川こども虐待勉強会(令和元年5月25日(土))
初期対応をした救急部医師、小児科医などの医療関係者だけでなく、生体鑑定を実施した法医学者、取り扱い警察署員や検察官などの関係者が一堂に会しての勉強会に参加しました。
日本法医学会学術全国集会に参加しました(令和元年6月14日(金)仙台サンプラザホール)
■引率教員コメント
6/12-14
本事業の受講生ならびに今後法医学を志す研修医とともに、仙台で開催された法医学会学術全国集会に参加した。本学会は全国の法医学者が集まる最大規模の学会であり、様々な研究領域の法医学者が一同に会する年一回の機会である。社会医学の一領域である法医学は地域・社会に近接した学問であるが故に、実務的にはもちろん研究面においても地域による相違が大きいことが特徴である。法医学者を志す若い医師が、様々な地域の法医学者と触れ合うことによって、法医学の幅広さを知るとともに、自分にあう大学講座を探す貴重な機会であると考える。若い医師を本学会に参加させたことは、法医学を志す受講生がより具体的な将来像を描けただけでなく、進路のひとつとして法医学を考えている研修医にとっても自身の将来を考える貴重な機会となったはずである。
■参加学生の感想
医学研究科 法医学 解良仁美 (大学院3年)
私がこれまでに参加した同学会では、発表を拝聴することがほとんどでしたが、今回は1年次・2年次に行った研究の成果をポスターで発表をしました。発表に際し、沢山の指導やアドバイスを受けてポスターを作成することができ、非常に良い経験となりました。また発表を見てくださった他大学の先生方から質問やご指摘をいただき、新たな視点に気付くことができました。また今回の学術集会では男女共同参画を目的としたシンポジウムも開催され、今後大学院生として、また卒後のライフプランを検討する上で非常に有意義な時間となりました。学術集会を通して得た経験を活かし、研究・勉学に引き続き励んでいきたいと思います。
医学研究科 法医学 田邊 桃佳 (大学院1年、初期研修1年)
今回の学会では「法医学領域における女性研究者のワークライフバランス」という男女共同参画シンポジウムがあり、自身の今後のキャリア形成を考える大変良い機会となりました。シンポジウムでは複数の先生方のワークライフバランスを知ることができ、その後のランチョンセミナーではより多くの女性法医学者の先生方の生の声を伺うことができました。私は今年度から本学の大学院で法医学を専攻しています。まずは大学院生として法医学の実務と研究に注力してまいりますが、同時に今後どのような立場から法医学で働いていきたいか、様々な先生方をロールモデルにしながら考えを深めたいと思います。
横浜市立大学附属病院 國中 光(初期研修2年目)
本学法医学教室のスタッフと学生と共に参加させていただきました。日本全国の法医学教室の基本的業務から、最新の研究に至る様々な講演やポスター発表に触れる大変貴重な機会でした。特に男女参画シンポジウム「法医学領域における女性研究者のワークライフバランス」にて医師だけでなく、様々な資格や知識を持ちそれぞれの研究室で第一線として働く女性研究者の働き方や家庭との両立への工夫などを聞けたことは同じ女性の立場として大変勉強になりました。法医学に携わり仕事に情熱を持って働く方々に出会えた大変有意義な機会となったことを関係者皆様に感謝いたします。
横浜市立大学附属病院 関 智弘(初期研修2年目)
この度、法医学学会に参加させていただきありがとうございました。講演ではAiや法病理、DNAなど多岐わたる分野での最新のトピックに触れ、今後研究に携わる者としての具体的なヴィジョンが見えました。また、学会場では様々な大学の先生方と具体的な仕事のリズムや展望、公私含めた生活面に関してお話させていただく機会があり有意義な時間を過ごすことができました。今回のこの経験は今後の自らのキャリアを考えていく上で、非常に貴重な機会でした。
日本法医学会学術全国集会(令和元年6月14日(金)男女共同参画シンポジウムへの協力(東北大学 舟山教授主催))
政府が推し進めるわが国の男女共同参画の取組は、最初の一歩を踏み出したばかりで、最も閉鎖的な社会の一つである大学では女性研究者は未だ“マイノリティー”であり、法医学も例にもれません。法医学の分野では昔から多くの女性が活躍しており、加えて近年、法医学者を志す女性医師の数も増えてきています。少ないスタッフで解剖などの法医実務をこなし、研究や学生教育の任務も負うため負担は過大です。今回は女性研究者が直面しているワークライフバランス(仕事と家庭の両立)を考える契機として本シンポジウムを企画、開催しました。法医学の基礎研究医を育成する上でもワークライフバランスの整備は重要であり、本プログラムの一環として事務局を担当し開催に協力しました。東北大学 副学長である大隅典子先生には「無意識のバイアスからの解放」と題する基調講演をしていただきました。多くのデータを基に現状を認識するとともに、海外との比較を含めて、我々が何を目指し、どこに向かうべきかを示していただきました。また、法医学者として第一線で活躍している4名の女性研究者からはプライベートな話も含めて率直な問題提起を頂くことができました。
東京女子医科大学 特別講義・法医学セミナー(令和元年6月21日(金))
東京女子医科大学の2年生に法医学の特別講義を実施しました。法医学者を志す若者をリクルートするためには、早い段階から法医学に興味を持ってもらうことが重要であり、学生講義は法医学をアピールする絶好の機会であると考えています。女子医学生の多くは自身の将来像や将来設計に不安を抱いており、女性教授を間近にみることでひとつのロールモデルを描いてもらえれば嬉しいと思っています。
令和元年8月ミュンヘン大学派遣
昨年に引き続き、プログラム受講生をミュンヘン大学法医学研究所へ派遣しました。
ミュンヘン研修報告書 プログラム受講生 田邊 桃佳
2019年8月5日から9日までの5日間、私はミュンヘン大学法医学研究所で研修を行いました。かねてから諸先生方より同研究所のお話を伺っており、日本よりも幅広い法医実務が行われている同研究所を見学できることを心待ちにしていました。現在、私は大学院1年次ではありますが、初期臨床研修医1年次も兼ねています。そのため5日間という短い期間の研修となりましたが、法医解剖15件、検案2件、生体鑑定3件、裁判1件に立ち会えたほか、各研究室を見学し先生方からレクチャーを受けることもでき、同研究所での法医実務を概観することができました。本研修終了後、大学院生および初期臨床研修医の双方の立場として本研修の意義について振り返りました。まず大学院生としての本研修の意義ですが、ミュンヘンの法医学について以前から関心を持っていましたので、月並みな感想ではありますが、実際の施設や実務の様子を見学でき大変勉強になりました。5日間の研修では全体を概観するに過ぎなかったものの、日本に比べてドイツでは法医学が司法や行政と強く結びつき、社会的に果たす役割が大きいのだろうと感じました。次回の研修では、かねてから関心のある生体鑑定、特に児童虐待や性的虐待などの生体鑑定について理解を深めることができればと考えています。
また初期臨床研修医としての本研修の意義ですが、法医学者を目指す者として臨床現場で学ぶべきことを明確にして初期臨床研修に励みたいと改めて感じました。これまで各診療科の知識や技術を学ぶことで、特に内因死や医療関連死の法医解剖で活かされうるだろうと思い、これこそが臨床を経験したうえで法医学の道に進むべき理由であると考えていました。加えて本研修で解剖が手際よく進む様子を見学しているうちに、所見を正確に取り、客観的な表現で述べられることが法医学者にとって極めて重要だろうとふと気がつきました。臨床現場であっても、診察の際に所見を正確に取り、客観的な表現で述べられるようになることが、将来の法医実務に活かされるかもしれないと考えました。今後の初期臨床研修では特に診察に力を入れ、所見を正確に取り、客観的な表現で述べられるよう日々努力を重ねます。
最後になりますが、ミュンヘン大学医学部法医学研究所、横浜市立大学、文部科学省「基礎研究医養成活性化プログラム」の関係者の皆様に深く御礼申し上げます。
第2回神奈川4大学医学部法医学勉強会(令和元年8月24日(土))
神奈川県4大学医学部法医学での勉強会を横浜市立大学で開催しました。本勉強会は、事例検討や研究紹介などを通して相互の連携強化を図ることを目的として開催しています。本学からは「臨床法医学センター」の設置についての説明を行い、センター運営の理解を求めるとともに、全県的な協力体制の要請をお願いしました。人材交流や技術交流のための貴重な機会となりました。また、将来的には県内4大学が連携大学となって、本プログラムを継続していくことについても検討しました。
第2回日本法医病理学会学術全国集会(令和元年9月6日(金)~7日(土))
今回、鹿児島で開催された日本法医病理学会では一般演題に加えて「児童虐待を考える」というシンポジウムが行われました。シンポジウムでは、法医学者だけでなく、小児脳神経外科医、小児科医、眼科医、歯科法医学者からみた児童虐待についての講演がありました。児童虐待は単一の診療科で対応できるものではなく、重症例やハイリスク症例であればあるほど、多くの専門家の連携が重要になります。今回のシンポジウムでは、それぞれの領域における知見や現状についての紹介を通して率直な議論が交わされ、受講生にとっても貴重な勉強の機会となりました。
第65回日本病理学会秋期特別総会(令和元年11月8日(金))
本シンポジウムでは、平成29年度基礎研究医活性化プログラムに採択された5大学の代表者からそれぞれの取組やプログラムの進捗状況が紹介されました。本プログラムについては「研究力と実践力を備えた法医学者育成事業について」と題し、これまでの本学の取組について紹介しました。聴衆の多くは病理学者であり、法医実務や法医学を取巻く現状について理解していただく貴重な機会となりました。また、他の採択プログラムの詳細を知る機会となり、様々な工夫やアイデアは参考になりました。一方、本学以外のプログラムは病理医育成に重点を置いた企画であり、本学のみが法医学者育成を目的としたプログラムであることは衝撃でした。全国に5000名いる病理医に比較して、法医学者は150名余であり、死因究明等推進基本法などを受けて、今後益々法医学への社会ニーズが高まることを鑑みると、法医学者育成が急務であると再認識しました。
令和元年12月ミュンヘン大学研修
横浜市立大学大学院 医学研究科 法医学
解良 仁美
私は2019年12月1日から12月21日にかけての約3週間、ドイツのミュンヘン大学法医学研究所で研修を行いました。同施設への訪問は3回目となり、研究所の方々には温かく迎えていただきました。ミュンヘン大学法医学研究所は年間約3000体の解剖を行っている施設です。解剖台は3台あり、1台につき1日最大4体、つまり1日最大12体の遺体が解剖されます。今回もそのうちの1台に配属され、3週間で40体(横浜市大法医学教室での約3か月分に相当)の解剖を見学しました。日本では経験しえないような症例が数多くあり、またこれまでの研修で経験する機会のなかった類の症例もありました。さらに先生方のご指導の下、見学だけでなく実際にメスを持ち、臓器の摘出をさせていただきました。同施設での解剖は摘出方法・使用器具・スピードが横浜市大でのそれと大きく異なっているため非常に困惑しましたが、とても良い経験になりました。当然ながら見学するのと実際に自分で行うのとでは雲泥の差です。諸先生方と比べて自身の技量の低さ・手技の遅さに愕然とし、また摘出方法や器具の違いによるメリット・デメリットを考える貴重な機会となりました。また、研究所では医学教育に力を入れている点も印象的でした。研究所の大講堂には解剖台と遠隔操作のカメラ、スクリーンが設置されており、解剖を実際に行いながら医学生に解説をする、という座学の講義がありました。講義には担当刑事も同席し、死亡者の生活歴や解剖に至った経緯などを共有しながら、医学生に一連の解剖過程を見せていました。日本にはそのような授業や設備はなく、解剖の頻度が少ないこともあり、法医解剖を一度も見たことない医師が多く存在します。この点においてドイツは非常に恵まれており、日本でも何らかの形で導入出来たらと感じました。
解剖だけでなく、外来診察(生体鑑定)も8例見学することができました。中でも身体的虐待が疑われた黒人男児の診察は印象的でした。黄色人種が大部分を占める日本において、黒人の外表損傷を見ることはほとんどありません。しかし、今後さらなる国際化に伴って日本でも診察する可能性があると思われます。また普段ほとんど診ることながい小児や成人女性の外陰部診察にも立ち会い、将来要求される知識や経験を再確認するに至りました。また昨年に引き続き、解剖や診察のない時間に頚部器官の剖出・精査を行いました。これは解剖時に摘出された頚部器官から筋などの軟部組織をすべて取り除き、舌骨・甲状軟骨・輪状軟骨・気管軟骨を観察する手技です。実体顕微鏡を用いながらの作業のため、鍛錬が必要なうえ、骨折がある場合はどのように頸部へ外力が加わったのかを推察する必要があります。昨年と同様に指導を受けながら手技を進め、さらに今回は実際に頸部への外力が死因となった症例も担当しました。その症例では甲状軟骨と輪状軟骨に骨折があり、骨折部位に余計な負荷がかからないよう、より注意深い繊細な作業が要求されました。一朝一夕にはいきませんでしたが、益々経験を積んで技術を習得したいと思います。
全体を通して、今回は昨年の研修と比較してより一歩踏み込んだ研修となったように感じました。同研究所で昨年と同期間研修をしていても学ぶことが非常に多くあり、充実した3週間でした。偏に研修を受け入れてくださった先生方の温かい人柄と熱心なご指導があったからこそだと思います。この場をお借りして、心から感謝申し上げます。
令和2年12月第3回 ワークショップ
「法医鑑定に求められる法学に関するワークショップ~刑事裁判における法医学の役割」開催報告書
令和元年1 2月1 4日、横浜市立大学附属病院臨床講堂において、甚礎研究 医養成活性化プログラムの 一環として第3回ワークショップ「法医鑑定に求められる法学に関するワークショップ~刑事裁判における法医鑑定の役割~」を開催しました。今回のワークショップでは、法医学者に必要な法学的な知識を習得することを目的として、刑事裁判に詳しい法曹関係者をお招きしてご講演いただきました。続きは⇒コチラ
令和2年1月ミュンヘン大学派遣
連携大学 琉球大学 二宮賢司
横浜市立大学大学院医学研究科法医学講座の井濱教授ならびに、派遣先であるミュンヘン大学法医学研究所のGraw教授のご厚意により、1/13-24の2週間、ミュンヘン大学法医学研究所の施設見学の機会を得た。かねてより話は聞いていたものの、解剖手技そのもののみならず、研究所の規模の大きさや、体系立てられた実務機関としての在り方もまた興味深かった。日本においては、各都道府県に少なくとも一つずつ大学の法医学講座があるものの、それらはあくまで大学の一基礎講座であり、法医実務をどの程度、またどの様に行うかは各講座に委ねられている。ドイツにおいても、各研究所間である程度の差異は見られるとのことだが、少なくとも研究所自体や、捜査機関をはじめとする社会全体にとって、研究所が法医実務を行うことが前提となっている、言うなれば社会制度に組み込まれていると感じた。このような、ある地域における法医実務を行う施設の在り方は、その地域での法医学の人材確保という点からも重要であると考えられる。日本、特に地方においては、法医実務のためのポジションや働き方の選択肢はほとんどないのが現状である。法医実務が社会で果たす役割が理解され、社会のリソースを割く価値のある分野だとの評価を得なければ、人を集め設備を整えることは難しく、学問としても実務機関としても発展は望めない。この点、日々法医学関連の仕事をしている者として、地域の需要に応えるのみならず、より広く業務内容への理解を得る努力をする必要があると感じた。
今回、他国の法医学研究所を見学させていただき、実務手技そのものから業務管理など運営のことまで大変参考になった。他地域での法医実務の在り方を知っておくことは、後進を指導する際にも若手の、また自らの視野を広げるという点で非常に重要であると思われる。末尾ではあるが、このような機会を与えていただいたミュンヘン大学法医学研究所、横浜市立大学、文部科学省「基礎研究医養成活性化プログラム」の関係者皆様に厚くお礼申し上げる。
令和2年2月神奈川県立こども医療センター放射線科での研修
横浜市立大学大学院医学研究科医科学専攻 博士課程 1年
田邊 桃佳
2020年2月3日から7日までの5日間、私は神奈川県立こども医療センター放射線科で研修を行いました。
私は以前から小児虐待に関心があり、法医学的な視点から小児虐待に関する研究や実務に取り組んできました。これまで被虐待児の生体鑑定に立ち会い、損傷所見の取り方や記録方法、受傷機序や時期を推定することについて実例をもとに学んできました。小児虐待が疑われる症例では、生体鑑定のみならず画像診断も重要な証拠になりますが、小児の画像診断は専門性が高く、専門家が少なく、興味を持ちつつも系統的に学べる機会がありませんでした。今回は神奈川県立こども医療センターでの研修を許可していただき、小児放射線科医である相田典子先生から、虐待が疑われる小児の画像診断について直接ご指導いただくことができました。
研修では相田先生をはじめとした放射線科の先生方から、Abusive Head Traumaと診断された症例を中心に、X線、CT、MRIによる画像診断についてご指導いただきました。さらに本研修期間中、児童相談所から被虐待児に関する画像診断のセカンドオピニオンの依頼や、虐待による傷害致死被疑事案について相田先生が証人として出廷される裁判を傍聴する機会もあり、大変勉強になりました。児童虐待の対応のためには多職種の連携が必要不可欠と言われます。虐待が疑われる小児の鑑定では、法医学者は損傷をもとにした診断、放射線科医は画像をもとにした診断が求められます。各々の職種がそれぞれの強みを活かして連携することは重要ですが、法医学者も小児虐待に関する画像診断の知識を身につけることは必要であると考えます。本研修で学んだ読影知識は、これから法医学者として生体鑑定をする際に大いに役立つと感じました。
最後になりますが、神奈川県立こども医療センター、横浜市立大学、文部科学省「基礎研究医養成活性化プログラム」の関係者の皆様に深く御礼申し上げます。
令和2年3月琉球大学研修
横浜市立大学大学院 医学研究科 法医学
解良 仁美
私は2020年3月2日から6日にかけて琉球大学医学部法医学講座で研修を行いました。
まず前回訪問時(2018年11月)と比較して、私自身が検案業務を行うようになったこともあり、琉球大学での解剖・検案見学は非常に有意義なものでした。諸先生方の診察や手技を改めて見学すると、自然と自身の達成度が見える上に、各症例についてご意見を伺うと、異なる考察や鑑別疾患、知見が得られました。研修中の解剖症例数はあまり多くありませんでしたが、一方で各事例の症例検討に時間を割くことができたため、とても勉強になりました。ぜひ次回は執刀医としての経験を横浜でした上で訪問し、新たな目線で研修ができたらと思います。
また滞在中、以前解剖された症例について警察署で再現実験が行われることとなり、見学の機会に恵まれました。現場の状況や解剖結果から死因は想起できるものの、本当に死亡事故が起こりうるのか、実験での証明が重要でした。警察署の方々は熱心に一日がかりで実験をされており、事例への関心の高さが伺えたのと同時に、警察と法医学の良好な関係性も垣間見えました。相互に協力する姿勢は見習うべきものであり、警察だけでなく様々な職種の方と連携して死因究明や社会貢献に努められればと再認識しました。
琉球大学では比較的年齢の近い先生方が活躍されているため、症例経験の他にも自身の将来像や現在の問題点、それに対する解決策を得る大変貴重な機会となっています。この場をお借りして先生方、スタッフの皆様に厚く御礼を申し上げます。