学会・研修報告
2016年度成育医療センター救急集中治療セミナー参加報告
五十嵐 梨紗先生の報告
2016/7/23、7/24の2日間、成育医療研究センターで行われた、救急集中治療セミナーに参加しました。
横浜市大の後期研修ローテでは市中病院がメインのため、重症症例の経験数はどうしても少なくなってしまいます。そのため、いざ重症がくると慌ててしまい、なかなか素早い判断ができずに後悔したことが何度かありました。三次病院に搬送するまでに全身状態できる限り安定させられるくらいの知識と手技を習得したかったので参加しました。
レクチャーの内容に関しては、1日目は呼吸管理、循環管理などで、2日目は頭部外傷、中枢神経管理(二次性脳損傷を防ぐ方法)、鎮静・鎮痛・筋弛緩の使い方などでした。7-8人のグループとなりディスカッション形式でいくつかの症例について話し合います。日本全国から同世代の小児科医、麻酔科医、救急医が集まり話し合うため、施設での違いや科ごとの考え方の違いなどが明らかになり、横浜という狭い地域のみでしか仕事をしたことがない私にとってはとても新鮮でした。
また手技に関しても多くのことを経験できます。挿管、CV挿入のみならず、鳥の骨を使用して骨髄路を確保したり、輪状甲状間膜穿刺のような外科的気道確保も模型を使用して練習できました。
成育の先生方はとても指導熱心で、2日間、あっという間に過ぎていきました。得ることのできた知識と手技を実臨床で生かしていきたいと思っています。
(五十嵐 梨紗 横浜医医療センター 小児科 後期研修医3年目)
齊藤 祐弥先生の報告
参加者は32人で7割くらいが小児科医で、それ以外が救急医でした。後期研修医が多かったです。セミナーのスタッフの数も参加者と同じくらいだったと思います。
セミナーはハンズオンとディスカッションがメインで、挿管や呼吸器管理など日常診療でも経験するようなことから血液浄化療法など一般病院ではほぼ経験することがない分野まで様々でした。集中治療に普段関わることは多くありませんが、基礎から説明してくれることが多くわかりやすかったです。途中ICUとERを見学する機会があり、規模の大きさに驚かされました。
集中治療に興味は持っていましたが、一般病院ではなかなか経験することが出来ず、今まではいざ重症患者を目の前にすると頭も手も中々動かない、というような状態でしたが、少しは対応できるようになったのではないかと思います。参加者のモチベーションも高く、非常に刺激になっていい経験でした。今後、実臨床でもなるべく多く集中治療に関わっていければと思っています。
(齊藤 祐弥 済生会横浜市東部病院 こどもセンター)
吉井 沙織先生の報告
・ケースディスカッション
(呼吸管理、循環管理、急性腎障害/血液浄化、頭部外傷、中枢神経管理)
講義を受けてからケースディスカッションを行ったため、評価や治療について理解がしやすかったです。呼吸管理では呼吸障害に対して人工呼吸器を実際に操作しながら、適切な設定を実践に即して考えることができました。中枢神経管理では外傷以外でも脳症などの内科疾患で小児にICPを挿入して頭蓋内圧をコントロールすることがあるようで、興味深かったです。また小児の頭部外傷を診療する機会は普段ありませんが、頭部CTを行う基準などについてディスカッションすることができ、勉強になりました。
・シミュレーション
(鎮静・鎮痛・筋弛緩、救急外来マネージメント、患者搬送)
普段、検査の鎮静をする機会は多いですが、改めて準備や計画から振り返ることができました。また気管挿管での前投薬の投与方法も確認できました。
患者搬送では、実際知りたい情報を電話で的確に伝えるのは難しく、どのように患者の重症感を伝えることが患者搬送において大切であると感じました。情報を取る場合でも必要な情報を短い時間で得る大変さをシミュレーションで学びました。
救急外来マネージメントではトリアージを元に患者を診る順番を判断するは日常診療でも悩むことがあり、今後の参考になりました。
・ハンズオン
(外科的気道確保、気管挿管、エコーガイド下穿刺、骨髄路確保)
日常診療では行う機会の少ない手技のハンズオンでした。実際に経験したことのない手技もあり、必要物品や手技の確認をすることができました。また気管挿管では経鼻挿管も学ぶことができ、利点などを教えていただきました。骨髄路確保では、鶏の足を使用して穿刺をしてので、実際に近い形で手技を行うことができました。
普段の診療では集中治療と関わることはないため、今回のセミナーでは救急や集中治療では自分に足りない知識や考え方を学ぶことができ、今後の参考になりました。機会があれば日々の診療に生かしていきたいと思います。
(吉井 沙織 大和市立病院 小児科)