大野茂男の研究遍歴

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東大教養学部・基礎科学科、磯晃一郎教授(分子生物学)の下での卒業研究時代(1974~1975)

研究テーマ:ヒストンサブユニット間の相互作用を解析

 大学院の渡辺和忠氏の指導で牛胸腺からヒストンを精製し、ゲル濾過を用いてヒストンサブユニット間の相互作用を解析した。卒業研究の夏に、Kornberg RDのヒストンオクタマーに関する歴史的論文が発表され、大いに興奮すると同時に、研究テーマの的確さに感動した。

東大大学院理学系研究科・博士課程、今堀和友教授(東大・医・2生化学)の下での大学院学生時代(1975~1980)

研究テーマ:コリシンE3の構造と機能

 コリシンE3(大腸菌のプラスミドにコードされた抗菌性タンパク質)の作用機構を、分子の構造機能の観点から解析した。プロテアーゼでコリシンE3を二つの機能ドメイン(細胞膜に結合するドメインと抗菌活性を示す活性断片)に分離した。この活性断片を用いて、これが細胞内に入ってRNaseとして16S ribosomal RNAを選択的に分解することを証明した。

癌研究所生化学部、村松正実部長、谷口維紹博士の下でのポスドク時代(1980~1983)

研究テーマ:ヒトインターフェロン遺伝子の転写制御機構(ウィルス応答性エンハンサーの同定)  

ヒトインターフェロンβの遺伝子をクローニングし、それを培養細胞に再導入し、ウィルスに応答して転写活性化が起きることを示した。さらに、この系を用いて、ウィルス応答性の転写シス因子(塩基配列)がプロモーター上流部位に存在することを明らかとした。

東京都臨床医学総合研究所・遺伝情報研究部、鈴木紘一部長の下での研究員時代

研究テーマ:カルパインの構造と機能(1983~1985)

 カルパインのcDNAをクローニングし、その配列を予測した。カルパイン遺伝子がパパイン様のプロテアーゼとカルモジュリン様のカルシウム結合タンパク質の遺伝子融合の結果生じたものであることが明らかとなった。

エール大学生物学部に短期留学(体細胞遺伝学のFrank Ruddle教授)(1984)、カルパイン遺伝子の染色体マッピング

研究テーマ:プロテインキナーゼC(PKC)を介する細胞シグナル伝達(1986~)

 神戸の西塚研で発見されたプロテインキナーゼC(PKC)のcDNAのクローニングを行い、その分子多様性を見いだした。さらに、従来のPKC(cPKC)に加え、新しいクラスのPKC、novel PKC (nPKC)、atypical PKC (aPKC)を見いだした。さらに、PKC分子種のcDNAを用いて、分子が異なった酵素学的性質を示すこと、細胞内で、異なったシグナル経路に関わっていることを見いだした。

横浜市大医学部・第2生化学講座

研究テーマ1:プロテインキナーゼC(PKC)を介する細胞シグナル伝達(1991~)

 PDGFレセプターのadd-back変異体と細胞活性化に伴うPKC各分子種の細胞内局在を指標とすることにより、細胞内での活性化経路を解析する新手法を開発した。これを用いて、aPKCやnPKCε分子が、phosphatidyliinositol 3-kinase を介したシグナル経路で活性化していることを見いだした。

研究テーマ2:PAR-aPKC複合体と細胞極性制御(細胞の極性と運命決定、発生と組織構築、発癌との関わり)(1997~)

研究紹介を参照

研究テーマ3:遺伝子変異からの細胞の防御機構;hSMG-1とmRNAサーベイランス(1999~)

研究紹介を参照

 遺伝子変異の1/3はタンパク質をコードしている途中でストップコドンが出現する形の変異であるとの試算がある。ナンセンス変異やスプライシングの変化がこれに含まれる。酵母、線虫の遺伝学的な解析から、このような異常なmRNAが、選択的に分解される機構(nonsense-mediated mRNA decay, NMD)があることと、それに関わる遺伝子が同定されている。この現象はmRNAサーベイランスとも呼ばれ、ゲノムの変異をmRNAレベルで抑制する、細胞の防御機構の一つである。ヒトにもこの機構があり、疾患症状大きく関わっていることが推測されている。しかし、詳細はほとんど不明である。

 新規のphosphatidylinositol kinase-related protein kinase (PIKK) ファミリーのキナーゼのcDNAのクローニングに端を発して、これが、線虫のmRNAサーベイランスに関わる遺伝子、smg-1の産物のヒト版であることを見いだした。実際、ヒト細胞を用いて、hSMG-1がNMDに必須のタンパク質であることを証明した。さらに、hSMG-1によるhUPF1/SMG-2のリン酸化が、NMDの必須の段階であることを見いだした。

 hSMG-1のキナーゼ活性を欠く点変異体や、阻害剤を用いて、ヒトがん細胞で、通常発現されていないとランケーと型のタンパク質を発現させることに成功した。

大野茂男 (ohnos@med.yokohama-cu.ac.jp)
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