研究内容

天然有機化合物の全合成

社会的意義の大きい生物活性天然有機化合物の全合成

古くから人類は自然界から得られる天然有機化合物を医薬品など様々なかたちで利用してきました。しかしながら、そのような人類にとって有益な生物活性を有する天然有機化合物は自然界からは極微量しか得られないことが多く、社会的要求に応えるためにはそれらの化学合成による供給は必要不可欠となっています。また天然有機化合物には特異な構造を持つものがあります。そのような化合物を人間の手で合成するということは有機合成化学の可能性を広げることになり、有機合成化学の社会への貢献を促すといった意味でも重要です。 これらのようなことから当研究室では「社会的意義の大きさ」を重要な研究目的として合成ターゲットを設定しています。
有益な生物活性や特異な構造を持つ天然有機化合物は、天然から極めて微量しか採れないことが多いため、様々な応用には合成による供給が不可欠です。当研究室では、有機合成化学の手法を駆使し、これら生物活性天然有機化合物の全合成を行っています。この合成により生物活性試験への供給を行い、活性発現機構の解明を目指しています。

 

人工生物活性物質の創製

天然有機化合物の持つ機能を超える人工生物活性物質の創製

古来、人類は多くの疾病に悩まされてきましたが、現在までの科学技術の発展によりその大半が克服されています。しかしながら癌やAIDS等のウイルス性疾患は今なおその治療が困難であり、また一度制圧したものと考えられた数々の感染症についても、「院内感染」の問題で知られるMRSAに代表されるような多剤耐性菌の出現によって再び脅威になりつつあります。さらに高齢化や人口増加に伴う疾病の増加に対しても、医薬品の果たす役割は今後ますます大きくなるものと予想されています。  今まで医薬品の多くは天然から得られる天然有機化合物が用いられてきましたが、上述のように薬剤耐性など多くの問題が存在します。これらに対して天然有機化合物を人為的に変換しそれらの問題の解決を図ることが考えられます。このようなことから当研究室では、特異な生物活性を有する天然有機化合物そのものを化学合成するだけでなく、その天然有機化合物が本来もつ生物活性、機能を凌駕するような人工生物活性物質の創製を目指しています。このことにより、より強力な医薬品の開発が可能となることで人々の健康に貢献できるものと考えています。  天然に存在しない化合物を得ることは有機合成化学の手法なくしてはできません。巧妙なメカニズムで活性を発現する天然有機化合物を手本に学びつつも、そのメカニズムに応じた分子デザインを行い、設計された化合物を有機合成化学という強力な武器を用いて実際に合成することで天然を超える人工生物活性物質の創製が可能になるものと考えています。