理事長メッセージ

横浜市立大学には2つの源流があります。一つは現在の国際商学部のルーツとして、1928年に設立された「横浜市立横浜商業専門学校(通称:Y専)」です。横浜開港以降、外国とのビジネスにおいて対等に渡り合うため、商業の理論と実践を担う人材を多く輩出することを目指した専門学校です。

そしてもう一つの本学のルーツが、横浜の医療の中心を担う「横浜仮病院」でした。この「横浜仮病院」は、日本で2番目の西洋式病院として開院以来、これまで永永と横浜市民の命を守り続け、現在の横浜市立大学附属病院・附属市民総合医療センター・医学部へと発展してきました。

病院は、開港によりもたらされた最新の西洋医学の知識を学び、実践し広める場として、また、横浜を襲った伝染病治療の中心として、さらには関東大震災の時には率先して被災者を受け入れる災害医療の拠点となるなど、その時代が求める必要な医療を市民の皆さまに提供し続けてきました。時宜に叶う使命を担うべく、先人たちの志を引き継ぎ、今もその強い使命感と行動は変わりません。世界を一変させた新型コロナウイルスのパンデミックに際しては、2020年2月横浜港に多くの感染者を乗せた客船が接岸した際、船内の重症患者を真っ先に受け入れたのは、本学の附属2病院でした。その後も多くの重症者の治療にあたるとともに、未知のウイルスと闘うため、数々の世界的研究成果を発信し続けてきました。本学の医療従事者、研究者、職員は、この未曽有の感染症の流行にあって一丸となり、敢然と立ち向かいその使命を果たしました。このことは、さかのぼること明治10年(1877年)のコレラの大流行の際の本学の働きと重なります。当時、横浜仮病院から県立の「十全医院」となっていた我々の病院は、多くのコレラ患者を収容し、中心となって活躍していたシモンズ医師により、市内の医師へ感染対策の啓発を行ったり、海港検疫や様々な防疫にも取組み、市中の感染拡大防止や治療にたいへん重要な役割を担っていたことが記録に残されています。「市民の命を守る最後の砦」としての病院の使命を表わすDNAが、今もなお本学の職員の中に脈々と息づいているのです。

そして、現在の附属病院と附属市民総合医療センター、さらに医学部の再整備の計画が本格化しています。この150年という歴史を礎に、診療・教育・研究のあらゆる面で横浜から世界へと成果を役立てさらなる発展、進化を目指しています。横浜開港の地のそば、根岸の丘に新たな医療拠点のランドマークが創設されます。150年間の市民の皆さまからいただいた様々な応援やご支援を糧に、これからも横浜市立大学は先人からの志を活かし、世界をリードする大学としてさらなる発展を願い、ここに実現を誓いたいと思います。

公立大学法人横浜市立大学 理事長 小山内 いづ美