About Us
理論・計算・データ解析による分子・材料の理解・設計にむけて
私たちの研究室では、分子・材料・タンパク質・酵素などの性質をコンピュータで予測・解析する研究を行っています。量子化学や第一原理計算といった物理に基づくシミュレーションに加えて、最近注目されている機械学習などのデータサイエンス手法も活用しています。「目に見えない世界を、理論と計算で見える化する」――そんなイメージで、原子・分子レベルの現象を深く理解し、新しい材料の設計や、酵素の機能解明・改良などにつなげることを目指しています。
研究対象は、エネルギー材料からバイオ分子まで幅広く、物理・化学・生物・情報の知識を融合した学際的なアプローチが特徴です。さらに、研究に必要なシミュレーション技術やデータ解析の方法そのものを開発することにも力を入れており、理論化学・物質科学・計算生物学の最前線に挑戦しています。
プログラミングや物理・化学・生物の知識を活かしたい人、AIやデータ解析に興味がある人、大歓迎です!
研究内容
ワクワクすることを一緒にやりませんか!?
ペロブスカイト太陽電池の理論的研究
ペロブスカイト太陽電池は、軽くて高効率、しかも製造コストが低いという魅力から、次世代の太陽電池として注目されています。ただし、表面の欠陥が性能を下げる原因になることがあり、これをどうやって改善するかが重要な課題です。私たちの研究室では、こうした欠陥を「パッシベーション分子」と呼ばれる特殊な分子で修復・保護する方法を、コンピュータシミュレーションを使って理論的に探っています。量子化学や第一原理計算を駆使して、分子がどのように表面に結合し、どんな効果をもたらすかを原子レベルで解析します。さらに、機械学習を使って有望な分子を効率よく探索することで、実験では見つけにくい新しい分子の候補を提案することも目指しています。
「材料の性能を分子レベルで改善する」――そんな研究に、理論と計算の力で挑戦しています。
エネルギー材料と触媒反応の理論研究
燃料電池やCovalent Organic Framework(COF)、アンモニア合成触媒など、エネルギー変換に関わる材料や反応系を対象に、プロトン移動や触媒反応のしくみを原子・分子レベルで解き明かす研究を行っています。プロトン(H⁺)の動きは、燃料電池の発電効率やCOFのイオン伝導性、さらにはアンモニア合成の反応性にも深く関わっています。私たちは、量子化学や分子動力学などのシミュレーション手法を用いて、分子の中でプロトンがどのように移動し、反応がどのように進むのかを理論的に解析しています。アンモニア合成では、従来の高温高圧条件を超える新しい触媒の設計が求められており、私たちはプロトン移動や電子移動を含む反応経路を計算で予測し、より効率的な分子設計に挑戦しています。
このような研究は、環境にやさしいエネルギー技術の開発に貢献するだけでなく、分子の世界を深く理解する面白さがあります。
重水素医薬:薬の未来を支える分子改良
重水素医薬品とは、通常の水素原子の一部を「重水素(D)」に置き換えた医薬品で、分子の構造はほぼ同じでも、代謝のされ方や反応速度が変化することで、薬の持続性や副作用の軽減が期待されます。近年では、実際に医薬品として承認される例も増えており、創薬の新しいアプローチとして注目されています。私たちの研究室では、こうした重水素化による分子の性質変化に着目し、薬の安定性や反応性がどのように変わるのかを理論的に検討しています。重水素化が酵素との相互作用や代謝経路に与える影響を分子レベルで理解することで、より安全で効果的な医薬品の設計につなげることを目指しています。
化学・生物・医薬の知識を融合し、分子の工夫で薬の性能を高める――そんな研究に、理論の力で挑戦しています。
シミュレーションで挑む酵素工学
酵素は、生命活動を支える重要な分子であり、化学反応を効率よく進める「生体触媒」として働きます。最近では、環境にやさしい化学プロセスや医薬品の合成など、産業応用に向けた酵素の改良・設計が注目されています。私たちの研究室では、こうした酵素の機能をより良くするために、量子化学や分子動力学などのシミュレーション手法を使って、酵素の構造や反応メカニズムを原子レベルで解析しています。さらに、機械学習を活用して、より高性能な酵素の設計指針を導くことにも取り組んでいます。
酵素工学では、自然界の酵素を改良したり、まったく新しい機能を持つ人工酵素を作ったりすることが目標です。私たちはそのための「理論的な地図」を描く役割を担っており、実験では見えない分子の世界を、計算の力で明らかにすることを目指しています。
シミュレーション・解析手法の開発
私たちの研究室では、分子や材料の性質をより正確に予測・解析するために、シミュレーション手法や解析技術そのものの開発にも力を入れています。
たとえば、誘電率に依存した新しい汎関数の開発では、電子構造計算の精度を高めることで、より現実に近い分子のふるまいを再現できるようになります。また、分子と陽電子の相互作用のような特殊な系に対しても、理論的に扱える計算手法を構築しています。さらに、重水素医薬品に関する計算データベースの整備や、機械学習を活用した解析アルゴリズムの開発にも取り組んでおり、実験では得られにくい情報を効率よく引き出すための“研究の道具”を理論の力で生み出しています。
こうした技術開発は、分子科学の基盤を支える重要な研究であり、新しい発見や応用の可能性を広げる鍵にもなります。
教育・研究体制
研究室の連携で広がる学びと刺激!!
私たちの研究室では、立川先生・北先生とともに、横浜市立大学で3つの研究室が連携したグループを形成し、教育・研究活動を展開しています。それぞれ異なる専門分野を持つ先生方が協力することで、分野を越えた学びと研究のチャンスが広がっています。
ゼミや研究活動は3研究室合同で行われており、異なる視点や考え方に触れながら議論することで、柔軟な思考力と深い理解力が自然と身につきます。また、他大学からの学生も多数在籍しており、さまざまなバックグラウンドを持つ仲間と切磋琢磨しながら、刺激的な研究生活を送ることができます。さらに、特任・客員の先生方も多数在籍しており、専門性の高い指導や研究支援を受けられる体制も整っていますこのような多様な人材が集まる環境の中で、学生は専門性を高めるだけでなく、学際的な視野を広げながら、力を伸ばすことができます。
研究を通して培った力は卒業後のキャリアにも役立つはずです。卒業生はこれまでに、
日立製作所、IHI、NTTデータ、NTTドコモ、ソフトバンク、東レ、日産化学、日立化成、コスモ石油、日揮、東京応化工業、トヨタ、ホンダ、スバル、ヒューレットパッカード、IBM、DXC Technology、CyberAgent、清水建設、日本総研など、多様な業界の企業に就職しており、研究室での経験がキャリアの大きな支えとなっています。
現在の研究グループのメンバーは、次のリンクからご覧いただけます: 研究室メンバー紹介ページ
論文・学会発表
世界に向けて研究を発信してます!!
研究室で取り組んでいる研究成果は、査読付き英文ジャーナルで多数発表されており、学生自身が筆頭著者として論文を執筆する例も多くあります。これらの論文は、学生時代の研究の集大成であり、学会発表や論文執筆を通じて、確かな研究力と発信力を身につけることができます。
また、研究活動は教員だけでなく、特任・客員の先生方による手厚い指導・サポートのもとで進められており、専門的な知識や技術を深く学べる環境が整っています。発表論文の一覧は、以下のResearchmapページに掲載されています。
研究内容の詳細に興味がある方は、ぜひ論文リストをご覧ください。
連絡先
ご質問や研究室見学のご希望などがありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。
所在地:〒236-0027 神奈川県横浜市金沢区瀬戸22-2
公立大学法人 横浜市立大学
生命ナノシステム科学研究科 ・物質システム科学専攻 ・計算物質科学部門
教授 島崎 智実
メール:tshima[at]yokohama-cu.ac.jp
※[at] を @ に置き換えて送信してください。






