赤肉・加工肉摂取と2型糖尿病リスク:日本を含む20カ国・約200万人のデータ分析
発表雑誌: Lancet Diabetes Endocrinol. 2024;12(9):619-630.
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背景
肉類の摂取は2型糖尿病のリスクを高める可能性がある。しかし、従来のエビデンスは主にヨーロッパと北米の集団に基づいたものであり、分析方法が不均一で、赤肉に焦点が当てられ鶏肉に関するエビデンスは不十分であった。
本研究では、世界中のコホートからの協力を得て、未加工の赤肉、加工肉、鶏肉と2型糖尿病との関連を分析方法をできるだけ統一して調査することを目的とした。
方法
InterConnectプロジェクトに参加した南北アメリカ(12)、東地中海(2)、ヨーロッパ(9)、南アジア(1)、および西太平洋(7)の31コホートの1,966,444人の成人を対象に、individual-participant federated meta-analysisを実施した。
コホート毎のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を肉の種類毎に体格指数(body mass index: BMI)を含む潜在的な交絡因子を調整した上で推定し、変量効果メタアナリシスにより統合した。さらに、メタ回帰により異質性の潜在的な要因を分析した。
結果
中央値10年間の追跡期間中に、計107,271例の2型糖尿病症例が特定された。コホート全体の摂取量の中央値は、未加工の赤肉で0〜110 g /日、加工肉で0〜49 g /日、鶏肉で0〜72 g /日の範囲であった。
3種類の肉の摂取量が多いほど、2型糖尿病の発生率が高いことがわかり、HR(95%CI)は未加工の赤肉100 g/日あたり1.10(1.06-1.15)(I2: 61%)、
加工肉50 g/日あたり1.15(1.11-1.20)(I2: 59%)、鶏肉100 g/日あたり1.08(1.02-1.14)(I2: 68%)であった。
北米、ヨーロッパ、西太平洋地域では正の関連が観察され、他の地域では信頼区間の広い推定となった。年齢、性別、BMIが異質性を説明するというエビデンスは得られなかった。
ほかのモデリングの仮定(固定効果メタアナリシス)の下では、鶏肉と2型糖尿病との関連の推定結果は減弱した。加工肉を未加工の赤肉または鶏肉に置き換えるモデルでは、2型糖尿病の発生率が低がると推定された。
解釈
肉類、特に未加工の赤肉と加工肉の摂取は、様々な集団にわたって2型糖尿病発症の危険因子である。これらの知見は、人の健康のために肉の消費量を減らすことが公衆衛生上重要であることを示しており、食事ガイドラインに反映されるべきである。
資金源
EU(FP7 / 2007-2013); MRC(MC_UU_00006/1、MC_UU_00006/3); NIHRケンブリッジBRC(NIHR203312)。
* individual-participant federated meta-analysis:研究ごとに分散して格納されている個人レベルの研究対象者のデータを集約せずにメタ解析(統計学的に統合)すること。