最新情報 11.02.14

TOP >最新情報 11.02.14

NMD研究グループ、山下暁朗講師(さきがけ研究代表者、微生物学)が、スペインの研究グループと共同でmRNA監視複合体の中心分子であるSMG-1複合体の立体構造解析に成功しました。

Arias-Palomo E, Yamashita A, Fernández IS, Núñez-Ramírez R, Bamba Y, Izumi N, Ohno S, Llorca O. The nonsense-mediated mRNA decay SMG-1 kinase is regulated by large-scale conformational changes controlled by SMG-8. Genes Dev. 25(2):153-64, 2011. PMID: 21245168

SMG-1はDNAの損傷や遺伝子発現エラーなどから細胞を守るmRNA監視システム(nonsense mediated mRNA decay)の中心分子であり、今後mRNA監視系の機構の理解や創薬開発に向けた研究に弾みをつける成果です。

説明: ohnosP1:Aa成果公開:1101SMG立体構造:SMG1C.jpg
mRNA上で異常翻訳停止リボソームを認識して集合活性化され、異常mRNAの検出と排除の引き金を引くSMG-1複合体(SMG-1/SMG-8/MSG-9)の活性化に伴う構造変化を捉えた。

 

研究の背景
 細胞は、ゲノムDNAにコードされた遺伝子が正確に発現されることを監視する機構をもっています。DNAにコードされた遺伝情報は、mRNAを通じてタンパク質に翻訳されますが、DNAの変異やRNAへの転写エラーに際して、Phosphatidylinositol 3-kinase–relatedprotein kinase (PIKK) 群と呼ばれる一群のタンパク質リン酸化酵素が活性化し、細胞の分裂を止めたり、細胞死を誘導したりします。これは、幹細胞やがん幹細胞の生存にとっても必須の存在です。
 PIKKの一つであるSMG-1は、mRNAの配列の異常を監視することにより、ゲノムにコードされた遺伝子が正確に発現されることを保障する機構として重要な役割を果たしています。そしてゲノムの異常に起因するあらゆる疾患(遺伝性疾患とがん)の症状に決定的な影響を与えます。一方、遺伝子変異によっては遺伝性疾患の症状を増悪させる場合があることもわかっています。さらに、最近ではがん免疫の誘導を抑制する作用があることも報告されるなど、mRNA監視系が創薬標的となる可能性が浮上しています。

 

 

大野茂男 (ohnos@med.yokohama-cu.ac.jp)
〒236-0004 横浜市金沢区福浦 3-9
Copyright (C) 2009 Department of Molecular Biology Ohno Lab. All Rights Reserved.