活動報告

   学術活動    2020.08.12

救急科専門医取得後の総合内科・総合診療研修

総合診療医を目指して -内倉医師より-

 


 私は、平成21年3月に金沢医科大学を卒業し、初期臨床研修終了後、当教室に入局しました。
後期研修3年間:教室関連施設の救命救急センターを3施設ローテーションし、主に3次救急症例を経験し、重症な症例の初期診療・集中治療を中心に研修しました。
医師6年目(入局4年目):救急科専門医の資格を取得
医師7, 8年目(入局5, 6年目):ER型の救命救急センターで研修し、ここでは主に1次・2次救急症例を経験。
医師9年目(入局7年目):教室関連施設ではない施設で、総合内科・総合診療の研修を開始。
 
Q1. なぜ総合内科・総合診療の研修を希望したのか?
 救急医学教室へ入局した後の6年間、救急医として研修を続ける中で、
“自分が救急外来で下した診断・判断は正しかったのか?”
という自分の診療能力に関する不安・疑問や、
“救急外来から帰宅した患者さんはその後どうなったのか?"
"初期診療・集中治療を終えた後に、退院・転院した患者さんの回復期・慢性期はどのような経過を辿っているのか?”
という患者さんの長期予後・転機に関する興味・疑問を感じていました。
 もともと、救急医学に加えて、内科学・プライマリ・ケアにも興味があったため、内科系の症候・疾患を幅広く経験でき、慢性期のフォローアップも経験することができる総合内科・総合診療の研修プログラムに参加することにしました。
 
Q2. どのような研修をしたのか?
 医師9年目(入局7年目)から3年間、総合内科・総合診療の研修を行いました。
2年6ヶ月は都市部の病院で病院総合医として、外来診療や入院診療、内科系1次・2次救急診療を担当し、残りの6ヶ月は地域の病院でプライマリ・ケア医としての診療を担当しました。
 研修中には、脳卒中や感染症、めまい症など、救急医としても経験する症例はもちろん、糖尿病の教育入院や内分泌疾患の検査入院、自己免疫疾患など、内科系疾患を幅広く経験することができました。
 また、外来患者さんの長期フォローアップや、高齢者施設や患者さんの自宅への訪問診療も経験することができました。地域医療の研修中には、高次医療機関に“患者さんを紹介する側”の立場を経験し、それまでの自分の振る舞いを振り返り、反省するとてもよい機会にもなりました。
 
Q3. 内科・総合診療研修をしてよかったこと
 内科学、プライマリ・ケアはとても奥が深く、3年間の研修で、
“全てが経験できた、一人前になった”
とは、とても言えません。
そんな中で、私が得た最大の研修効果は、
“今まで以上に救急診療が楽しくなったこと”
かもしれません。
 救急科と総合内科・総合診療科では、担当する症候・疾患にオーバーラップする範囲が多くあると思います。
患者さんの重症度や担当するフェーズには差がありますが、
“広く急性期を担当するジェネラリスト”
という点は共通していると思います。
 現在私はER型の救命救急センターで勤務していますが、入院後に必要となる検査・治療や、救急外来から帰宅した後に、外来診療の場で必要となることを意識しながら初期診療に当たるように心がけています。
 これは多くの救急医にとって当たり前のことなのかもしれませんが、以前の私には足りなかった部分でした。総合内科・総合診療の研修を経て、この視点を得ることができたことは、私にはとても大きな収穫でした。
 
Q4. 将来の展望に関して
 救急外来は、いろいろな症候・疾患・背景をもつ患者さんが受診します。
社会の高齢化が進み、多数の基礎疾患をもつ患者さんや、複雑な社会的問題を抱えた患者さんが受診する機会が増えています。これからの救急医療の現場には、身体問題だけでなく、精神的問題・社会的背景などを総合的に診る総合診療の要素が必要になると考えています。
 自分の成長のために、救急医学や内科学、プライマリ・ケアの知識・技術を高める努力を続けることはもちろんですが、救急医と総合診療医の架け橋となり、
“総合診療マインドを持った救急医”“救急マインドを持った総合診療医”
の育成に関わることが出来ればと思っています。その結果、より良い救急医療が行えるようになることが、私の今の目標です。

 
 
 
 
 
 
 
 
教育カンファレンスのために来日されたローレンス・ティアニー先生と
 
 
 
 
 
 
 
地域研修中にご指導をいただいた西伊豆健育会病院の仲田和正先生と