研究名
②異常凝集タンパク質依存的に変容する神経回路の同定 認知症全般(AD連続体・non-AD)の疫学的画像研究
「物忘れが心配になってきた方」「認知症と診断されている方」の脳で起きていることを新しい画像技術で調べます。
「将来認知症になるのが心配」という健康な方にもご参加いただけます。
研究目的
健康な方、認知症の方、睡眠障害の方など様々な方で、脳内のAMPA受容体やアミロイドβ、タウの密度や分布を測定し、その経時的な変化と症状の関連を調べます。
研究紹介文
認知機能低下や運動障害の原因の1つとされている異常タンパク質であるアミロイドβやタウは、どのような方に、どのようなパターンで蓄積するのかについてや、神経細胞同士の連絡役を担い記憶や学習において重要な役割を担うAMPA(アンパ)受容体がどのような分布をしているかについて、PET-CTという機械を用いて測定します。また、経過を追いながら様々な脳機能とこれらの分子の密度変化がどのような関係を示すかについて、それぞれの方で縦断的に評価します。
研究の背景
ヒトの脳は加齢に伴い構造や機能の変化が生じ、結果として健康な方でも物忘れをしてしまう、若いころのようには体を動かせなくなる、といった生活の中での変化が生じます。脳の加齢による変化に関わる重要な分子として、我々はAMPA受容体やアミロイドβ、タウという分子に着目しております。
AMPA受容体は記憶や学習において重要な役割を担う分子であり、放射線を用いてその密度や分布を測定するPET-CT検査を用いた研究で健康な方でも年齢帯によってその密度・分布のパターンが異なることが判明しております(未発表データ)。しかし、同じ方で経時的にPET-CT検査を行ったものではなく、例えば「物忘れがひどくなった」「耳が遠くなった気がする」「歩く速度が遅くなった」といった個人の症状や訴えを説明することには限界がありました。そこで、本研究では参加された方個人個人について、経時的にPET-CT検査でAMPA受容体密度・分布を測定し、その変化を評価することを目的としております。
また、アミロイドβやタウは加齢に伴い神経細胞に蓄積する異常タンパク質で、認知症など様々な神経疾患の原因として知られておりますが、AMPA受容体が働く場であるシナプス(神経細胞同士の連絡の場)の異常がこれらの蓄積によって生じているという報告もあります。そのため、これらの分子もPET-CT検査を用いて測定し、様々な脳機能の変化とこれらの分子の分布・密度を経時的に評価して参ります。
関連する過去の研究
Hsieh H., et al., AMPAR removal underlies Abeta-induced synaptic depression and dendritic spine loss. Neuron. 52(5):831-43. 2006 https://doi.org/10.1016/j.neuron.2006.10.035
Wei, W., et al. Amyloid beta from axons and dendrites reduces local spine number and plasticity. Nat Neurosci 13, 190–196. 2010 https://doi.org/10.1038/nn.2476

