水素吸蔵合金という物質を知っていますか?
近年、水素は化石燃料に変わる次世代エネルギー、しかもクリーンなエネルギーとして注目を浴びています。しかし、皆さんも知っているように、水素は爆発性が高く、非常に取り扱いの難しい気体です。そこで登場したのが水素吸蔵合金です。水素吸蔵合金とは、その名の通り水素を蓄えることの出来る金属のことで、一般的に水素圧や温度を変えることにより制御されます。水素を蓄える密度は従来のガスボンベの約6倍と言われています。また水素吸蔵合金は水素を吸蔵するだけでなく、吸蔵・放出する際に変化する圧力や温度を利用して、下記に示すような様々な応用が期待されています。
金属への水素吸収・放出過程
一言に水素吸蔵と言っても、そのプロセスは細かく分かれています。まず、水素が合金に近づき吸着することに始まり、合金内に拡散・吸蔵され、使用の際には放出されます。実際に水素吸蔵合金を設計する際、この各吸蔵プロセスにおける水素や合金の状態を充分に把握していないと、思うような結果が出せないことがほとんどです。この中でも拡散・吸収の現象は、様々な方面から研究が進められてきました。しかし、吸収・放出が進む際の固体表面における吸着の過程と言うのは、いまだに充分に明らかにされていません。
本研究室では、分子軌道計算により、さまざまな金属表面での水素分子の解離・吸着過程、吸着面依存性、金属による水素吸蔵特性の違いを理論的に解析しています。