38回日本行動療法学会(伊藤翼)

本学会に参加した主な目的としては、介入技法の幅を広げることと、行動の理解の仕方を学ぶことでした。

より実験・基礎心理学の考え方に近い行動療法や行動分析の考え方は、自殺企図という行動を捉える際に有用であり、治療や関わりの中で治療者だけが自殺企図という行動を理解するのではなく、治療を受ける側が自らの行動をセルフモニタリングできるようになることで、自殺予防・再企図防止に繋がると思いました。

また、今大会のシンポジウムにおいてブリーフサイコセラピーと認知行動療法の接点ということがテーマとなっていました。治療を受ける側が自らのリソースを用い、最終的には自分で自分に合った方法で問題を解決し、変化を起こすということがシンポジウムで語られていました。心理療法の考え方や技法が正しく用いられれば、当事者たちのセルフケアの有用なツールになり得るだろうと思いました。

そして、当院救命センターにもアルコールや薬物、ギャンブル依存の方が運ばれてくることもあり、依存/アディクションに対する認知行動療法というシンポジウムが今大会で最も印象的であり、心理教育に使えそうな知識を多く得ることができました。現在、日本では、アルコール依存症80万人、問題飲酒者600万人、覚せい剤取締法違反12千人、喫煙者2200万人と、依存傾向にある人が数多く存在しているようです。しかし、アルコール依存治療を受けているのは4万人、違法薬物での逮捕者は刑罰のみで治療なし、喫煙は最近ようやく保険治療になったというくらいで、未だ十分な対応がなされているとは言えない状態のようです。こうした依存傾向は自殺にも結びつくことがあり、予防的な観点からも、依存傾向がある方への薬物治療/自助グループ以外の新たな対応を考えていかなければいけないと思いました。

行動療法は認知療法/認知行動療法とともにエビデンスのある療法であり、また心理臨床のみならずケースワークにも使えると思われます。行動療法学会で得られた知識や技術を救命センターでの臨床業務に応用していきたいと思います。

横浜市立大学大学院医学研究科精神医学部門・横浜市立大学附属市民総合医療センター 特任助手・臨床心理士 伊藤翼