+ 横浜市立大学 大学院医学研究科 顎顔面口腔機能制御学

横浜市立大学 大学院医学研究科 顎顔面口腔機能制御学

横浜市立大学附属病院 歯科・口腔外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 歯科・口腔外科 矯正歯科


<ナビゲーションシステムを用いた安全・確実な手術>
担当:岩井俊憲

・近年,安全・確実な手術が求められており,脳外科や整形外科ではナビゲーションシステム(カーナビのように位置をモニター上で確認できるシステム)が用いられてきましたが,口腔顎顔面外科領域ではいまだ導入されていないのが実情です.当科では2005年よりナビゲーションシステムを積極的に導入し,口腔顎顔面領域において安全・確実な手術を行っています.これまで可動性のある下顎への応用は困難とされてきましたが,下顎における手術もマウスピースを用いることで可能としています.
・ナビゲーション手術は最先端の手術であり,口腔顎顔面領域に存在する重要な血管や神経などをモニター上で確認することができるため,手術合併症(出血や神経麻痺など)を減らすことが可能です.
・内視鏡と併用することで,小さな切開でも安全に手術を行うことが可能になります.
ナビゲーションシステム

手術風景

ナビゲーションシステムのモニター画像.十字の中心が手術操作をしている位置.



<内視鏡を用いた低侵襲手術>
担当:岩井俊憲

・近年,外科手術は腹腔鏡手術を代表に低侵襲手術が普及してきていますが,口腔外科領域ではいまだに大きな切開を行うため,患者様の満足度の高い治療が提供できていませんでした.しかし,当科では2005年より低侵襲手術を目指し内視鏡やナビゲーションシステムを積極的に導入することで,非切開手術(自然の孔からアプローチする),完全口腔内手術(皮膚切開を行わず口腔内切開のみで手術を行う)やミニマム創手術(皮膚の切開をできるだけ小さくして手術を行う)を実現させてきました.これらの手術は合併症(顔面神経麻痺や皮膚瘢痕など)を減らすことができ,低侵襲手術として今後の普及が期待されています.

現在当科で行っている内視鏡支援手術

下顎骨関節突起骨折観血的整復固定術
下顎骨関節突起骨折(耳の前にある顎の関節の骨折)に対する治療には,保存的治療と外科的治療の2つの方法があります.保存的治療はゴムやワイヤーなどで顎を数週間固定して治療します.手術を行わなくてよいといった利点がありますが,治療期間の長さと開口障害が生じること,さらに折れた骨片は元の位置には戻らないといった欠点があります.これに対し,外科的治療では治療期間は短期になるものの,皮膚を切開するため顔面神経麻痺や皮膚の瘢痕(傷)が術後合併症として問題になることがあります.そのため,われわれは合併症を生じさせず,治療期間を短縮させるため,内視鏡支援下による固定術を導入しています.当科の担当医はこの手術のパイオニアであるドイツのフライブルク大学に留学し,研修を受けているため,2005年よりこの低侵襲手術を行っています.口腔内からアプローチして内視鏡下で折れた骨片を固定できるため,顔面神経麻痺は生じず,皮膚に傷は残らないといった患者満足度の高い治療が可能となっています.


<左関節突起骨折の3D-CT写真>

<内視鏡画像(骨片の確認)>

<内視鏡画像(ドリリング)>

<内視鏡画像(プレート固定)>

唾石摘出術
唾液(つば)は耳の前にある耳下腺や下顎の内側にある顎下線で作られ,口腔内に排出されますが,唾石(唾液の出る管にできる石灰化物)が生じると唾液が出にくくなり,唾仙痛(食事時の唾液腺の疼痛)が生じることがあります.時に感染が生じ,顔が腫れるなどの症状が出現し,反復することが多いです.このような場合には唾石を摘出する必要がありますが,従来から行われている口腔粘膜や皮膚を切開する方法では,舌神経麻痺(舌がしびれる)や顔面神経麻痺の可能性がありました.そこで,われわれは唾液腺開口部(唾液の出口)から細い内視鏡を挿入し,唾石や粘液などの障害物を確認し,唾液の出る管の中からそれらを摘出する内視鏡下摘出術を行っています.


<唾液腺内視鏡>

<導管内内視鏡画像>

<導管内内視鏡画像>中央に唾石を認める.

顎下腺摘出術
通常,顎下腺摘出術は5~6cmの皮膚の切開で行われますが,顔面神経麻痺や皮膚の瘢痕(傷)が術後合併症として生じた場合に問題となります.そのため,われわれは低侵襲手術として内視鏡を用いることで,1.5~2cmの切開で顎下腺摘出術を行っており,皮膚の傷はほとんど目立たず患者満足度の高い治療が可能となっています.


<17mmの皮膚切開>

<内視鏡画像>

<顎下腺摘出>

<術後の傷の状態>

歯根端切除術
歯根囊胞(歯の根の先に膿の袋ができる病気)は外科的に摘出され,歯根端切除・逆根管充填術(根の先を削り,
根の後ろから詰め物をします)が行われますが,臼歯部(奥歯)では視野の問題でその適応が困難とされているため,抜歯せざるをえない状況でした.そのため,われわれはできる限り自分の歯を残し使用し続けることを目指して,内視鏡を導入しました.内視鏡を使用することで従来では観察困難であった,臼歯部でさえ良好な術野を確保することができるようになり,現在では安定した治療結果が得られています.


<X線写真>

<内視鏡画像>

頸部病変(囊胞・腫瘍)摘出術
頸部に生じた病変(囊胞:鰓囊胞などや腫瘍:リンパ管腫など)を2~3cmの小切開で内視鏡下に摘出しています.
従来法に比べ傷跡は3~5分の1程度で行えるため,低侵襲な治療が行えています.

<2cmの皮膚切開>

<内視鏡画像>

<術後の傷の状態>

下顎骨骨切り術
下顎骨骨切り術は深部で骨を切る必要があり,時に十分な術野で行えないことがあります.下顎周囲には重要な神経や血管が存在しており,それらを損傷することなく手術を行う必要があります.そのため,内視鏡を用いることで良好な術野で安全な骨切りを行っています.

<内視鏡画像(下顎枝矢状分割術)>

<内視鏡画像(下顎枝垂直骨切り術)>