NEUROSURGERY
治療実績
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良性脳腫瘍
脳卒中外科
脊椎・脊髄
てんかん
機能的脳外科
外傷ほか
手術実績
脊髄脊椎外科 主な担当 :  村田 英俊

疾患について

脊髄脊椎疾患には変形性頸椎症(図1、4)、頸椎椎間板ヘルニア(図5)などの頸椎疾患、頭蓋頚椎移行部疾患、腰部脊柱菅狭窄症(図9)、腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患、脊髄腫瘍(図11、12、13、14、15)や脊髄動静脈奇形、脊髄損傷、先天奇形(図8)などがあります。
図1 頸部脊柱管狭窄症
術前では脊髄の圧迫を受けています(矢印)。
術後では脊髄の圧迫は解除されています(矢印)。
術 前
術 後
症状

症状の出現の仕方は患者さんごとに様々ですが、手または足のしびれ・いたみ、ぎこちなさ、力が入りにくい、歩きにくさを感じたら、まず脊椎、脊髄疾患を疑い、まず脳神経外科の受診をおすすめします。 勿論、脳疾患も念頭にいれ十分にチェックを行います。
治療目標

脊椎脊髄疾患は生命に関わることは少ない疾患です。 むしろ患者さんを悩ます症状を取り去り、仕事や日常生活に難なく復帰していただくことが治療の目標です。 それだけに合併症を起こさない徹底した安全管理が大切と考えています。
 一方で脊髄腫瘍などでは、生命にかかわる場合があります。生命の危機を回避しつつ、機能を可能な限り温存できるよう治療を行っていきます。
当科の方針・特徴

当科での脊髄脊椎疾患の手術治療には顕微鏡・拡大鏡を用いたマイクロサージャリーの技術を全面的に用いております。合理的でマイクロサージェリー技術が十分発揮できる手法を開発、採用し、従来にくらべ侵襲が少なくなるよう工夫しています。
マイクロサージェリーを最大限に活かし合併症を起さないことを第一に考えた術式工程を確立し、専任のスタッフ(日本脊髄外科学会指導医)を配し、 徹底した安全管理をおこなっています。 手術成績に関して、各疾患に対しての有効性、安全率などのデータは常に開示できる体制としています。 (なお当院は脊髄外科学会訓練施設に認定せされています)
入院治療の実際

多くの疾患はクリニカルパスと呼ばれる検査・治療を詳細に明示した診療工程表を疾患ごとに用い、綿密な治療を行います。 ほぼ例外なくこの計画表どおりに治療が進行しています。 通常の全入院日数は8-10日で、術後1週間で抜糸、退院となります。 仕事が忙しい方や、若年の方などは術後4日目で退院し、外来で抜糸を行っています。
患者さんからは「どうしてそんなに短い入院ですむのですか」「首や腰の術後は長くリハビリが必要なのではないですか」という質問をよくお受けします。
実際に、上記の通りの入院日数で、通常独歩で入院してきた方のほとんどは、手術に伴うリハビリは必要としません。
それは4つの大きな理由があります。
1)   手術を安全に行う工程を確立していること、
2)   筋肉、骨の基本構造をほぼ完全に温存し、再建する手法(筋構築的手術)を用いていること
(図2・3)
3)   脊髄をはじめとした神経組織を極力痛めないマイクロサージェリー技術を用いていること、
4)   クリニカルパスを用い、綿密な周術期管理を行ない、プログラム上、無理無駄な入院がないこと
です。そのノウハウ、及び、技術の開発、普及にあたっては、全国の脊髄専門施設と連携をとり、日々、安全で患者さんに優しい手術を求めています。
図3 現在当院で行っている頸椎後方手術です。
筋肉を骨構造から一切切離しない方法(筋層構築的手術)では、術前の筋肉の配列がほぼそのままに保たれます。筋肉の萎縮もほとんどありません。術後の首の姿勢もきれいに保たれ、頸部痛も大きく軽減することができます。この手法は、頸椎変性疾患だけでなく、胸椎、腰椎の病変、脊髄腫瘍に至るまで、応用しています。
術 前
術 後
外来診療

外来ではしびれや手の使いづらさ、歩行障害などの原因を、神経学的所見を含めて詳細に検索します。 勿論、単純レントゲン、MRI、CTをおこない、疾患によってはシンチグラム、PET、神経伝導速度などの検査を行います。 MRI、CTではっきりしない時は入院のうえ脊髄造影検査を行うことがあります。 いずれにしても、まず保存的治療(手術をしなくてすむ方法:薬や理学療法)を考慮します。 それでもなお症状の改善が得られない場合には、患者さんの生活度にあわせて適切な手術治療を提案していきます。 脊椎脊髄疾患は通常、癌のように生命にかかわるような病気であることは稀ですので、治療によって、患者さん本人がいかに満足をして頂けるかを、私たちはいつも念頭において治療にあたっています。
術後の経過観察は、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、2年、3年、・・・と長期でも欠かさず責任をもって診ていきます。
当科における治療実績

2012年3月までの最近過去9年間で、専任スタッフが携わった脊髄脊椎手術件数(他施設での手術を含む)は955例で頸椎548例、腰椎316例、胸椎76例、末梢神経13例です。
<脊椎変性疾患・末梢神経>
頸椎
変形性頸椎症、頸部脊柱管狭窄症、頸椎椎間板ヘルニア、後縦靱帯骨化症などが代表的なものです。手術の方法は前方からの方法と後方からの方法とさらに選択的手術があり、病態に合わせて選択しています。当科では合理的でマイクロサージェリーが十分発揮できる手法を開発、採用し、より侵襲が少なく、安全におこなえるようにしています。いずれも入院期間は術後4〜7日が目安です。
【頸椎前方手術】
1〜2椎間の前方からの脊髄圧迫に対して行っています。
1) 頸椎前方除圧固定術(図4):前方からの圧迫因子(骨棘や椎間板)で脊柱管が強く押されているときに行います。圧迫成分となっている椎間板や骨棘を摘出して、圧迫を取り除いたのち、チタンケージ(チタンでできたかご)を挿入して、頸椎のならびをよくして固定します。このチタンケージの中に自家骨を十分充填し、自分の骨で癒合させるようにします。この手術もマイクロサージェリー技術が必須で、脊髄圧迫除去を十分に行うとともに、外側の神経根の除圧も十分に行います。
図4 頸椎前方除圧固定術
頸部に首のしわにそって4cmぐらいの皮切をおきます。
CT:圧迫が取れるだけでなく、頸椎のならびもよくすることが可能です。
椎間板を除去して、圧迫成分を取り除きます。そこに自分の骨を充填したかご(チタンケージ)を挿入して固定します。
MRI: 圧迫がとれているのがわかります。
2) 頸椎前方選択的除圧術(図5):外側の神経根や脊髄の一部が圧迫をうけている場合に、選択的にその箇所のみを除圧するという、理想的な手術です。当科独自の手術法です。正常椎間板や骨構造は温存するため、ケージや自家骨などの補填の必要はありません。皮膚切開の後、椎体に5-7mmの孔をあけて除圧します。椎骨動脈という脳へいく大切な血管の近くでの手術となることが多く、また視野も限られているため、通常の前方固定に比べてやや複雑になりますが、マイクロサージェリー技術を駆使すると安全かつ容易となります。
図5 頸椎前方選択的除圧術
術 前
頸椎椎間板ヘルニアの症例です。矢印のように、外側でかなり椎間板が飛び出して脊髄と神経根を圧迫していました。
術 後
椎体に5mm程度の穴をあけ、後方の椎間板に向かって顕微鏡下で掘り進めます。こうすることによって、骨構造を不安定にせず、摘出することができます。
術後、写真のように椎間板ヘルニアは摘出されています。人工的な移植は必要ありませんし、頸椎のうごきも術前と同じく保たれます。ちなみに開けた穴は自然に骨新生によって埋まっていきます。
【頸椎後方手術】
筋層構築的頸椎椎弓形成術(図6、図7、図1、図3):脊柱管拡大術をはじめとした頸椎後方手術の一つです。いっさい筋肉を骨から剥がさないで脊柱管を拡大するという、ある意味究極的な後方手術法です (Kim & Murata, J Neurosurg, 2007)。顕微鏡または拡大鏡を用いたマイクロサージェリーを後方手術に適応することによってはじめて可能となります。術後筋萎縮はなく、頸部痛の軽減、術後頸椎のならびも保たれることが証明されています。このアプローチは頸椎症だけでなく、脊髄腫瘍(図11、図14)や奇形(図8)などにも応用でき、当科では基本アプローチとなっています。
図6 筋層構築的後方手術の方法
1〜9の順:靱帯と骨のみを切開し、人工骨(ハイドロキシアパタイト)を挿入して、骨と靱帯で再建します。筋肉は骨から剥がさずに手術が可能です。
図7 筋層構築的椎弓形成術の術後例
術直後
術直後、自分の骨が人工骨に張り合わされて、再建されます。
術後一年
術一年後では自分の骨癒合能力によって、人工骨が自ずと自分の骨に統合され、安定化します。
図8 キアリ奇形と呼ばれる先天奇形の一つです。脳の一部(小脳扁桃)が脊柱管に落ち込み(A矢印)、脳と脊髄の水(髄液)の流れが妨げられ、脊髄の中に水が溜まってきます(脊髄空洞症)(A丸印)。後頭骨下部と第一頸椎を拡げて髄液の交通がつくようにします。小脳扁桃も圧迫がとれ、脊髄内に溜まった髄液は排出されてきます(B丸印)。頸椎手術(図3)と同様のテクニックを用いて、筋肉を一切切離せず、筋骨格を完全に再建します(C・D・E)。あえて傷を小さくしているわけではありませんが、無用な筋肉の剥離が無いため、3cm程度の傷で済みます(E)(従来では6cm以上の傷が必要でした)。従来あった痛みもほとんど生じません。
A
B
C
D
E
F
【合併症】
前方手術、後方手術合わせて、一過性の運動知覚異常を生じた例(一時的なもの)が0.51%、脊髄症状または、降圧後の遅発性神経症状(遅発性C5麻痺など)のために入院期間を延長した例が0.7%ありました。 (リハビリ後独歩退院されました)一般に比して合併症はかなり低いと思われますが、手術においては、予想しえぬことに遭遇することも確かです。常に、手術の正確性と徹底した安全管理をもって最善結果がえられるよう臨んでいます。

頭蓋頸椎移行部
頭蓋頸椎移行部とは頭と首をつなぐ境目の部分をいいます。この場所は頭部を自在に動かすために複雑な関節構造をしています。この部分に腫瘍ができたり、関節が緩み(不安定になり)脱臼を起こすと、脳幹や上位頸髄といった生命に関わる神経機能に影響を及ぼします。症状が重篤になると、四肢麻痺や呼吸不全を来します。
この部分は可動域が高いために、外傷をうけやすく、また様々な奇形、炎症疾患(リウマチなど)、腫瘍を生じます。脊椎・脊髄のみならず、頭蓋・脳の知識が必要で、脳神経外科的知識が必須となります。
治療として各々の病態にあわせて、除圧術(前方、後方)や固定術を行います。頭蓋底陥入症(頸椎の一部が頭蓋骨のなかに陥入してしまった状態)や脊髄腹側腫瘍(斜台・歯突起腫瘍)では、固定術に加えて口腔内から切除する場合もあります(経口的切除術)。
当科では、いかなる病態にも対応できるようにしており、通常の後方除圧・頭蓋頸椎固定、環軸椎固定術はもちろんのこと、マイクロサージェリー技術を最大限に活かして経口的切除も積極的に用いております。

環軸椎亜脱臼の症例
もともと環椎が前方へと脱臼しており、それが増悪して不全四肢麻痺となった症例です。上位頸髄が強く挟み込まれています(図A矢印)。
まず、後方手術にて、除圧し、頭蓋頸椎固定術を行いました(図C)。その後、前方から(経口的に)歯突起切除を行いました。術後頸髄は完全に圧迫が解除されています(図B ※)。無事、復職されました。


高度頭蓋底陥入症の症例
頸椎の骨が頭蓋内に高度に陥入した症例です。軸椎(第2頸椎)の歯突起が延髄に陥入し、延髄が持ち上げられています(図A,B矢印)。このような症例では後方からの除圧、固定術だけでは治療困難で、前方除圧(経口手術)が必須となります。まず、頭蓋頸椎固定術を行い、安定性を得た後(図E)、経口的に歯突起切除を行いました。術後頸髄の圧迫は解除されています(図C,D矢印)。術後、呼吸困難としびれは改善しました。
腰椎・胸椎
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、胸椎横靱帯骨化症が代表的なものです。脊椎が安定か不安定かによって手術のコンセプトがかわってきます。また最近では多椎間病変でも筋層を温存して除圧・摘出することが可能となりました。腰椎すべり症や分離症などで腰椎が大きく揺らいで、それが症状の原因となるときは、脊椎固定を行います。
【除圧術】
単椎間病変
マイクロラミノフォラミノトミー(micro-laminoforaminotomy)(図9a):1〜2椎間の病変において筋層を剥がさないで、圧迫部位のみを取り除く、当科独自の方法です。椎間板ヘルニアや腰椎狭窄症に適用されます。外側型ヘルニアなども筋層間を利用して筋肉を切らずにアプローチします。マイクロサージェリーによって初めて可能になる手技です。筋骨格基本構造は全て温存されるため、従来に比べて術後腰痛、骨不安定性ははるかに低減しました。入院期間は術後4〜7日が目安です。
術 前              術 後

図9a 腰部脊柱管狭窄症
歩行時の下肢しびれ(間歇性披行)を訴えていた方。術前(矢印で狭窄しています)、術後、顕微鏡下除圧術で脊柱管は開大しました(矢印が除圧部)。1椎間につき3cmの皮切です。
多椎間病変
筋層温存腰椎椎弓形成術(図9b)2椎間以上にわたる多椎間病変においても、当施設で開発した骨インプラントを用いて、全ての筋層、骨構造を温存する手術(筋層構築的手術)を行っています。 多椎間腰部脊柱管狭窄症や胸腰椎部脊髄腫瘍において、この筋層温存棘突起椎弓形成術を基本術式としています。これらも顕微鏡または拡大鏡を用いたマイクロサージェリーで行うことによってはじめて可能になります。入院期間は術後7日が目安です。
図9b 腰部脊柱管狭窄症(多椎間) 61才の男性で、強い腰痛、歩行時の下肢しびれ、いたみで来院された方です。 第2腰椎から第5腰椎までの広範囲狭窄を認めました(矢印)。筋層温存椎弓形成術を行い、脊柱管は開大し、馬尾神経の圧迫もとれました。 術後脊柱管周囲の筋肉もきれいに保たれています(*多裂筋、**最長筋)。 従来の方法(椎弓切除)では、筋肉が変性してしまっていることがわかります(→:多裂筋が変性し、筋層レリーフが消失してしまっている)。

【脊椎固定術】
腰椎変性側弯症、腰椎すべり症、分離症など、腰椎のならびが非常に悪かったり、腰椎の揺らぎが大きいとき、除圧後に脊椎固定を行います。椎体間固定と後方固定があります。固定する範囲とその方法は、病態に合わせて選択します。病態によりますが、術後3日間安静、その後歩行をゆっくりと開始します。固定の安定性を確認するため、入院期間は術後11〜14日です。 脊椎を大きく開創せずにすむ、椎弓根スクリューシステムを導入し、固定術もより低侵襲かつ簡便となりました。症例に応じてこれらも選択しています。
図10 腰椎分離すべり症の症例:下肢のしびれとともに体動時の激烈な腰痛がありました。
術 前
 
術 後
腰椎4〜5番ですべりが見られ、脊柱管狭窄が見られます。手術:圧迫除去後、椎体間固定、椎弓根スクリューにて固定しました(TLIF)。術後、腰痛、下肢しびれは消失しました。
CT側面(椎体間固定)
 
レントゲン側面(椎体間固定、椎弓根スクリュー)
 
CT(椎体間固定)
CT(椎弓根スクリュー) この手術も筋層をなるだけ剥がさないように、筋層間からスクリューをうったり、椎体間ケージを挿入したりしています。
【合併症】
一時的な下肢の痺れ感を生じた例が2例(1.1%)、臀部しびれが残存している方が再手術例で1例(0.57%)あります。下肢麻痺や歩行障害を呈した例はありません。合併症のために入院期間が大幅に延長した例はありません。しかし、一般的には下肢麻痺をはじめとして、さまざまな合併症・後遺症が報告されています。当科では、今後も、手術の正確性と徹底した安全管理をもって臨んでいきます。
<脊髄腫瘍> 当院は脊椎腫瘍の症例が多いのも特徴です。アプローチは脊椎変性疾患と同じく、極力筋骨格系に配慮した方法で行います。脊髄腫瘍には脊髄自体の中にできるものと、脊髄の外にできるものがあります。きちんと摘出し、一方で脊髄機能を極力温存するためには、最も精緻な神経外科的マイクロサージェリー技術が不可欠です。
【硬膜内髄外腫瘍】
脊髄実質の外にでき、脊髄を圧迫する腫瘍です。多くは良性腫瘍です。神経鞘腫(図11a,b)、髄膜腫、転移性脊髄腫瘍などがあります。脊髄に損傷を与えず、精密に腫瘍をはずしていくのが大きなポイントです。これまで、幸い、目立った合併症無く、9割以上の症例で全摘出可能でした。 術後の後遺症のため入院期間が延長した例はありません。入院期間は術後7〜10日が目安です。
図11a 脊髄腫瘍(神経線維腫)の症例です。図3と同様、筋肉を一切切離しないテクニックを用いて摘出後もきれいに再建されます。
術 前
術 後
図11b 左上下肢のしびれ、筋力低下で受診された方です。頸椎3?4レベルに硬膜内から硬膜外(椎間孔外)にわたる長径6cm大の腫瘍があり、頸髄を強く圧迫していました(術前A、B矢印)。後方から腫瘍を全摘出しました(術後C,D矢印)。術後神経症状は、改善し復職しました。

図12 腰部脊柱管硬膜内腫瘍
術 前
術 後
巨大な腰部脊柱管腫瘍(傍神経節種)
75才の女性。歩行・起立不能で来院されました。
手術(亜全摘)を行い、元通り元気に歩けるようになりました。
【脊髄髄内腫瘍】
脊髄内部にできる腫瘍です。良性から悪性のものまであり、星細胞腫(図13)、上衣腫(図14)などが代表的なものです。脊髄は無数の細かな神経がすきまなく走っているため、脊髄を切り開いて内部を操作することは一般には困難とされています。 しかし、当科では摘出が望ましければ、積極的に髄内腫瘍の手術を行っています。髄内腫瘍は最も精緻なマイクロサージェリー技術が要求とされますが、その進歩によって、良性髄内腫瘍の多くでは、ほとんどの神経機能を損なわずに摘出が可能となっています。術前の障害が少ない患者さんでは、 ほとんど元の職場または生活に復帰するまでに回復しています。治療水準としては、歩いてきた患者さんは、原則として歩いて退院する水準を基本としています。 画像診断技術、術中モニタリング技術の向上に伴い腫瘍と脊髄内神経走行の関係も判別可能となってきました。このため多くは後方から腫瘍を摘出しますが、治療技術の進歩にともない、腫瘍局在によっては脊髄前方から安全に腫瘍を摘出することも可能となりました。
腫瘍の大きさ、部分、良性・悪性など症例によって異なりますが、入院期間は通常術後2〜3週間が目安です。
悪性髄内腫瘍の場合は脊髄機能の問題だけではなく直接生命にかかわります。その悪性度により手術に続いて、化学療法、放射線治療などを行い、完治を目指します。
腫瘍以外の脊髄髄内病変(結核、サルコイドーシス、治療抵抗性脊髄炎など)に対しても必要な場合には生検術を行い、的確な診断をえます(図15)。神経内科と協力して治療に当たっています。
脊髄髄内腫瘍によって生じた症状は回復はきわめて困難といえます。すなわち症状が進めば進むほど不利になります。良い神経・脊髄機能を保つためには、早めの治療が望ましいとされています。
治療の困難さと頻度の少なさのため当院のように脊髄髄内腫瘍を集中的に治療する病院は多くないのが現状です。脊髄髄内腫瘍や、摘出困難と診断された例がありましたら、どうぞご相談ください。
図13 脊髄髄内腫瘍(星細胞腫)の症例です。術後8年経過した現在、症状の悪化、腫瘍の再発は認められません。
術 前
術 後
図14 頸髄髄内腫瘍(上衣腫)
術 前
術 後
筋層構築的椎弓形成
頸髄髄内腫瘍(上衣腫)
42才男性。脊髄内のほとんどを占拠する大きな腫瘍で、脊髄は薄皮一枚で残された状態でした(A)。マイクロサージェリー技術を駆使し、全摘出しました(B)。リハビリの後、独歩退院し復職しました。この腫瘍摘出の際も筋肉を一切切離しないテクニックを用いて骨格を再建しています(C)。
図15:頸髄血管芽腫 両上肢のしびれ、歩行障害で来院された方です。頸椎2?3レベルの頸髄内によく造影される腫瘍があり、脳幹から胸髄まで広範に脊髄浮腫を伴っていました。 手術により腫瘍を摘出しました。腫瘍は血管芽腫でした。術後、脊髄浮腫は改善し、症状はわずかなしびれのみとなり、復職しました。
術 前
術 後
図16:51才の男性で、進行する四肢麻痺で他院神経内科より紹介を受けました。脊髄全体が著明に腫脹し、内部に小出血を伴っていました(治療前)。脊髄生検術と椎弓形成術を行いました。「壊死性脊髄血管炎」とわかり、神経内科にて免疫抑制剤治療を行いました。確定診断が得られたことで、適切な薬剤が選択でき、 治療効果は著効しました。脊髄はほぼ正常に回復し、日常社会生活に復帰できました。
術 前
術 後
最後に

脊椎脊髄外科治療で一般にいわれている事例に比べ、当院では合併症発生率はかなり低いものと思われ、入院期間も短く、術後の満足度は高いものと認識しています。 神経を扱う専門家として、神経外科技術・コンセプトを十分に生かし、神経は勿論のこと、筋肉、骨構造(脊椎)、靱帯の操作に至るまでも、マイクロサージェリー技術を駆使して治療にあたります。(図3・4・5・7・8)
手または足のしびれ・いたみ、ぎこちなさ、力の入りにくさ、歩きにくさを感じたら、一度、当科へご相談ください。
日本脊髄外科指導医 村田英俊
当院は日本脊髄外科学会訓練施設に認定されています

脊髄脊椎外科・しびれ外来を受診される方へ
※すでに他院を受診されている方は、診療情報提供書(紹介状)をご持参頂けると幸いです。待ち時間を少なくし、診察がスムーズに進みます。また、病診連携室にて診察予約もできます。

診療に関するお問い合わせ  045-787-2800 横浜市立大学病院 外科外来(内線3055)

病診連携・予約お問い合わせ: 045-787-2800 横浜市立大学病院 病診連携室(内線8995)


脳神経外科 脊髄脊椎・しびれ外来 担当 村田英俊

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