これからの時代に、臨床麻酔科医は、はたして学位は取った方がいいのでしょうか?
また、大学院には入った方がいいのでしょうか?
医科学者としての興味を、満足させることが出来る。
基礎研究を遂行する際に行うプロセスが、後の臨床麻酔や臨床研究の組み立ての、良いトレーニングになる。
研究を行うことで、新鮮な視点で日々の臨床をとらえ直すことができる。
研究の結果として学位を得ることができる。学位とは麻酔専門医などと同様に、一種の資格であり、
持っていれば就職時の書類選考などで有利に働く可能性がある。
特にアカデミックポジションで、働いていきたい人にとって学位は必須となっている。
研究生として研究を行い、査読付き英語論文の筆頭著者になった上で、医学部卒業後8年、
そのうち大学で2年以上(研修医の期間は半分と見なす)の勤務歴があるか、研究生(有料)として2年以上経過している者が、審査の上取得できる学位。
臨床で働きながら研究も行い、学位が取れる有利な制度。
※ 問題点
学位取得まで最短でも、初期研修終了後6年かかる。
論文として要求される研究内容が以前より高度化しているため、結果を出すのに以前より時間がかかる傾向が見られる。
家庭の事情などで、研究が継続できなくなってしまう危険性がある。
⇒ 学位取得の確実性にかける。
初期研修終了後、いずれかの時点で大学院に入学し、学位論文を作成・審査の後取得できる学位。
最短初期研修終了後4年で学位取得が可能であるが、場合によっては麻酔標榜医、 麻酔専門医の取得が遅れる状況も出てくる。
(例えば初期研修終了後直ちに大学院に入った場合)
後期研修の内最初の1〜2年間を、通常のローテーションで廻り、2〜3年目から大学院に入学する。
最初の1〜2年間は後期研修医として勤務してもらう(研究日は1日)が、それ以降は研究に主眼をおいた生活に入る。
麻酔専門医取得のためには、標榜医取得後3年間の麻酔専従期間を要求されているので、 必要に応じて臨床業務を調整する。
※ 麻酔専従期間
週3日以上麻酔ないしは、麻酔関連領域の診療に従事すること。
大学院生をジョブシェアのような形で、研修中核病院と同等の機能を有する病院に、週3日程度勤務してもらい、残りの日を研究に従事する。
研究日が少なくなる恐れがあるが、麻酔科医のキャリアとして遅れを心配することがない上、 収入が(多くはないが)安定するので、扶養家族を有する者でも、比較的困難が少ないと思われる。
A〜Dの各プランは、上記Q2に対応しています。
| 初期研修 | 後期研修 | 麻酔科スタッフ | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 大学院生 | 社会人大学院生 | ||||||||||
|
|
|||||||||||
| A | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | ・・ | 9年目 | |
| 常に安定した収入がある。 いつ学位が取れるかわからない。 途中で挫折しやすい。 |
|||||||||||
|
|
|||||||||||
| B | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | ||
| 早く学位が取れる。 専門医取得に時間がかかる。 |
|||||||||||
|
|
|||||||||||
| C | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | |||
| 早く学位・専門医が取れる。 研究時間が多少短い。 |
⇒ おすすめ! | ||||||||||
|
|
|||||||||||
| D | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | ・・ | 7年目 | 8年目 | 9年目 | |
| D' | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | ・・ | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 | |
| 早く学位・専門医が取れる。 研究時間が多少短い。 多くはないが常に安定した収入がある。 |
⇒ おすすめ! | ||||||||||
以下の3分野で、6つの研究グループがある。
・ 呼吸器系 − 1
・ 循環器系 − 1
・ 神経系 − 4(5)
1) 肺障害モデル動物を用いた遺伝子治療の研究(倉橋准教授・馬場助教)
1) 血管平滑筋収縮の観点から見た肺血管攣縮メカニズムの解明(水野助教)
1) 日内変動リズムに及ぼす吸入麻酔薬の作用-マイクロダイアリシス法を用いた神経伝達物質放出の検討(菊地准教授)
2) 神経因性疼痛成立時の脊髄内における神経ガイダンス因子の役割の解明(行動解析、免疫組織学) (紙谷助教)
3) 中脳ドパミン作動性神経細胞に及ぼす麻酔薬の作用 - 麻酔薬の耽溺性との関連(パッチクランプ法) (紙谷助教)
4) 授乳期の麻酔薬暴露が神経系発達に及ぼす影響の検討 - ラットを用いた行動学的検討、組織学的検討(伊奈川助教)
5) 神経保護と麻酔薬の研究(安藤客員教授)
これらの研究は多くが競合的研究資金(いわゆる科学研究補助費:科研費)のサポートの元に行われており、
少なくとも同業者の目から見て「興味深い」=「インパクトのある結果に結びつきやすい」研究であるといえる。
研究資金はここ数年平均して年間1000万円を超える程度取得できており、研究規模から考えると潤沢なほうではないか?
1) キセノン麻酔に関する研究、麻酔と脳波の関連の研究 (後藤教授、前任地より継続)
2) 高侵襲手術時における肺内マイクロサンプリング法による気道粘膜局所サイトカイン放出に関する研究 (倉橋准教授・中村准教授)
3) 新しい気道確保デバイスの有用性に関する研究 (菊地准教授)
4) ビデオ喉頭鏡の挿管行為習熟に対する有用性の検討 (伊奈川助教)
当然、臨床でよい論文が書ければ学位取得が可能です。つまり、臨床研究でも学位が取得できます!
研究者が増える事により、研究そのものに余裕が出来、より大きなプロジェクトや他科・他学部・他大学との共同研究も行いやすくなります
この場合、臨床のDutyが少ない大学院生が主に活躍する事になります。
損はさせませんので、若い一時期を大学院で、欲張りに楽しんでみるというのはいかがでしょうか?