教授挨拶
横浜市立大学 大学院医学研究科 法医学のホームページへようこそ。
当教室は1944年(昭和19年)に初代教授 村上忠男先生が開講されて以来、桑島直樹教授、西丸與一教授、藤原敏教授と続く伝統ある教室で、平成27年4月に井濱容子が赴任して現在に至っています。
大学講座の任務は「研究、教育、社会貢献」ですが、法医学教室では社会貢献としての法医実務が大きなウエイトを占めています。法医実務とは法医学的知識や技術を基にして社会に求められる各種鑑定を行うことで、解剖鑑定や生体鑑定、物体鑑定、書類鑑定などが多彩な実務を行います。法医実務の中心である解剖鑑定では、犯罪に巻きこまれて亡くなった方のご遺体を解剖することで、死因や死亡の状況などを明らかにすることを目的としています。近年では社会情勢の変遷に伴って、超高齢化社会における多死社会への対策や、大規模災害やテロ事案発生時の対応も法医実務に急務とされています。生体鑑定では、小児虐待やDV事案の被害者に対する損傷鑑定を行うことで、法医学的立場からできる社会的弱者を守るための手助けをしています。また、医療に関連した死亡事案において法医学的な知識が求められる機会も増加しています。
法医学は直接的に人の命を救うことはできませんが、残された遺族が死と向き合い、それを受け入れて前に進むための手助けをする学問であると信じています。法医学者が面と向かってご遺族などから感謝される場面は稀ですが、犯罪捜査や裁判を通じての社会正義への貢献や交通事故や産業事故の予防への寄与など、法医学が社会に果たしている役割は大きく、重要であると自負しています。
社会における法医実務への期待や需要が大きくなるにつれて、後継者の育成は我々にとって大切な責務となっています。法医学における研究は実務から生まれ、実務に還元されるものでなければなりません。若い法医学者にとって実務から学ぶことは極めて多く、多くの症例を自ら経験し、ひとつひとつに真摯に向き合うことすることが基本となります。法医学に興味を持ち、法医学者を志す方のお越しをお待ちしています。