横浜市立大学21世紀COE
第2回研究推進委員会
学内シンポジウム
「神経細胞極性の特異性」
オーガナイザー:分子薬理神経生物学、五嶋良郎教授
日時:平成15年12月19日(金)午後1時30分から5時30分まで
場所:福浦キャンパス・第1講義室
1.1:30~2:10
「JNK 経路による神経細胞極性制御」
横浜市立大学大学院医学研究科・分子細胞生物学・助教授、平井秀一
要旨:神経細胞の方向性を持った移動や軸索の分化、伸長は神経組織の発生、機能発現に必須の
要因であるが、これらはいずれも個々の細胞の極性に大きく依存している。また、この極性の形
成は方向性を持った細胞内輸送と相互依存的に進行すると考えられる。MAP キナーゼ群の一つ
JNK を活性化するkinase cascade のscaffold タンパク質JIP はキネシンモーターと小胞を繋ぐ
adaptor タンパク質としての機能が注目されているが、これと結合するMLK、MKK7、JNK の輸
送への関わりについてははっきりとした見解が得られていない。今回のシンポジウムでは神経特
異的なMLK であるMUK の機能解析の結果について、神経細胞移動及び軸索の分化、伸長の観
点で議論したい。
2.2:10~2:50
「The Cell Biology of Axon Growth - Coordinated roles of the cytoskeletons, cell
adhesion molecules, and membrane microenvironment ミ}
理化学研究所・脳科学総合研究センター・神経成長機構研究チーム・チームリーダー、上口裕之
要旨:Neurons create precise networks by elongating their processes to reach appropriate targets. A nascent axon and its tip, the growth cone, express a variety of cell adhesion molecules (CAMs) that explore extracellular environment, generate intracellular signals, and interact with cytoskeletal components, thereby controlling axon growth. The CAM interaction with actin filaments is dynamically regulated by a molecular clutch system. Furthermore, neuronal cell membranes contain specialized microdomains, called lipid rafts, which are likely to influence the functions of CAMs. My talk will focus on the roles of actin filaments, clutch molecules, CAMs, and lipid rafts. I will demonstrate that axon growth is driven by activities of these elements that are controlled in a spatially defined and coordinated manner in the growth cone.
3.2:50~3:30 pm
「神経軸索ガイド分子の情報伝達機構と神経細胞極性」
横浜市立大学医学部大学院分子薬理神経生物学・教授、五嶋良郎要旨:神経回路網形成の分子機構の解明は生命科学の中でも最も興味深い課題の一つである。神
経軸索ガイド分子は軸索の伸長方向を制御し、正しい標的細胞とのシナプス形成をうながす。神
経軸索ガイド分子セマフォリン3A (Sema3A) は軸索伸長を抑制し,成長円錐を対縮する因子と
して同定された。セマフォリン分子は現在では神経系のみならず免疫系、血管系、肺などの器官
形成にもかかわる重要な因子であることが解明されつつある。今回はSema3A の引き起こす細
胞内輸送と細胞極性との関連に焦点をあて、その生物学的意義について議論したい。
4.3:30~4:10 pm
「シナプス後部分子の動態と分子種特異的な集積メカニズム」
東京医科歯科大学・医歯学総合研究科・細胞相関機構学・教授、岡部繁男
要旨:海馬の神経細胞間のシナプス結合が形成され、またリモデリングを受ける際のシナプス後
部分子の集積・分散をリアルタイムに可視化する事で、シナプスでの分子集積のスピードが予想
以上に速く、かつ一旦形成されたシナプス構造も、その分子組成をダイナミックに変化させてい
る事が示された。シナプス後部への分子集積は神経細胞の活動性や神経栄養因子によって制御さ
れており、かつその制御機構は分子種毎に特異的である。このような活動依存的なシナプス分子
組成の動的変化は、発達期の脳の機能変化に関わると同時に、記憶・学習過程における神経回路
網の可塑的変化の基盤であると考えられる。
5.4:10~4:50 pm
「シナプス可塑性と高次脳機能の分子機構」
東京大学医科学研究所・基礎医科学大部門・神経ネットワーク分野・教授、真鍋俊也
要旨:シナプス可塑性は、記憶・学習などの高次脳機能の基礎過程であるとされるが、本講演で
は、細胞・ネットワークレベルでのシナプス可塑性および個体レベルでの高次脳機能がどのよう
な分子機構によりもたらされるかについて、おもに遺伝子改変マウスを用いて検討した最近の研
究成果を紹介したい。
6.4:50~5:30 pm 「総合討論」
7.5:45 pm~ 「懇親会」(付属病院10階・レストラン、グリーンカフェ)