治療法

治療

成人発症CIPOの治療のゴールは、内科的には症状緩和、消化吸収障害・栄養障害の阻止、および適切な栄養療法、疾患の増悪予防、メンタル面での対策、絶対的手術適応に陥らないようにすること、などです。また、外科的には腸管壊死などによる急性増悪時に起こる絶対的手術適応は別として、症状寛解・QOL向上などの手術効果の高い小腸ろうや腸管切除術の施行、短腸症候群などの消化吸収障害に陥らないこと、小腸移植、などが当面の課題であると考えられています。

CIPOの代償期では基本的に便秘症状のみで所見に乏しく、この時期でCIPOと診断をつけられることは非常に困難です(家族歴があり、非常に難治性の便秘患者であった場合当該疾患を疑診することはできるかもしれません)。この場合は、主に排便コントロールを中心とした通常の慢性便秘症の治療を行います。一方で非代償期では症状緩和、腸管減圧と栄養管理が治療の中心となります。

(1) 症状緩和

食事は低残渣とし、できれば早期からエレンタールなどの成分栄養を状況に応じて割合を変化させつつ導入する。腸閉塞症状の改善に関しては各種prokineticsや便秘薬・下剤などを併用して症状緩和をはかる(モサプリド、大建中湯、エリスロマイシン、マグネシウム製剤、センナ系製剤、メトクロプラミドなど)。厚労省研究班の全国調査では以下に示すような内科的治療が行われていた。

病期の進展

内科系アンケートによる我が国治療の状況

薬物療法

(2) 腸管減圧

通常の腸閉塞と同様、イレウス管による腸管減圧が腹部膨満感の改善に有用です。ただしCIPOは慢性的な腸閉塞状態ですので、大半の症例で持続的な減圧が必要になります。通常イレウス管は鼻から挿入し、先端を小腸まで進めますが(下図)、咽頭痛や鼻腔出血などの患者さんの負担が大きく、また入院も長期化してしまう事があり、この点が最大の課題です。

(イレウス管)

最近は胃瘻や腸瘻を造設し、その穴からチューブを留置することで鼻にチューブを挿入することなく持続的な減圧が可能となり、患者さんの負担を出来るだけ軽減する工夫が検討されています(PEG-Jによる減圧)。

この方法は自宅でも可能であり、患者さんのQOL(Quolity of Life 生活の質)の向上にも貢献しています。症状が改善し胃瘻が不要となった場合は、チューブを抜去するだけで穴は自然と数日で閉じます。

一方腸管減圧療法は、減圧がよくできていても排液量が多くなりすぎるために脱水症や電解質異常を来たしてしまうことがしばしばあります。チューブの長さを調整することで任意の部位での腸管減圧と排液量調節が可能な方法を現在検討中です。


図1:PEG-Jの原理

図2:PEG-J挿入の実際
レントゲン透視下で胃瘻の瘻孔(穴)から十二指腸→小腸に挿入した柔らかいガイドワイヤーに沿ってチューブを進めていく(左)。上部小腸(空腸)まで進めて終了(右)。
図3:減圧しない場合は体表のボタンにキャップを装着。体表に出る部分が少なく着衣後もあまり目立たない(左)。減圧する場合は付属の接続チューブを使う(右)

(3) 栄養管理

代償期では低栄養状態となることはほとんどありませんが、非代償期となると腸管からの栄養吸収能が低下し、徐々に「るいそう」(痩せ)を来すようになってしまいます。低栄養状態が極度に進行すると、免疫力低下などから容易に敗血症を来たし、致命的となることもあります。栄養管理をしっかり行い、この危険な状態を回避することが非常に重要となります。

代償期

食事は低残渣食とし、これでも腹部膨満が増強するようであれば早期から成分栄養(エレンタール)を導入することが望ましいと考えられています。症状を見ながらエレンタールの割合を調整します。低栄養が認められる場合は在宅IVH(高カロリー輸液)を併用することもあります。

非代償期

低残渣食やエレンタールなどの経口摂取が不可能となった場合、IVH(高カロリー輸液)が必須です。通常はCVポートという埋め込み型カテーテルを右鎖骨下の皮下に留置し、在宅で毎日約半日かけて高カロリー輸液を点滴します。これにより非常に長期に食事が不足して体重減少が防げます。ただしCVポートはカテーテル感染や静脈血栓症をしばしば引き起こし、敗血症や肺塞栓症の原因となることもあります。このような場合には直ちに抜去し、別の場所への再留置が必要です。したがって、自宅での在宅IVHではいかに清潔操作ができるかが最も重要なポイントになります。感染を起こして抜去を繰り返すとポートが作れなくなり、生死にかかわる状況になります。

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