研究代表者より


中島 淳

平成20年度より我が国で初めて厚生労働省による慢性偽性腸閉塞の疫学・診断・治療の実態調査研究班が立ち上がりまして現在まで研究活動を継続しております。

この病気は、患者数が少ないこともあり、我が国にどれくらいの患者さんがいられるのかも不明ですし、どのように診断・治療がなされているのかも不明です。

この病気を見たこともない、知らない医師が多くいることは確かです。その結果患者さんはこのご病気であるとわかるまで何年も、時には十年以上医療機関を転々とすることがあります。症状の悪化時には手術になってしまう方や、何回、いや何十回も手術をされた患者さんもおられます。

このようなおぼろげながら実感するこの病気の我が国での医療の実態を何とか向上すべく研究がはじめられました。平成二十年度はまず、国内の標準的な検査がそろっている病院ならこの病気の診断を下せるように診断基準を作成しました。患者さんの実態も専門医に対して調査を行いました。調査にご協力いただきました全国の先生へこの場を借りて厚く御礼申し上げます。詳しくは本ホームページを参照いただくとして、ここでは当面の進捗状況を報告させていただきたいと思います。

(1) 診断に関して

診断に関しては診断基準を作り、欧米の専門家の批判も仰ぎながら国際的にも通用するようなものが改訂を重ねできてきております。診断方法に関しては、高原教授らのご尽力で我が国の多くの病院で実施可能なシネMRIが腸管の蠕動異常の検出、定量化には非常に有力な方法であることがわかってきました。海外では小腸マノメトリーなどが行われますが、われわれはこのシネMRI法の有用性を確立させたいと思い現在研究を重ねております。この検査は被爆もなく、10分以内で検査が終わり、なんの苦痛もない、極めて簡便な検査でありながら、まさにお腹の中の腸の動き具合が非常によくわかります。

(2) 治療に関して

外科の治療の調査を通して小腸が罹患範囲に入っている場合は手術成績が思わしくなく、手術は避けるべきではとの調査結果が得られたことは非常に大きな進展と考えます。内科的には種々の薬物療法に加え、何よりも栄養療法、TPNや成分栄養の有用性が示唆されており、この点のエビデンスや、実地診療での対応が急務と考えます。手術を避けるためには平素どのような栄養療法をすべきかが明らかにされねばなりません。

以上のような当面の研究とは別に遺伝子の解析を行いこの病気の原因を調べるための収集事業も行っております。すでに動物実験では再生医療の有用性が示唆されておりますのでそのような未来の治療法を実現化する取り組みも重要です。しかしながら、実際にお困りの患者さんのためにもまずは医師への診療のガイドラインの提供が必要と考えられます。

慢性偽性腸閉塞症は患者さんの数が少なく系統だって調査研究ができないゆえに診断や、治療、特に効果的な治療法の確立が遅れております。この問題に立ち向かうためには、国内で、1人でも2人でも患者さんを診ている医師が結集して病気の啓蒙から始まり、新しい治療に向かってまい進する必要があると考えます。いつの日かこの病気の原因が解明され、病気を完治する画期的な治療法が開発されることを祈念してこのホームページを立ち上げました。

研究代表 中島 淳
nakajima-tky@umin.ac.jp